text:鉄道ホビダス編集部
▲汐見橋駅に停車中の2200系。なお写真のモハ2202-モハ2252の2両編成は銚子電鉄への譲渡が発表された。
’19.10.21 南海電気鉄道 高野線(汐見橋線) 汐見橋 P:東條ともてつ
南海電鉄の岸里玉出駅から、汐見橋駅までの4.6kmという短い距離を結ぶ「汐見橋線」。大阪でもかなり都市部ではありますが、その沿線はまるで時間が止まったかのような雰囲気です。
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■「汐見橋線」という路線は存在しない?
実は汐見橋線というのは通称で、この路線は南海高野線の一部であり、そもそも高野線の書類上の起点は現在でもこの汐見橋駅となっています。ですが、走る列車は全て岸里玉出と汐見橋間を往復する各駅停車のみ。岸里玉出駅から先の高野線極楽橋駅方面への直通列車はありません。
この汐見橋線区間の歴史は古く、南海高野線の前身である高野鉄道が1900(明治33)年に開業させたものです。当時は水運を中心とした貨物輸送を念頭に置いて開通しており、汐見橋駅には貨物ヤードも存在していました。
ですが、1925(大正14)年に岸ノ里駅(現・岸里玉出駅)に南海本線難波駅方面と高野線との連絡線が開通すると、高野線列車はほとんど難波駅発着となり、汐見橋線は支線のようになっていきます。そして1971(昭和46)年には貨物列車が廃止に。1985(昭和60)年には高架化により高野線と汐見橋線は線路すら分断されてしまいました。高野線方面への直通列車が一切無い理由として、こうした事情があったのでした。
■2両編成ワンマン電車が行ったり来たり
そんな汐見橋線ですが、汐見橋駅から岸里玉出駅までの4.6km程の距離を、2両編成の電車が行き交う長閑な路線です。沿線は住宅街や工場が点在していますが、その雰囲気は短い編成の電車も相俟ってどこかレトロな趣があります。大阪市内の大都会でありながら、その中をゆっくりと走る汐見橋線とのコントラストが非常に印象的です。
また、汐見橋駅、木津川駅、西天下茶屋駅の駅舎はどれも印象的です。いずれも昭和期に建てられた駅舎が今も使われており、西天下茶屋駅の駅舎に至っては、入口上部の三角屋根と丸みを帯びた窓が特徴的な建物です。
■近年ではリニューアルも?
▲かつての汐見橋駅。隣接する真新しい阪神桜川駅との対比が印象的。
’10.04.17 南海電気鉄道 高野線(汐見橋線) 汐見橋 P:瀧口宜慎
現在計画中の「なにわ筋線」において、この汐見橋線を経由するというルートが以前考えられていましたが、現在は正式に新今宮経由とする計画に変更されてしまいました。ですが、2009年には汐見橋駅に隣接する形で阪神なんば線桜川駅が開業し、こちらへの乗り換え需要などが生まれているようです。
▲こちらは現在の汐見橋駅の駅舎。開業した1900年当時をイメージした壁面アートで彩られる。
’23.07.30 南海電気鉄道 高野線(汐見橋線) 汐見橋 P:安武有彬
また近年では、汐見橋駅は開業年である1900年頃をモチーフとした壁面アートが2020年に描かれたほか、駅舎内部にはかつて存在していた「南海沿線観光案内図」の看板をモチーフとした新たな観光案内図が掲げられるなど、沿線活性化を目的としたリニューアルの手が加えられるようになりました。
唯一無二の魅力がある南海汐見橋線。都会の喧騒に疲れた頃に訪れてみると、意外な癒しがあるかもしれません。
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