185系

特集・コラム

個性的な車両の種車にも!?客車列車の近代化に貢献した12系の過去と現在は?

2023.05.17

text:鉄道ホビダス編集部

‘22.5.3 信越本線 群馬八幡~安中 P:渋川 明
(今日の一枚より)

 1969(昭和44)年、大阪万博を翌年に控えたこの年、国鉄最後の急行型客車となる12系客車が誕生しました。12系は戦後、動力近代化によって電車や気動車が増える中、一向に更新されることがなかった旧型客車たちを一掃したほか、波動輸送にも柔軟に対応できる車両として製造されました。新造形式はオハ12、スハフ12、オハフ13のみながら、製造時期や後年の改造でさまざまなバリエーションが生まれ、それが12系の魅力の一つでもあります。

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■そもそも「12系」ってナニモノなの?

 12系は前述の通り、1969年に試作量産車が28両が登場したのを皮切りに、大阪万博に備え翌1970(昭和45)年に量産開始された急行型客車です。電源方式は分散型とされ、スハフ12形にディーゼル発電機を搭載し、自車含め最大6両の電源供給が可能でした(試作車は5両)。
 車体も従来の客車から一転、急行型電車に近い外装とし、車内も化粧板によって明るくなったほか、扉は20系と同様の折戸ながら自動扉となるなど、接客設備の面でも近代化が図られました。最終的には1978(昭和53)年までに総勢603両が製造され、全国各地で活躍しました。

■中には12系とは思えないものも!?「ジョイフルトレイン」改造車

 12系は国鉄末期頃より、和風・欧風のジョイフルトレインへの改造例が増えていきました。その流れはJR化後も続いてゆき、それまで製造時期による細かい形態差があったとはいえ3形式しか存在せず、ほとんど見た目にも違いがない点から趣味的な目では見られていなかった同車が、徐々に注目を集めていくきっかけになっていきます。

●ユーロライナー

 「ユーロライナー」は1985(昭和60)年に登場した国鉄の欧風客車で、前後にはパノラマビューが楽しめる展望車スロフ12形を連結。外観も明るいグレーと青帯という明るい塗装も相俟ってスマートな印象になりました。種車である12系の面影は、側扉や窓枠形状、車体断面でかろうじてわかりますが、それ以外は徹底的に改造されて一見12系には思えません。民営化後はJR東海に承継されて長らく活躍していましたが、デビューからちょうど20年が経った頃の2005年に廃車となりました。

●あすか

 「あすか」は1987(昭和62)年にJR西日本で登場した和風客車です。こちらも編成両端に展望車となるマロフ12 851・852を連結していました。なお、編成中央のハイデッキラウンジカーは14系寝台車からの改造でした。
 その後1996〜1997年にリニューアル改造を実施。改造当初からほとんど12系の面影を残していませんでしたが、このリニューアルにより屋根が張り上げ風となったことでほとんど種車の印象は消えた形になりました。その後2016・2018年に廃車となります。

 余談ですが、オロ12 851〜854に関してはJR東日本に所属したジョイフルトレイン「江戸」「やすらぎ」と車番が重複していました。

●奥出雲おろち号

 1998(平成10)年に木次線の活性化を目的に登場したトロッコ列車がこの「奥出雲おろち号」です。リクライニングシートを装備したスハフ12 801とトロッコに大規模改造された開放型のスハフ13 801の2両からなります。トロッコ車のスハフ13 801には半室運転台が設置され、往路はこちらを先頭に推進運転で走行します。
 現在、数少なくなってしまった現役の12系の一つですが、老朽化のため2023年度をもって営業運転終了を予定しています。

■栄華を誇った12系の現在とは?

 JR化後は客車列車自体の減少や、バブル崩壊でジョイフルトレイン需要も減ったことから徐々に余剰車が発生し始めた12系。近年では老朽化によって廃車が進行し、現役で活躍する同車は数えるほどとなってしまいました。なお、すでにJRでは東日本と西日本のみの所有となっています。

▲上写真がオハテ12 1(元JR四国オロ12 5)。下がオハテ12 2(元JR四国オロ12 10)。

’21.10.15 南栗橋車両管区 P:RM

 そんな中で、暗い話題ばかりではありません。例えばJR四国から東武鉄道へ譲渡された12系2両が、2021年に開放式の展望車へ改造されました。これは同社で運行中の「SL大樹」用で、固定式窓の14系では味わえないSLの煙や音を楽しむことができるように改造されたもの。外観は2両とも異なり、ぶどう色2号にかつての3等車標記風の赤帯をアクセントとして入れた「オハテ12 1」と、10系をイメージした青15号塗装にグリーン車風の薄緑色の帯をアクセントとして入れる「オハテ12 2」の2種類です。

 JR東日本でも、週末になれば原型に近い12系客車がSL・ELに牽引される姿を見られるなど、現役車両は少ないながら、その勇姿はいまだに健在です。客車列車の大幅な近代化を達成した12系。現代においては、そんな客車列車自体の文化を今に語り継ぐ生き証人と言えるのではないでしょうか。

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上巻では12系の登場から国鉄の終わる1987年3月までを一区切りとし、この時期に登場した12系客車を詳しく紹介していきます。ジョイフルトレイン・お座敷列車の改造車に於いては、国鉄時代に登場した形式を一両一両丁寧に紹介。
下巻はJR以降に登場したジョイフルトレインのほか、イベント用客車、そのほかSL列車や各地の観光路線で活躍するトロッコ列車、更には私鉄にわたり、最後の活躍を続ける12系まで、それら車輌の姿を紹介していく内容です。

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