text:RMライブラリー編集部
かつて東洋一の規模を誇ると謳われた東京都電。東京都心(主に山手線より東側)に200kmを超える路線網を張り巡らせておりました。ご存じの通り、現在は荒川線を除いて廃止となっており、その痕跡を辿るのはかなり困難と言えるでしょう。実は現在よく知っているあの道やこの土地が、都電ゆかりの地であったとしても何の不思議でもありません。
はい、外ならぬ弊社ネコ・パブリッシングの所在地「目黒セントラルスクエア」も、実はかつて都電の目黒車庫があった土地なのです。
▲都電目黒車庫跡地にそびえたつビル、目黒セントラルスクエア。
目黒駅前まで都電5系統が走ってきていたのは1967年12月まで。既に廃止後56年もの年月が経過しております。とはいえこの土地はその後は都バスの目黒車庫に転用され、都電時代の営業所の建屋などを比較的近年まで見ることができました。
▲山手線をオーバークロスする陸橋の中央付近に、目黒駅前電停がありました。背後の駅ビルは都電末期に建造されたもので、数年間は同居していたことになります。
▲この角地に、都電時代以来の営業所の建屋が長年建っていたとのこと。
目黒セントラルスクエアの敷地は都バス車庫(=都電車庫)よりも大きな範囲を区画整理したものですので、ネコ・パブリッシングの執務スペースが厳密に車庫の上かどうかは分かりませんが…。とにかく今はバス車庫時代のものを含め、痕跡は一切残されておりません。
▲写真奥に、目黒駅をのぞむ。写真奥から左手方向へ、車庫への入出庫線がありました。
▲目黒車庫内のトラバーサで転線中の1000形。1963.2.10 P:諸河 久
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このように、身近な道路や場所が実は都電の廃線跡だったりしたら面白くありませんか…?そんな興味を持ったあなたにおすすめの本が、『完全版・都電系統案内』です。
都電全盛期には全41もの系統が張り巡らされ、それこそ都心部の隅々まで吊り掛けの音を響かせていました。この「系統」という用語、バス路線を示す概念としてもおなじみですが、その土地に慣れない人にとってはとっつきにくいもの。例えば都電の1系統はどこからどこまで、途中どこを通り、どの系統と分岐・並走・交差するのか…といったことは、意外に理解困難でしょう。そこで本書では全41系統を平等に2ページずつ費やして、全停留所名を記した路線図、特徴が伝わる写真、軽妙な解説文をもって紹介していきます。新資料の発掘によって、従来不明だったりした停留所間の距離まで完璧に収録しました。
▲目黒駅前まで来ていた5系統を紹介するページ。
さらに、都電の代表的な形式である6000形について、その成り立ち・バリエーション・終焉までを徹底解説。「系統」と「代表車種」、その両面でありし日の都電を味わっていただけることでしょう。模型ファンにも絶対お勧めの章となっております。
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さらに、弊社直販ネコパブショップ限定特典は、昭和38年2月時点(26系統以外の全40系統が健在だった時点)での東京都交通局発行「電車案内図」をB4判でポスターとしました。実はこの図版は本書にも掲載されていますが、別刷りとしたことで、本文ページと照らし合わせて理解を進められると思います。見始めると時間を忘れること請け合いです。
▲付録ポスターの絵柄。
■著者:諸河 久・江本廣一
■判型:B5判/148ページ
■定価:2,640円(税込)