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特集・コラム

「SL人吉」58654、これが最後の交番検査

2024.02.24

text & photo:皆越和也
取材日:’24.2.20 場所:熊本車両センター
取材協力:九州旅客鉄道

 2024年2月20〜22日、「SL人吉」を牽引する8620形蒸気機関車58654号機の交番検査が、熊本車両センターで行われました。「SL人吉」は、3月23日にラストラン、3月24日に運行を終了するため、これが最後の交番検査になりました。

【写真】交番検査の様子をアップで…!

 58654号機は、1922(大正11)年11月18日生まれの101歳。1975年3月に引退しましたが、1988(昭和63)年6月から2005(平成17)年には「SLあそBOY」を牽引して復活。2009(平成21)年9月に「SL人吉」として2度目の復活を遂げましたが、車両の老朽化や部品調達、メンテナンス技術スタッフの確保が難しいという理由で、2024(令和6)年3月24日をもって運行を終えることになりました。

 検査初日に行われた作業は、ボイラー関係の弁分等の部品を分解し整備・点検、圧縮機の整備・点検、ボイラー内等の検査、足回り(車輪等)の検査など。6人の整備士たちは煤や油で真っ黒に汚れながらも最後の整備をていねいに行いました。

 また現場では、SLの運転士、機関助手、整備士の話を聞くことができました。

原 孝祐機関士(48歳・写真右・機関士歴8年)「ついに最後が来たかという感情です。最後まで力強く、この「SL人吉」のヘッドマークを先頭に頑張って走って、今まだ大変な人吉のみなさんに元気を少しでも与えることができたらいいなと思います」

仮屋 諒機関助手(37歳・写真左・機関助士歴13年)「SL人吉の運行が終わると聞いた時は率直に悲しかったですが、最後の運行まで携われることを噛みしめながら、最後まで走っていけたらなと思っています。約12年間運行に携わらせていただきましたが、一言で言えばお疲れさまでしたという気持ちでいっぱいです」

山田恭輔整備士(42歳・職歴17年)「SLは101歳で年は(自分より)上なんですが、身近でもあるし我が子のような感じです。言うことを聞いてくれないじゃじゃ馬というかおてんばみたいな子で今も調子が悪いのですが、少しでも本調子に近づけられるよう整備して送り出したいです」

 交番検査を終えた58654号機、残り1ヶ月を元気に最後まで走りきってくれることでしょう。

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