185系

特集・コラム

機関車のパワーで列車をサポート!急勾配の強い味方「補助機関車」ってなんだ?

2023.08.02

text:鉄道ホビダス編集部

 山岳路線にある急勾配との戦いは、鉄道史を語る上で外せないものの一つでしょう。そんな急勾配な峠区間では列車をサポート(補助)する機関車が連結されることもあります。今回は勾配区間を支え続けた補助機関車(補機)たちの過去と現在を見ていきます。

↓各地の峠を支えた「補機」を見る!↓

■かつて峠区間で名を馳せた補機たち

 かつて難所と称された山岳区間や峠区間で活躍した補機たちは、今もなお名機として語り継がれています。有名どころであれば奥羽本線福島〜米沢間、板谷峠のEF71、山陽本線瀬野〜八本松間、通称「瀬野八」区間を走ったEF67、そして信越本線横川〜軽井沢間の碓氷峠で活躍したEF63などが挙げられるでしょう。これらの機関車が電車や気動車、貨物列車など、その区間を通過する様々な車両の峠越えを手助けしていました。
 いずれの機関車もほぼその区間で補機として活躍するのに特化した設計となっており、その特殊性や、列車と機関車が連結する峠区間でしか見ることができない編成などもあり、いつの時代においてもレイル・ファンの注目の的でもありました。

■峠区間の廃止などで縮小する中、新型補機も

 そんな補機たちですが、板谷峠は山形新幹線へと整備されEF71は退役、碓氷峠も長野新幹線の開通で廃止となってしまいました。そんな中、現在でも補機が活躍するのが瀬野八区間になります。

▲セノハチの補機専用機として初代となるEF59形。この1号機はEF53形からの改造。

’78.3.8 山陽本線 瀬野 P:山下修司
(消えた車両写真館より)

 この区間では電化後も蒸気機関車による補機が活躍していましたが、1963年より電気機関車による初めての専用補機として、EF59が投入されます。新造ではなく改造機で、EF53形から改造されたものが19両、EF56形からのものが5両の計24両が改造されました。歯車比を変更した上で重連総括制御機能、自連解錠装置を付加する改造が施されました。
 二代目の瀬野八補機として、老朽化したEF59を置き換えるためEF60の(1次型)クイル駆動車から改造されたのがEF61 200番代です。ただ、重連での後補機運用に付いた際、連結器に不具合が生じることが判明し短命に終わりました。
 その後、1980年代以降は旅客列車での補機連結は必要がなくなり、貨物列車のみが対象となりましたが、その主役は「赤い直流機」EF67に譲られることとなります。EF67は1982年に0番代が登場。EF60形0番代を種車に、電機子チョッパ制御に改造。貨車と連結される側となる1エンド側に貫通扉とデッキが取り付けられ、前後非対称の形態となりました。
 そしてJR化後の1990年、増備車として100番代が登場。種車をEF65形0番代に変更し、また1エンド側のデッキ及び貫通扉を廃したことが特徴でした。2003年以降、100番代のみが更新工事を受け、尾灯が角型になり、さらに塗色も車体裾にグレーと白の帯を巻くなどの変化が生じました。

 そんなEF67も老朽化が目立ち始め、2012年には補機専用という運用を見直し、通常の本務機としての運用を担いつつ、補機の仕業にも就くという新しい運用方法を実現したEF210 300番代が登場します。これによりEF67は0・100番代ともに置き換えられ、2022年3月に完全引退しました。

▲EF210 300番代は写真の瀬野八区間貨物列車の補機のほか、大阪駅のうめきたエリアを行く地下線の補機も務める。

23.01.07 山陽本線 八本松~瀬野 P:綿﨑真澄
(今日の一枚より)

 EF210 300番代は現代流の補機・本務機兼用の地位を築き始めており、各地での活躍の傍ら、瀬野八通過の貨物列車補機の他、2023年には新たに地下化開業した「うめきたエリア」の大阪駅を通過する一部貨物列車の補機も担うようになりました。

 今も昔も、勾配区間の強い味方となる補機は人気の機関車です。

↓各地の峠を支えた「補機」を見る!↓

◆瀬野八を駆けた補機「EF59」の貴重な記録が集結

◆詳しくはこちら!

 大きなデッキに運転台廻りのゼブラ塗装。この、ものものしい出で立ちの旧型電機は、セノハチこと、山陽本線瀬野~八本松間に存在する連続急勾配区間の上り線で後補機として活躍したEF59です。

 同機は戦前の花形電機EF53、EF56 から改造されたもの。いわばサラブレットといえる機関車たちが、当初の任を解かれ最後の務めとして勾配区間の補機として投入され、文字通り縁の下の力持ちといえる活躍を1980 年代半ばまで見せていたのです。

 本書は『鉄道車輌ディテール・ファイル 瀬野機関区のEF59』Part1・Part2 を合本とし、冒頭にカラーページを追加した愛蔵版としてリイシューしたもの。戦前製旅客電機の姿を色濃く残すEF59 全24機の1両ごとの記録集として、是非、手に取って欲しい一冊です。

詳しくはこちら!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加