185系

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【お手頃電車】地方私鉄で大活躍「18m級電車」実は貴重になりつつある出物

2023.12.22

▲元東京メトロ日比谷線で、現在北陸鉄道で活躍する03系。系式名称は種車のままだ。

‘23.9.26 北陸鉄道浅野川線 内灘 P:宮島昌之
(鉄道投稿情報局より)

 都市部を走っていた車両が地方のローカル私鉄に譲渡されるのは各地でよく見られます。その中でも特に一部の規格の車両が重宝され続けています。

【写真】各地で走っていた18m級電車は今どこへ?地方私鉄の車両たち

■何かと手頃なサイズ感

 都市部の鉄道と比較して、急カーブが点在したり車両限界が小さい傾向があるほか、輸送力も短い編成で事足りる地方私鉄。そういったところでは車両の長さが18m前後となるいわゆる「中型車」が路線の規格・規模的な観点から丁度良いことから、重宝される傾向にあります。
 近年では東京メトロ日比谷線で活躍した03系が熊本電鉄や長野電鉄、北陸鉄道に譲渡されたほか、最近では上毛電鉄へも譲渡され、「800形」として2024年2月下旬を目処に運用開始を予定しています。

■引く手あまたな東急の18m級電車

 東急電鉄では18m級の車両が一部路線で活躍しています。このサイズで製造された1000系にいくつか出物が発生した際には、地方私鉄各社がこぞって獲得していきました。東急の車両は車体の長さだけではなく、線路幅も日本で標準的な1067mm(狭軌)であり、台車廻りもそのまま使用できることも魅力の一つでしょう。また、東急のグループ会社「東急テクノシステム」内で改造工事を請け負えることもメリットです。

 ここ数年では1000系だけではなく、2018年の引退時点で車体の経年が50年を超えていた東急多摩川線・池上線の7700系も、引退後養老鉄道へと渡りました。内装・機器類は1980年代末〜90年代にかけて徹底した更新がなされているとはいえ、東急ステンレスカーの元祖である7000系の系譜を色濃く残した車両の譲渡ということで、この当時のステンレス車の頑丈さには驚かされるものがあります。ただ、裏を返せば古い車両ですら譲渡の対象になってしまうほど、今全国的に中型車といわれる車両の出物が少ないことの表れとも取れます。

■大手は徐々に車両が大型化 今後は?

 かつては都市部でも中型車が主流だった時代がありましたが、人口が増え輸送力の増強が進められて以降は専ら20m級の「大型車」が幅を効かせるようになります。大型車が中型車を置き換えているうちは出物が発生して良いものの、時が経てば当然中型車の数は減っていきます。また、京急や京成、都営浅草線では現在でも18m級の車両が主流ですが、これらは標準軌の車両であり、受け入れ先が狭軌の路線の場合、少なくとも足回りには手を加える必要性が出てきます。また、車両更新のタイミングと中古車両の発生するタイミングが合うかどうか、改造を請け負う工場はどうするかなども考慮しなければなりません。

 そんな中譲渡車ではなく、静岡鉄道や遠州鉄道では古くから独自の新車を導入し続けている会社もあります。また、最近では環境省の国庫補助金を利用し、伊予鉄が久々となるオリジナル新型車両の導入を発表するなど、地方私鉄にも新たな流れも見えてきています。

 他社から電車を譲り受けたいと思えど、地方私鉄が欲しているスペックに見合う車両が少なくなりつつある現状。今後のローカル線における電車事情には注目が集まります。

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