text & photo:上石知足(鉄道ホビダス編集部)
6月30日をもってついに「南紀」で使用されるキハ85系の定期運用が終了します。国鉄分割民営化から間もない1989年にデビューした同車は、以来30年以上にも亘って活躍を続けてきました。近年では民営化初期に登場した車両を「JR第一世代」と括ることも増えてきましたが、そんなドンピシャ第一世代のキハ85系に今回は実際に乗ってみました。
■キハ85系とは?
キハ85系は1988年に落成し、翌1989年より「ひだ」で運用を開始。「南紀」は1992年から運行開始となり、従来のキハ80系を置き換え、東海・中部地方の気動車特急の近代化に貢献した車両です。車両は眺望を考慮した窓の設計となっており、特に非貫通タイプの先頭車は前面展望も楽しめるとあって非常に人気でした。キハ85系についての詳しい車両紹介は下記記事も併せてご参照ください。
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■バブルの香りを感じる内装
キハ85系も2023年の3月ダイヤ改正で「ひだ」から撤退し、現在では「南紀」でのみ運用されています。そんな「南紀」も6月30日をもってキハ85系での運用を終え、以降は新型HC85系に置き換えられる予定となっています。
さて、今回乗車したのは「南紀」の自由席。ただ、自由席とはいえ設備は豪華。シート位置も床面が一段高い構造となっており、眺望に重点を置いていたことが一目でわかります。シート配列は一般的な2列×2の配置ながら、座席背面下にはフッドレストも用意されています。
全体的なトーンではホワイトやグレー、ベージュといった色の化粧板やパーツで構成される内装にはどこか80年代〜90年代らしさを感じることができ、ちょっぴり懐かしい雰囲気を味わいつつ、天地方向に大きい窓から眺望を楽しむことができます。
■加速力に衰えなし!電車顔負けのスピード
エンジンは当時国内では採用例が少なかった米国カミンズ製のエンジンを採用し、小型高出力な機関から発せられるパワーは従来の気動車とは比べ物にならない性能を持っていました。それは登場から30年経った現在でも衰えることはなく、新型電車と肩を並べるであろうスムーズかつ素早い加速力に驚かされます。
そして駅で見送る際も、轟音を立てて発車していくキハ85系が去ると排気による燃料の匂いと煙がホームに残り、気動車ファンにはたまらない風情を感じさせます。
■まだまだ活躍を続ける「キハ85系」
’23.03.13 京都丹後鉄道 西舞鶴運転所 P:田尻雄太
(今日の一枚より)
6月30日で惜しまれつつJR東海での営業運転を終えるキハ85系ですが、一部車両は京都丹後鉄道に譲渡され、現在運行開始に向けて着々と準備が進められているようです。キハ85系が西舞鶴運転所に留置されている隣には、役目を終えたKTR001形「タンゴエクスプローラー」と肩を並べ、新旧交代劇が今まさに始まろうとしている雰囲気が漂います。
全国的にも徐々に引退や消滅の足音が迫ってきている「JR第一世代」の車両たち。数は減らしてはいますが、華やかな設備を持つこれらの車両たちの今後はまだまだ明るいように思えます。