text:RMM
photo(特記以外):浅水浩二
▲屋根一体のひさしが運転台廻りを覆いつつ、全体に均整の取れたスタイルで人気のEF53。(写真:RMM)
近年、Nゲージ完成品のラインナップは手薄なカテゴリーを探す方が困難と言われ久しいですが、もちろん金属キットまでを含めれば、老舗のワールド工芸にもEF53はラインナップされていますし、完成品ではマイクロエースからもリリースされています。ここでは3Dプリンターによって出力されたボディを塗装、動力化してEF53を作り出せるキットを紹介します。
■実車は「セノハチ」後補機として長らく活躍
EF53は国産初のF級電気機関車であるEF52の改良型として1932年に登場し、その後に登場するF級旧電機の礎となった戦前を代表する形式です。 前方ヘヒサシ状に突き出した形状の屋根先端部や内側軸箱式の先台車などクラシカルなディテールと、スマートな印象を与えるスタイルが高い人気を集めました。戦前は特急「富士」「 櫻」 といった優等列車の牽引などに用いられて東海道線の花形的存在となり、そのうち16・18号機はお召指定機にも選ばれた名機です。戦後も幅広く使用されましたが、 SG(列車暖房用のボイラ)を搭載していないことから活躍の場が狭められたものの、1963~68年にEF59への改造を受けて山陽本線瀬野~八本松間、いわゆる「セノハチ」の補機に転身します。このセノハチの補機としての活躍も長く、最終的には1984年まで活躍を続けた機関車です。
■3Dプリントボディで蘇る「EF53」
紹介しますのは3Dプリントによるサードパーティ「がんちゃんず」ブランドから発売されている「EF53/59タイプキット」車体。前面が2種のほか、手スリ付きデッキが2種、連結器緩衝器(EF59用)が入るキット構成で、JNMAをはじめ、Nゲージの各種イベントで出会えるメーカーです。
キットの内容は前面はテールライトの異なる2種の前面から選択できるパーツ構成で、ほぼ積層痕が見られない高精度整形の3Dプリントによる出力のボディは、組み立ててみたくなる魅力に溢れています。動力装置を始めパンタグラフは、種車となるKATOのEF56のものを流用としており、EF53のナンバープレート(レボリューションファクトリー製)、汽笛、信号煙管、避雷器は各車からリリースされているパーツを個人の好みに応じて取り付けるというもの。そのためには実車の知識も必要ながら、「好みの車両に仕上げられる」という通好みの製品なのです。
この「がんちゃんず」の「EF53/59キット」1両分の車体の価格は6,000円(税別)ですが、現在取り扱い店舗では、グリーンマックス・ザ・ストア 大阪日本橋店にわずかに残るのみと、メーカーのお話ですので、在庫が無い場合はご容赦ください。今回はEF59にも加工できるEF53キットを紹介しました。
◆模型制作資料にも!EF59のディテールに迫ったムックが発売中!
大きなデッキに運転台廻りのゼブラ塗装。この、ものものしい出で立ちの旧型電機は、セノハチこと、山陽本線瀬野~八本松間に存在する連続急勾配区間の上り線で後補機として活躍したEF59です。
同機は戦前の花形電機EF53、EF56 から改造されたもの。いわばサラブレットといえる機関車たちが、当初の任を解かれ最後の務めとして勾配区間の補機として投入され、文字通り縁の下の力持ちといえる活躍を1980 年代半ばまで見せていたのです。
本書は『鉄道車輌ディテール・ファイル 瀬野機関区のEF59』Part1・Part2 を合本とし、冒頭にカラーページを追加した愛蔵版としてリイシューしたもの。戦前製旅客電機の姿を色濃く残すEF59 全24機の1両ごとの記録集として、是非、手に取って欲しい一冊です。