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特集・コラム

工夫が光る鉄道模型ジオラマ!Nゲージでリアルな「油槽所」作ってみた

2024.03.02

製作:瀧口宜慎
photo(特記以外):羽田 洋

 情景のあるレイアウトの製作は、鉄道模型を始めた多くの方が憧れることでしょう。ですがレイアウト全体に広がるジオラマは、それなりに広いスペースを取るためそう簡単には作れないという現実もあります。そこで今回はフロアレイアウトにも手軽に組み込めて、普段は展示台にできる小さな油槽所ジオラマをご紹介します。

【写真】リアルなタンク車入換で遊ぶ!ジオラマの見どころ写真はこちら!

■はじめに

 情景付きのレイアウトのテーマを考える時、まずは駅や鉄橋といった、鉄道に近接した施設を作りたいと思う方は多いはずです。ですが、駅施設など、いずれもそれなりな大きさを取ってしまうのも事実としてあります。

 「もっと手頃なスペースで、押したり引いたり、連結や解放など鉄道ならではの運転を楽しみたい!」

 そんな場所を求めて行きついたのが石油タンク車の油槽所でした。駅構内や少し離れた引込線で重いタンク車を押し込んだり、引き出したりと出したりとまだ実物でも見られる光景です。この施設を小さなセクションとしてフロアレイアウトに組み込んで、床の平原から一歩踏み込んだ運転を楽しみたいと思います。

■そもそも「油槽所」ってなに?

 そもそも、油槽所とはタンク車から抜き取った石油類を一時的に貯蔵し、タンクローリーへと乗せ出荷させるための施設です。石油が全国各地に配送される流れは、産油国からタンカーで運ばれた原油が臨海部の製油所で陸揚げ・精製され、ガソリンや軽油など用途ごとの油に分けられます。この製油所から近隣にはタンクローリーに、遠方へはタンク車で組成された貨物列車で各地の油槽所に送られ、そこでタンクローリーに積み替えられて街のガソリンスタンドをはじめとする各拠点に配達されます。

■油槽所を演出する設備を作ろう!

●塩ビパイプで石油貯蔵タンクを作る!

 施設内で存在感を発揮する石油貯蔵タンクは、塩ビパイプの継手(外径67mm、高さ50mm)をベースとしています。塩ビ表面の品番やメーカーの刻印をヤスリと耐水ペーパーで削り落としますが、元からあるパーティングラインは、実物のタンクの溶接継ぎ目のように見えるため残しておきます。
 タンク天面は実物では円錐形か浮屋根となっていますが、模型では雰囲気重視で円形の平屋根としました。これには塩ビのシーリングプレート(直径62mm)を塩ビ用接着剤で貼り付け、屋根中央には点検口と点検用足場もプラ材で貼り、全体にサーフェイサーを吹き塗装しました。
 送油管は、ジオコレの「コンビナートFパイプセット」の太いパイプを適宜組み合わせ設置。貯蔵タンクから油が流出した際に被害を広げないための防油堤は、t5.0のスチレンボードを築堤上に切り出して表面にプラスターを塗って塗装しています。

●タンクローリーへの積み出し設備

 この設備はジオコレ製品の「コンビナートD積み出し所」です。実物では高速道路の料金所のように横並びになっている例が多いですが、横長のボードで見た目の効果を得るため縦列に並べてあります。この設備に送油するための送油管も同じくジオコレの「コンビナートFパイプセット」を使って再現しました。

 実物ならば万が一脱線事故が起こった際に、被害拡大を防ぐため線路際に送油管を設置することは考えにくく、また配管の地上露出は必要最小限として、残りは地下埋設とするのが安全上最も有効かと思いますが、模型的な演出として送油管を積み出し所にそれぞれつないでいます。おかげで油槽所の雰囲気が強調され、車両も引き立つ結果となりました。

●タンク車荷役用作業台

 作業台のベースはグリーンマックスから発売された「パンタグラフ点検台」です。そのままの高さだと少々高く、タンク車には似合わないので7mmほど足を短くしたうえで、地面側にはt1.0プラ板を切り出し2枚貼り合わせて専用の台としました。
 上部の作業台には転倒式のゲートを再現。これはタンク車の上部ハッチを点検する際に、ランボードに乗り移るための渡り板になるもので、模型ではグリーンマックスの洗浄台の手すりの足を切って使用。作業台の上段の手すりは黄色の警戒色を指しています。

 赤い消火栓格納箱はゲート脇と抜き取り設備の脇には必ずついている印象を受けたので、t1.0プラ板を切り出して赤く塗り貼り付けました。色彩のトーンが低い油槽所の中でも目を引くポイントになったようです。

 そして抜き取り装置ですが、プラストラクト製の「パイプ材TB-1Φ1.2×375mm」を使用。この製品は薄く細いプラパイプで、販売中に破損しないようにΦ0.8ほどの針金が中に通してあるのですが、これがちょうどノズル先端の「くびれ」のように見えるので、これに輪切り上に切れ目を入れ、パイプを残すところと完全に取り去るところを設け、表面に軽く接着剤を一塗りして銀色に塗り、台に差し込んで抜き取り設備としました。この後専用台に作業台を接着し、これを線路へ簡易接着したら完成です。

 こんなセクションがエンドレスにひとつあれば、お座敷運転ももっと楽しいものになるかと思います。また、複数作れば大きな一つのレイアウトにすることもできるでしょう。みなさんも自分の作りたい風景や欲しい風景、お気に入りの車両が最も似合う風景を、お手頃なスペースで作ってみてはいかがでしょうか?


◆精巧な鉄道情景作品勢揃い!『スーパーリアル鉄道情景 vol.7』近日発売!

▲リアルに再現された昭和時代の鶴見線国道駅付近。誌面ではこちらの作品も紹介予定!

 鉄道模型専門誌『RM MODELS』編集部が選ぶ、Nゲージ鉄道模型で製作した、実物と見まごうほどのリアルなジオラマ・レイアウトを厳選して掲載する人気シリーズの第7弾が近日発売予定!今回もリアルな作品たちが誌面を彩ります。乞うご期待!

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