▲団体臨時列車「783系ハイパーサルーンで行く 鹿児島本線の旅」として運転された時の783系。
’21.12.5 鹿児島本線 小倉 P:西村 将
(鉄道投稿情報局より)
今から35年前となる1988年。国鉄が分割民営化し新たにJRとして発足してちょうど1年が経った頃に、JRグループ全体で初となる新型特急電車が九州の地で誕生しました。それは、国鉄時代の特急型とは明らかに異なる斬新さを併せ持っていました。
■既存の技術を活用しつつも国鉄特急型とは一線を画す存在に
国鉄からJRへ分割民営化された1987年。各社が国鉄のイメージを払拭するかのように、従来車両の塗装変更や改造が続々と行なわれていましたが、完全新規系式は生まれていませんでした。車両の新造や置き換えはしていましたが、いずれの系式も国鉄時代からあるものを引き続き製造していました。
そんな中、民営化から1年が経った1988(昭和63)年。JR九州から完全な新系列となる特急型電車、783系がデビューします。スペックの基本は713系をベースとしつつ、一般的なモーター車2両で1つの「ユニット方式」ではなく、短編成化の際有利な「1M方式(動力車に必要な機能を1両にまとめた方式)」を採用しました。また車体は211系譲りとなる軽量ステンレス車体を採用するなど、特急型ながら近郊型の設計思想も取り入れています。
そしてなんと言っても、車両中央部に客扉を配した今見ても斬新な車体・車内構成としました。車内中央をデッキで区切ることから、1両でありながらそれぞれの内装の色調を変化させ、2つの顔を持つ室内をデザインしました。また、前面デザインも国鉄特急型では例のない、傾斜角のついた鋭い形状に。乗務員室後ろはガラス張りとされ、前面パノラマを楽しむこともできます。
このように、既存の技術を活用しつつも、活用方法を変えることでより新しい特急型となった783系は、ある意味「国鉄技術の総決算」とも取れるのかもしれません。
■リニューアルによりカラフルに
783系も変化する時代に合わせてリニューアルがなされました。まずは787系とのサービス格差をなくすために内装のほか、シルバーに緑・赤・青・黒のブロックパターンを配したデザインに1994年から変更。さらに「ハウステンボス」「みどり」用に塗装変更や貫通型先頭車化改造など、そのバリエーションは年々増えていくことに。2017年からは「ハウステンボス」用の編成が再びリニューアルされることとなり、水戸岡鋭治氏のデザインによるオレンジ基調の塗装に変更されました。
■廃車が進行する現在 リバイバルトレインや団体列車でも活躍
▲近年では783系からも廃車が発生。写真は廃車回送時のもの。
‘22.9.21 鹿児島本線 門司港~小森江 P:岡部憲和
(今日の一枚より)
民営化直後に登場した783系は、リニューアルを受けてはいるものの気がつけば30年選手となっており、徐々に廃車が進行しているのも事実です。とはいえ、西九州新幹線の開業後運行開始した特急「かささぎ」運用にも就くなど、全盛期とまではいえませんが、今もなお活躍を続けています。
さらに、運行開始当時を思い起こさせる「リバイバルドリームにちりん」や、「リバイバル有明」などの復刻列車にも783系が充てられるようになりました。現在、塗装こそリニューアル後の姿ですが、いずれはオリジナルカラーをまた見たいと思うレイル・ファンも多いのではないでしょうか。
JRという新しい時代の到来を本当の意味で告げたとも言える783系。今年でデビューから早くも35年が経過し、すでに懐かしむ対象ともなっている同車ですが、一部がセミハイデッキ構造となっている車内や、バラエティに富んだ組成やカラーリングなどで、今も我々を楽しませてくれています。