text & photo:RM
取材日:’22.3.18 取材協力:公益財団法人 新宿未来創造財団
※撮影許可を得て撮影を行っております
現在でこそ、都内の路面電車的な路線は都電荒川線と東急世田谷線の2つくらいになっていますが、かつては都電だけで200kmを超すネットワークを誇り、都市の発展に大いに寄与しました。
▲常設展示されている都電5000形のレプリカ。
その起源は明治時代の馬車軌道に始まり、明治時代末期にかけて大きな3つの民間会社が競うように路線網を構築。それを1911年に東京市(後の東京都)が買収して一元的な市電→都電となりました。その後、震災・戦災という災厄を乗り越え、最大規模となったのは1955年前後。しかし同時にモータリゼーションの波に押され、また交通局自身も積極的に推進した地下鉄網の発展によって、それから20年も経たないうちに前述の荒川線を残して全廃…という、波乱に満ちた歴史を辿っています。
▲収蔵展スペースの入り口。
JRおよび地下鉄の四ツ谷駅から徒歩10分。閑静な住宅街にある新宿区立新宿歴史博物館では、この都電の歴史を特に地元である新宿区のエリアにフォーカスして解き明かす所蔵資料展「路面電車と新宿風景」を開催中です。章立ては以下の3つ。
第1章 東京の路面電車の歴史
黎明期、黄金期、激動期、暗黒期、終焉期と5つの時代に分けて、それぞれ貴重な写真や文献、立体資料が展示されています。ここで言う黄金期とは、東京市電気局誕生から関東大震災までの時期であり、単純な路線長などの意味ではないことに注意が必要。
▲三越呉服店(今の百貨店の三越)は、包装紙に当時の東京の電車案内図を描いていた。
暗黒期(モータリゼーションに押される時期)から終焉期(廃止が進み、路線撤去の状況まで)にかけては、ファンとしては目を背けたくなるちょっと悲しい情景が相次ぎますが、歴史を正視しなければ、という展示スタンスでしょう。
▲廃止の装飾が施された都電の情景。
第2章 路面電車と文学
文学は当博物館が強みを持つテーマで、夏目漱石、林芙美子、高田敏子らが文字で描写した当時の路面電車の情景を、写真とと共に展示します。
第3章 路面電車廃線の旅
新宿区内を走行していた都電各系統の往年の写真を多数展示。ハイライトは大ターミナルである新宿駅で、時代と共に変貌していく街並みと路線・電車をたっぷり味わうことができます。荒川線(旧32系統)も、面影橋・早稲田の末端の2つの電停が新宿区内であり、今とはまったく異なる情景に驚かされるでしょう。
11系統では、新宿駅東口の電停の移動(現在のアルタ前から靖国通りへ)の様子などがよくわかる写真が時系列で展示。
▲都電の系統板などの立体資料も展示。
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もともとこの博物館には鉄道に関する展示物が他にもあります。まず所蔵展入り口近くのホワイエには、小田急3100形ロマンスカーNSEの先頭部モックアップがあり、その中には本物の運転台機器が設置されています。その近くには同じNSEの「ロマンスシート」4脚と乗降扉1枚も展示中。ここまでは、企画展も含めて入場無料のエリアです。
そして入場料大人300円で入れる常設展示のエリアには、当館のシンボルとも言える、都電5000形のレプリカ(車体半分ほど)が置かれています! 残されていた実物の部品を使い、実物の図面を正確になぞって再現されたという車体は、車内も雰囲気よく再現され、当時の風俗を反映した人形も乗車。5000形は戦前製の半鋼製ボギー車で、都電としては比較的大型の車体を持ち、1968年まで活躍しました。このレプリカでは初期のクリーム+グリーンの塗り分けで、右書きの方向幕から見ると戦前期の時代設定とされているようです。
本展は4月3日までの開催。春休みのお出かけにぜひおすすめです!
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