modeling & text:安武有彬(RMM)
photo:羽田 洋
橋梁は構造的に桁橋、トラス、アーチ、吊り橋、ラーメン等に分類されますが、中でもダントツに採用例が多いのが桁橋です。鉄道橋でよく聞く「ガーダー」とは桁のことで、道路橋も含めてこのタイプの橋は目にする機会も多く、一番身近でおなじみの存在と言えるでしょう。そんなガーダー橋(桁橋)は模型製品でも多種発売されており、特定の橋梁を完全再現することでなければ、そのままでも十分リアルな鉄橋のあるシーンを作ることができます。今回はKATO製品をそのまま活用して、いかにも山間部に架かっていそうな「ぽい」橋梁を作ってみました。
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■モチーフと考察
今回は特定の橋を再現するわけではありませんが、「ぽい」ものを作るにはやはりモチーフは必要です。そこで、個人的に好きな久大本線の山間部を走る豊後森〜日田間に架かる鉄橋のうち杉河内〜天ケ瀬間の第9玖珠川橋梁をテーマ にしました。筑後川上流の玖珠川に沿って走るこの区間一帯は、いくつもの鉄橋とトンネルが 連続します。その理由は、建設計画中に対岸で支持基盤が異なる政権の交代が繰り返されたた め、何回も対岸に渡るルートが選定されたとのことですが、その話はここでは割愛しておきます。
さて、モチーフに定めたこの鉄橋ですが、上路式プレートガーダー(デッキガーダー)と、下路式プレートガーダー(スルーガーダー)の組み合わせで構成されています。プレートは荷重を支えるプレート状(I型鋼)の主桁部分のことで す。なぜ形式の異なるガーダー橋を組み合わせているかと言うと、構造特性による点が挙げられます。例えば、デッキガーダーは構造がシンプルで鉄道橋でよく採用されていますが、プレートが下に配置されるため橋脚が短くできる メリットがあるものの、その分桁下の有効高が低くなります。一方のスルーガーダーは、線路の両端にプレートがあるため幅が広くなり、使用する鋼材も増えて構造も複雑になります。橋脚の幅も広くする必要がありますが、桁下の有 効高は高く保つことができます。そのような特 性から、河川上はデッキガーダーを使用し、川沿いを走る道路を跨ぐ部分はスルーガーダーと使い分けていると推察できます。このように実例の観察と橋の特性を考察すると、より「ぽく」作ることができます。
■製作について
今回のレイアウトですが、実はこの特集用に新規製作したものではなく、手元にある余ったアイテムや材料を使って作れそうなものをコツコツ嗜んでいたものがベースとなっています。 さらに自宅に工作部屋はないので、その環境でも手軽にできるよう基本的に既製品のみで作り上げています。寸法はホームセンターで購入したべニアを組み合わせた1,200×450mmとし、そこに斜めに鉄橋(単線デッキガーダー鉄橋(朱)×6、単線プレートガーダー鉄橋(緑)× 1)を配置しました。実物らしくリアルさを追求するより、雰囲気重視にしたつもりです。
既製品をそのまま使用することの問題として、KATOのプレートガーダーは山間部の対面通行の道路を跨ぐには長すぎる点があります。そこをどう対処するかが課題でした。本来は道路と線路をもっと鋭角に交差させて、道路 の有効幅を極力狭める目論みでしたが、鉄橋を仮置きして橋脚を1本1本固定していく際に、 レールが直線になるよう微調整を繰り返して鉄橋のゆがみに気を取られていたら、いつのまにかほぼボードに平行になっていました。気付いた頃は時すでに遅し。ますます悩みが深くなりました。どう誤魔化したかは作例の通りです。
■音を楽しむ
鉄道の鉄橋の大きな魅力は、列車が渡る際の 低い響きではないでしょうか。模型でもあの響きが再現できればいいのですが、軽いNゲージで金属の響きを奏でる術は、ビスケットのカンカンにレールを敷くくらいしか思い付きません…。そこで、金属らしい響きではないものの、鉄橋を渡る際に走行音に変化が付くようひと工夫加えてみました。地面を走る部分はコルク道床と発泡スチロールでクッション性を高めて振動を抑え、鉄橋の部分は橋脚をボードに直接固定し、車両が走行する振動が桁から橋脚を伝ってボードを響かせることで、音に変化が付くようにしました。ボードに固着させたレジンとプラスターが振動を阻害することが懸念でしたが、意外と音の変化を感じることができました。
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