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最後の全国区気動車と言うべきキハ40系は、両運転台のキハ40形、片運転台のキハ47形・キハ48形という基本3形式から成り立っている…というのは比較的ご存じの方が多いのではないかと思います。
■キハ40形
JR東日本の五能線から譲渡されてやってきた北条鉄道のキハ40形(500番代)。
‘22.1.6 北条鉄道 北条町~播磨横田 P:荻野一徹(鉄道投稿情報局より)
系列中唯一(登場時)の両運転台車で、酷寒地(=北海道)用から暖地用、すなわち北海道から九州まで広く配置されました。仕向け地によって番代区分がありますが、側面扉はいずれも片開きというのが特徴です。
■キハ47形
JR四国のキハ47形。片運転台車が単行で工場入場回送しているところ。
‘22.12.27 予讃線 鴨川〜讃岐府中 P:浮穴大貴(鉄道投稿情報局より)
片運転台車2形式のうち、側面扉が両開き式になっているのが特徴。扉位置も車体中ほど寄りでデッキは持たず、従って酷寒地仕様は存在しません。主に新潟地区以南、西日本にウェイトを置いて配置されました。
■キハ48形
トリコロールの新潟色をまとったキハ48形。
‘15.7.24 信越本線 新潟 P:名古屋 諒(鉄道投稿情報局より)
片運転台2形式のうち、側面扉が片開きとなっているもの。扉は車端に寄っており、デッキ付きとなっています。酷寒地から準寒地向けということで、東日本に重点を置いて配置されていました。
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つまり、運転台が両側か片側か、扉が片開きか両開きか、ということで形式が分かれていたことになります。あれ、組み合わせとしてひとつ抜けていますよね? つまり両運転台で両開き扉という形式はなかったの?ということ。実はそれ、幻の「キハ41形」として計画だけに終わった…という経緯があるのです。
計画では、キハ47形の連結面側にも運転台を設置し、トイレは無しとした形で設計が進んでいたのですが、途中でトイレを設置する方針に変更された時、運転台およびトイレへの暖房用ダクトの立ち上げが困難であることが判明し、設計が中止されたという経緯があります。すなわち、両運転台車はすべてキハ40形(こちらは全車トイレ付として誕生)として製造・配置されたのです。もしもキハ41形が誕生していたら、恐らくキハ47・48の関係性と同じく、東日本中心にキハ40形、西日本中心にキハ41形…という配置になっていたのではないでしょうか。
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さて、幻であったはずのキハ41形ですが、なんとキハ40系登場後約20年を経た1998年に初めて「誕生」してしまいました。と言ってもこれは前述の計画車と直接の関係はない改造車で、既存のキハ47形1000番代(トイレ無し)をベースに、元の連結面に切妻型の運転台を新設した両運転台車なのです。前後の運転台でまったく形態が異なる、いかにも改造車らしい見た目となっていますが、設計上困難とされていたトイレもちゃんと設置されているのは感心させられます。また、「両運転台で両開き扉」という点では計画車と共通しているところがなんとも面白いところです。
5両が登場し、現在でも播但線を中心に活躍しています。
写真右が、キハ41形の新設運転台(左はキハ40形)。
‘19.2.14 播但線 和田山 P:本郷雄亮(今日の一枚より)
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