JR九州は、老朽化した高速軌道検測車(マヤ車)に変わる新たな検測車の開発を進めている。2020年7月豪雨災害にて被災した車両をリニューアルして、検測車として改造している。高頻度かつ高精度なデータ測定により、これまで係員が実施してきた目視による線路点検や検査業務を抜本的に見直し、より安全で効果的な設備修繕を目指す。各装置から取得するビッグデータを活用し、安全性と生産性を両立した持続可能なメンテナンス体制を構築する。各装置を搭載した多機能検測車に『BIG EYE:ビッグアイ』(商標権取得申請中)と名付けた。今後、本運用に向けた走行試験を実施する。
(プレスリリースより)
■デザインイメージ
車両やロゴのデザインは、社内で建築業務を行っている社員の間でコンペを行い、決定した。車体側面は軌道変位を表現した波形をあしらい、車体前面や背面にはヘッドライトの目玉や牛をモチーフとすることで子供をはじめとした方にも親しみをもってもらいたいという想いをデザインに込めている。
■BIG EYEに搭載される装置の概要
(1)軌道検測装置
・レールにレーザを照射すること等により線路のゆがみを測定する。
・測定したデータは無線によって伝送する。
(2)部材検査支援カメラ装置
・ラインセンサカメラでレールやレールとまくらぎを固定する金具(レール締結装置)の状態、レールとレールをつなぐボルト類の状態などを高精度に撮影する。
・取得した画像データを用いてAI開発を行い、不良箇所の自動判定技術の確立を目指す。
(3)建築限界測定装置
・ホームやトンネル、信号設備等にレーザを照射して、線路からの距離を連続的に測定する。
(プレスリリースより)
■期待する効果
走行中の鉄道車両を支えている線路設備は、列車の繰り返し荷重により日々劣化が進行するため、それらの状態を的確に把握し、適切な時期に修繕することが重要となる。高頻度に検測を行うことでTBM(時間基準保全)からCBM(状態基準保全)への転換を図り、より安全で効率的なメンテナンスの実現を目指す。
■今後の計画
2023年11月~2024年3月までの間に、検測データの精度の検証、機器の耐久性、データ解析のシステム構築等、運用開始に向けた性能評価を行うための走行試験を実施していく。なお、「BIG EYE」の実導入は試験結果を踏まえて検討を進めていく。