text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は1999年に発売されたプラレールの205系「通勤電車」の貴重なカラーバリエーションをご紹介!ウグイス・スカイブルーは通常品として見かけた人も多いかと思いますが、実は「カナリア」と「エメラルドグリーン」というのも初回限定でラインナップされていたのです。(編集部)
「初回限定版」と聞くと、CDやDVD、Blu-ray Discなどで聞く機会が多いと思います。内容としては通常版とは別に付録が付いていたり、ジャケットが異なったりする特別なものです。子供向けの玩具にはあまりない概念のように思えますが、実はプラレールで過去に初回限定版のある製品が発売されたことがあります。
それが1998年に発売された「フレッシュひたち」と、1999年に発売された「通勤電車」です。それぞれ複数のカラーバリエーションがある系列です。今回はこのうち4路線を走る205系をモデルにした「通勤電車」を紹介していきます。
↓カラフルな4色!知られざる初回限定カラーの画像はこちら!↓
▲4色の205系「通勤電車」シリーズ
205系「通勤電車」は、1985年に先行量産車を再現した二段窓の銀メッキ車体で発売された後、量産車の登場に合わせてプラレールの方も1987年に一段下降窓に改修されましたが、実車が活躍中の1994年に一度絶版となっています。この時は最初の投入線区である山手線のウグイス帯仕様で発売されました。
その絶版から5年が経った1999年に、銀メッキだった車体を銀色の塗装に変更の上で再発売されることになりましたが、以前からあった山手線に加えて3色が追加されたカラフルなものになりました。山手線仕様の「ウグイス」、京阪神緩行線仕様の「スカイブルー」が通常品として用意された他、初回限定版としては中央・総武線の「カナリア」、埼京線の「エメラルドグリーン」の計4色が登場しました。
先述の通り「ウグイス」と「スカイブルー」は東西の主要路線を走ることもあり通常品として発売さています。どちらも2003年以降のS品番付与後も継続してラインナップに載り、それぞれ2007年と2010年に絶版となっています。初回限定版となる「カナリア」と「エメラルドグリーン」も通常品と同様に流通していますが、1回限りの生産なのでごく短期間のみの販売に留まっており、2000年頃に発売された子供向けのプラレールの書籍では既に入手困難品扱いされています。
▲中央・総武線の205系「通勤電車(カナリア)」は三鷹行として製品化された。
それではまず「カナリア」を見てみしょう。そもそも実車が運行していた期間が1989年から2001年までと短く、製品化された4色のうち最も早く姿を消したカラーです。プラレール特有の黄色い車輪が帯色とマッチしてまとまった印象を受けます。プラレールの205系は前照灯のモールドを設けず、帯と一体でライトも印刷されたステッカーを使っています。前面は帯ステッカーを張り替えるだけで済ませられるので、このようなカラーバリエーションの製品化が考案されたのかもしれません。実際の中央・総武線205系には小窓の客用扉を持つ編成は存在しませんでしたが、帯が黄色いだけでも雰囲気は十分に仕上がっています。
▲埼京線の「通勤電車(エメラルドグリーン)」は快速恵比寿行で製品化。発売当時の埼京線は恵比寿止まりだった。
続いて「エメラルドグリーン」をご紹介。実車の埼京線205系は引退したのも記憶に新しく、2016年10月まで運行されていました。1999年当時の埼京線は恵比寿が終点だったため、プラレールでも快速恵比寿行に設定されています。大宮行ではなく恵比寿行、しかも快速というのがマニア心をくすぐります。
「カナリア」と「エメラルドグリーン」は絶版からしばらくの間は入手困難品として知られていましたが、「カナリア」は2006年発売の「総武線スペシャルセット」でJRマークの追加等のディテールアップを施した上で再登場、「エメラルドグリーン」も2007年の鉄道博物館開館に合わせて館内売店限定品として発売されました。しかしこれも既に15年ほど前の話。今や再び入手困難品となっています。
初回限定品をメインに使って、3つほど小さいジオラマを組んでみました。
▲浜松町〜田町あたりのイメージ。本来なら東海道線も通る区間だが、このように路線自体を省略してしまうのもプラレールの再現系レイアウト術の一つ。
「スカイブルー」を京浜東北線に見立て、浜松町~田町付近をイメージ。今回の主役は205系なので、東海道線は省略しました。
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以前は首都圏のどこでも見られた205系。1990~2000年代のJRの通勤電車と言えば今でも205系を連想する人も多いかと思います。ですが新型車両の登場や車両の転属により、1996年の京浜東北線撤退を皮切りに紆余曲折を経て現在では首都圏で走っていたほとんどの路線から姿を消しました。プラレールではE231系やE233系も各線区の仕様が多く発売されていますが、異なる路線の仕様を初回限定版としてまとめて出したのは「通勤電車」が最初で最後です。当時の205系が国鉄→JRの通勤電車としてスタンダードなものだった事を表す4色展開と言えるでしょう。