text & modeling & photo:飽き性モデラー(Twitter ID:@get_bored13)
鉄道模型の情景作品を作るうえで、思い出の風景を再現したい!という動機を持つ方は多いと思います。また、空想の景色を作る上でも、やはり実景というのは最高の教科書でもあり、実物と模型はやはり切っても切れない関係と言えるでしょう。今回はTwitterなどを中心に活躍する「飽き性モデラー」をご紹介。自身が住んでいる新潟の有名撮影スポットを1:150スケールの世界にギュッと閉じ込めたような作品を製作して話題となった作品をこちらでご覧いただきます!(編集部)
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■情景作品を作ろうと思ったきっかけ
飽き性モデラーとしてTwitter上で作品を紹介させていただくようになってから約3年が経過しました。その中で多くのモデラーさんの刺激を受けました。今までは車両の加工を専門に活動をしていましたが、私も情景を作りたいと思ったのは仲良くしていただいているフォロワーさん達の影響が大きかったのです。鉄道模型は、地面に車両があって成立する世界だとも言えます。自分が作った車両の雰囲気を生かせる…そんな情景を作りたいと思いました。
■作品の概要
製作の前に、自分を奮い立たせるために「ツイートによる製作宣言」と、「レイアウトボード・レールの購入」を行ない、自ら後戻りできないようにしました。モデルは、現在住んでいるということもあり、新潟の景色を作りたいなと考えていました。そこで、作って楽しく、車両を置いて映える、そして多くの方が知っている場所…ということで思いついたのが信越本線の青海川〜鯨波間です。このポイントは鉄道写真でも言わずと知れた超有名スポットです。モデラーだけでなく実車ファンにも楽しんでいただけるようにこの場所を選びました。
作りたい区間は決定しましたが、決められたサイズの中でどう表現していくかを考えなければいけません。線路の位置、ストラクチャーの雰囲気や高さなど、Googleマップを見たりして想像しながら位置を決めていきました。
このモジュールはTOMIXのコンビネーションボードAを2枚使った1,200×300mmで製作、収納のことも考えて分割できるように接続固定はしませんでした。詳細は後述しますが、分割となると互いのレールを電気的に接続させる仕組みが必要となります。ジョイントを取り付けたくなかったので、内部で通電させるケーブルを取り付けました。
■本当に「セメント」で作られたトンネル
今回のモジュールを製作するにあたって特に力を入れた部分がいくつかありますが、その1つがセメントトンネルです。この「青海川〜鯨波」モジュールでは必須の情景となるトンネル。実は、最初からセメントを使ってトンネルを作る予定はなく、たまたま訪れた100円ショップで、セメントが売っていることを同行者から教えてもらいました。そこで、石膏やパテなどの要領でセメントでも同様に作れるのではないかと思い付きました。
サイズはグリーンマックスの複線トンネルポータルに合わせ、型枠は枠を外す時を考慮して厚紙を使用しました。型枠の外側には短冊状にしたプラ板を全体に貼付、ポリスチレンフォームで外側を囲い、水と混ぜたセメントを流しました。気温にもよりますが硬化には1〜2日かかるようで、早く枠を取り外したい欲との闘いでした。ダメもとで作り始めた実験的なトンネルですが、結果は大成功。読み通り型枠の跡もしっかり出て、質感もNスケールでも問題ない表現にできました。ウェザリングは軽く行なうのみに留めましたが、配線はしっかり行ない、トンネル内もディテールアップしました。退避坑上部には、友人から教えてもらったELワイヤーで蛍光灯を表現しました。
■コダワリの情景たち!
●植物
こだわりポイント以外のシーナリーももちろん全力で作りました。この場所は海あり、トンネルあり、植物あり、トイレありと作りがいのある場所です。植物ですが、今回の季節設定は秋〜冬にかけてとしたので、全体的に枯れかけた色味にしてみました。日本海の強風によって斜めに育った特徴的な黒松は、100円ショップのリースワイヤーをベースとして、ベーシックパテを荒めに塗って幹を表現しました。枝先はオランダフラワーにKATOの草はらシリーズを振りかけて表現しました。本作品の植物でどう表現しようか迷ったのがトンネル脇に生える竹藪です。いろんな素材で試してみた結果、オランダフラワーのまっすぐ伸びている部分だけを切り取り、グラスフィールドを葉に見立てるという方法を採用。ものすごい量を1本1本植えました。山側にはフィールドグラスやミニネイチャーを使用して枯れた植物を表現しています。
●海岸&護岸壁
護岸壁はグリーンマックス製の石垣とプラ板を使用して製作しました。こちらもテクスチャーペイントを使用し、護岸壁上には防草シートを貼りました。ちなみに、この防草シートの素材は100円ショップで見つけたアイロンシートです。海はモデリングウォーターとジェルメディウムを使用し、荒々しい日本海らしい海を表現してみました。
■おわりに
勢いに身を任せてスタートした初めての大型モジュールですが、自分なりにやってみたいことはできたかなと思っています。当初は締め切りを設定せずにゆっくり作っていこうと思っていましたが、国際鉄道模型コンベンション(JAM)への参加のお声がけをいただき、なんとか間に合わせたいと予定を変更し、構想を練り始めた3月頃からの約5ヶ月間で製作することとなりました。作業は出展前日まで続いてしまい、間に合わず一部が未完成となってしまったのが反省点です。
また、細長いモジュールとなったため、実車写真で見るような引きのアングルは撮影できません。今後は少しづつ手を加えたり、追加のモジュールを作って情景の拡大をしていけたらと考えています。
情景の製作となると、車両とは勝手が違い苦戦すること多数…植物を表現することが一番難しかったです。反省点は挙げればきりがありませんが、車両映えするモジュールを楽しみながら作ることができました。今後も技法や慣例に囚われず、広い視野を持って自分らしさのある作品を作っていきたいと思います。
今回のモジュール製作にあたり、多くの方からの助言や素材の提供をいただきました。この場を借りて改めて感謝いたします。ありがとうございました。
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鉄道模型の楽しみ方の一つである「情景模型」。ノスタルジックな郷愁を誘う風景、旅先での思い出や名所、四季を感じる風景など、それぞれが思い描く鉄道シーンを、まるでキャンバスに描く絵画のように、限られたスペースの中に立体的に再現します。
風景の一角を切り取る「ジオラマ」は、動きのない中に生活感や躍動感を再現して「動き」を魅せるのに対し、鉄道模型の醍醐味で ある「走行」を加えた「ミニレイアウト」もまた、小さな世界観を創り出す楽しみ方の一つ。これらを「ミニシーン」と称し、小さいながらもさまざまな角度から眺めて楽しめる、部屋のかわいいインテリアにもなるひとつのディスプレイを創出します。
本特集では、そんなミニシーンのテクニックや個性豊かな数々の作品を紹介していきます。また、ミニシーン作りに欠かせない 最新ジオラマ素材の種類や使い方もわかりやすく解説していきます。秋の夜長…就寝前のほんのひとときに、「ミニシーン」に浸ってみてはいかがでしょうか?