text & photo:鉄道ホビダス編集部
取材日:’22.12.20
取材協力:岩倉高等学校/東武鉄道
東武鉄道は2022年12月19日・20日に、これまで多くの鉄道員を輩出してきた岩倉高校にて、在学中の高校生を対象とした「ダイヤ作成講座」を開催しました。鉄道会社のいわば最大の商品とも言える「ダイヤ」の知られざる作り方を、東武鉄道で実際にダイヤ作成を担当しているプロが高校生に伝授。その仕事内容を体験するとのことで、鉄道ホビダス編集部がその様子を伺ってみました。
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■まずは教室でダイヤに親しむ
まずは教室にて東武鉄道の会社説明、そして実際に使っていたダイヤグラムが登場し、その内容を学生たちは実際に目で見て触れて確認しました。会社に入らなければまずなかなかお目にかかれない本物のダイヤグラムということもあり、その大きさや、細かく書かれた線と数字に生徒たちは目は輝かせます。
その後、配られた練習用プリントに書き込む形で、基本的なダイヤグラムの書き方と様式を学んでいきました。そもそも「ダイヤグラム」とは、私たちがよく駅で見かける時刻表の大元となっているもので、この図表に書かれた斜線に沿って列車は走行します。縦軸に駅とキロ程、横軸に時刻、列車の動きを斜線で示している他、駅での列車待ち合わせや終点での折り返し、車庫への入庫・出庫といったことまでが秒単位で細かく指示されており、鉄道が時刻に厳密に動いていることがこれを見ることでとてもよくわかります。
さらに講師となった東武鉄道の現役社員によるレクチャーは続き、その場で書き方のみならずコツなども回りながら教えていました。
ちなみに、今回生徒たちにダイヤ作成を教えた東武鉄道社員の中には、この岩倉高校を卒業した方々も多く参加しており、まさに世代を超えて、鉄道の現場で働く先輩から後輩に向けて生きた技術が伝承されていました。
■これから走る列車のダイヤを実際に書く!
練習用のダイヤを作成した後はいよいよこれから走る列車のダイヤを書いていきます。時刻表を元にして紙にペンでダイヤを書いていきます。実際の仕事では順序として逆の手順となり、書いたダイヤを元にして時刻表が作られますが、今回はダイヤを理解してもらいたいということもあり、この順番により「ダイヤグラム」そのものを作ることに親しみを感じてもらえるようになっていました。
また生徒たちも飲み込みが早く、最初は慣れない手つきだったのが、終盤になっていくにつれてペンや定規の持ち方から線の引き方まで、コツを掴んだように書き上げていく姿が印象的でした。
■午後は書いたダイヤと同じダイヤで走る列車に乗車
午後は午前中に生徒たちが書いたダイヤ通りに走る臨時列車に乗車しました。運転区間は浅草駅を発車し、途中春日部駅で列車を待ち合わせ、その後東武動物公園駅まで行き引上線に入線。そのまま折り返し北千住駅まで走行しました。そしてこの臨時列車を担当した運転士と車掌もなんと岩倉高校卒。先輩が乗務する列車に現役生徒たちが乗り込み、手元のダイヤを照らし合わせながら運行される様子を見守ります。
車両は東武634型「スカイツリートレイン」で、貴重な6050型の生き残りということもありこちらも魅力満載。複々線区間では100km/h近いスピードで走行し、迫力の直流モーターのサウンドを聴くこともできました。
乗車している間、講師である社員によるダイヤの解説や、現状電車がどのくらいのペースで走っているか、何秒ほど遅れているのか、定刻で走っているのか、次はどこで何の列車を追い抜くのかといった内容を車内放送で実況。さらにオンラインで前面展望のカメラを中継。生徒たちのスマホ・タブレットにリアルタイムで前方からの映像が配信され、それとダイヤグラムを照らし合わせながら、時刻通りに列車が運行されているのを実感することができました。
また東武動物公園での引上線入線からの折り返し待ちの時にもオンライン中継で運転台を探検。生徒からのリクエストなどにも応じる形で運転台にある様々な機器類をタブレット越しに見学することもできました。
今回は高校生向けに開催されたものでしたが、普段何気なく乗っている電車も、人の手で作られたダイヤグラムの上を走っているというのを改めて学習し、またそれを実際に列車に乗って体験できるという、大人でも学べるものが多い非常に有意義なものとなっていました。ダイヤというものを意識的に見つめ直すと、また新たな視点で鉄道を楽しむことができそうですね。
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