text & photo:上石知足(鉄道ホビダス)
立川駅を起点とし、青梅駅を経由して奥多摩駅へ至る青梅線。1894(明治27)年に立川〜青梅間が開業した「青梅鉄道」をルーツとするこの路線は、現在では途中の青梅駅で折り返す列車が多く、また列車の車窓もこの駅を境に変わってくるポイントでもあります。かつては奥多摩周辺で産出される石灰石輸送を主眼とした路線でしたが、2018(平成30)年からはこの青梅線の青梅駅〜奥多摩駅の区間に「東京アドベンチャーライン」という愛称が設定され、その観光路線色を強めつつあります。
今回はそんな青梅駅から先の13箇所の駅を、筆者が学生時代に取り組んだ、「都内全てのJR駅風景を撮影する卒業制作」で使用した写真を中心に、それぞれの駅の魅力に迫りたいと思います。
※この記事の写真はすべて2019年までに撮影されたものです。現在の姿とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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■「昭和レトロ」を楽しめる青梅駅
▲駅構内の通路に掲出される名物の映画看板。かつては青梅の街中にも存在していたが、こちらの方は看板職人が他界したことや老朽化などを理由に撤去されてしまった。
‘18.7.27 青梅線 青梅
2005(平成17)年から「レトロステーション」として昭和風の装飾が施されている青梅駅。駅の名物でもある映画看板をはじめ、ホーロー製の広告看板に、JR東日本のデザインフォーマットに基づきながらもレトロな装飾が施されている駅名標、ステンドグラスが美しい駅待合室など、他の駅では見られない特徴の多い駅です。
撮影当時の2018年はまだ発車メロディーが青梅赤塚不二夫会館にちなんだ「ひみつのアッコちゃん」でしたが、こちらは現在青梅赤塚不二夫会館が閉館したのに伴い、変更されてしまいました。
▲ここでも愛される201系。
‘18.7.27 青梅線 青梅
また、駅の連絡階段には「ようこそ昭和の街 青梅へ」の文字とともに201系がお出迎え。今年で引退から12年が経つ豊田車両センターの201系ですが、このような形で今も愛され続けているのが、レイル・ファンとしても嬉しいところですね。
■駅の真横に「とまれみよ」、難読駅名に改札外に丸型ポスト。
▲駅ホームから「とまれみよ」を観察することができる石神前駅。
‘19.1.27 青梅線 石神前
青梅線に乗って駅に降りてみると、それぞれに特徴が見えてくるのも面白いポイント。中でも石神前駅で降りると、駅のホーム真横に警報機や遮断機のない「第4種踏切」が鎮座しており、おなじみの「とまれみよ」の看板がお出迎えしてくれます。
▲難読駅名と言われる軍畑駅。軍とかいて「いくさ」と読むのは、確かに言われてみれば納得できるが、言われなければ読めない。
‘19.2.3 青梅線 軍畑
また、「難読駅名」として名高い軍畑(いくさばた)駅もこの青梅線の駅。この時は軍畑〜白丸間が未撮影で、早朝から訪れ一駅ずつ回る計画でしたが、白丸駅に着く頃には軍畑に到着してから3時間以上が経過していました。それもそのはず、青梅以西区間の列車本数は1時間に1〜2本ほどで、一度降りてしまうと30分から1時間以上は待たされてしまいます。全駅来訪を考えている方は計画的に。
▲年季の入った丸型ポストだが、オブジェなどではなく現役のもの。一生懸命撮影していてうっかり投函する方や郵便屋さんの迷惑にならないように。
‘19.1.27 青梅線 宮ノ平
また、青梅駅の隣になる宮ノ平駅を降りると、駅前に懐かしい丸型ポストが存在しています。もちろんオブジェではなく今でも現役。模型の題材にしたくなるような情景が実際に駅を中心として広がっている点が魅力です。
■駅構内の標示類が魅力的な鳩ノ巣駅
‘19.2.3 青梅線 鳩ノ巣
鳩ノ巣駅は終点となる奥多摩の2つ手前の駅。2面2線で、行き違いができる構造となっています。木造駅舎が今も綺麗に残っており、周囲の山々も相俟って風情のある情景が広がっていますが、この駅の魅力は駅舎だけではありません。
‘19.2.3 青梅線 鳩ノ巣(2枚とも)
ふと駅ホームに目をやると木製の柱がまず目を引きます。そしてさらにそこにはスミ丸ゴシックで書かれた標示類に、現在はもう動いていないアナログの温度計まで、まるで時が止まったかのように存在しています。また、そんな中やってくる車両はすべて都心部でおなじみのE233系というギャップがなんとも趣味人の心をくすぐります。
■ハイキング利用も!「山岳路線」としての顔
▲こちらは鳩ノ巣駅構内に存在する登山届提出箱。このような設備が青梅線各駅に点在している。多くの登山客・ハイキング客が訪れる路線ならではの光景だ。
‘19.2.3 青梅線 鳩ノ巣
‘19.2.3 青梅線 御嶽
休日ともなると、青梅線沿線にはハイキングや登山に訪れた利用客で賑わいます。御嶽駅、鳩ノ巣駅、白丸駅など各駅には登山計画書の提出箱が設置されるほど。また、沿線の情景も青梅駅から西へ向かうほど多摩川の渓谷を沿うようにして列車が走ります。
▲川井駅を降りると美しい斜張橋である「奥多摩大橋」が眼前に広がる。
‘19.2.3 青梅線 川井
中でも川井駅は、ホームに降り立った瞬間にダイナミックな山とその間を渡す斜張橋を一度に眺めることができるというビュースポットでもあります。そんな景色の中、急カーブを曲がってやってくる電車を見ればまさしく「山岳路線」の風格を十分に感じることができます。
開業まもない1895(明治28)年から1998(平成10)年まで石灰石輸送の貨物列車が走っていたことなどから、この路線は山とともに発展と延伸を遂げてきたと言っても良いでしょう。山間を貫くようにして走る路線も石灰石の産出場所を求めて西へと進んでいった結果によるもの。この路線の線形そのものも、青梅線の長い歴史のひとつなのかもしれません。
▲終点 奥多摩駅の駅舎はロッジ風の風格ある駅舎。1944(昭和19)年、「氷川駅」として開業した時からの駅舎が今も健在だ。
‘19.2.3 青梅線 鳩ノ巣
この風光明媚な路線にまた貨物列車がやってこないものかと思うレイル・ファン諸氏も多いかもしれませんが、旅客輸送に徹し、新しいステンレスの車両と古い駅舎や看板といった新旧が入り乱れる姿もまた大変魅力的に思います。実際に訪れて路線を肌で感じるもよし、鉄道模型で再現して楽しむもよし、それぞれの形で青梅以西の「青梅線」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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