一見、情景を作り込んだ大規模なレイアウトに見えるこの作品、実はトミーテックの「ジオコレ」を組み合わせて、街区ごとに独立したモジュールを組み合わせたもの。作者によって「ユニット・ジオラマ」と名付けられた作品で、自由に並べて楽しむジオラマ工作の魅力を味わっていただきたい。

「いつかは夢の固定レイアウトを!」に立ちはだかるハードル
かねてから憧れていたレイアウト作りを始めようと思っても、家庭の事情により広げたままにしておくことが難しい方も多いのではないだろうか。また、コンパクトに作ったとしても、線路と情景が一体化してれば、いずれ見慣れてしまうことも。車両なしでも単体で飾れて、走らせるときは飽きのこない情景を演出できる、しかもコンパクト収納までをも追求した末に、作者がたどり着いたのが「ユニット・ジオラマ」だった。
小さいからこそ続けられる、長く楽しめる
今回紹介するのは、言わば「街区のジオラマ」だが、ポイントは各モジュールとも方角を設定してあること。建物のサイズなどで左右方向には差が出たとしても、前後方向を歩道に囲まれた設定とすることで、サイズ感を統一している。こうすることで、並べ替えによる景色の変化も容易となる。
台座の厚みを揃えて自然な景色に
各モジュールのベースにはスチレンボードを積層で使用し、高さは5mmに統一されている点もポイント。ジオコレは発売時期により台座の厚みが異なる。初期製品は2mm、近年のものは5mmといった具合に、そのまま並べると隣同士で高さが違うことも。そこで、2+3mmや2+2+1といった具合でボードを組み合わせて、台座の厚さが5mmの製品であれば3mmの部分を建物のサイズに合わせてカットすることで、表面に出ている厚さを2mmに統一している。なお、積層することでスチレンボードの「反り」も防ぐこともできるという。
塗装にはアクリル絵の具を使用
広範囲かつ均一に塗装できる缶スプレーやエアブラシは便利だが、使用できる環境が整っていない場合もあるだろう。そこで作者が選んだのは水溶性のアクリル絵の具。調色により微妙な色合いが作りやすく、短時間で乾燥するほか、匂いがないのもうれしいポイント。
それぞれの環境に適応しながら鉄道模型を楽しむために生まれたアイデア、「いつかは!」と思っているみなさんの背中を教えてくれる一助になりはしないだろうか?
「ジオラマコレクション完全マニュアル5」より
ジオラマ製作:岡田忠明
↓見どころ満載の作品を写真でお楽しみください!
- 「狸小路商店街」駅近くの線路際に立地する憩いの場。
- 反対側から見た「狸小路商店街」 。
- 見る角度、飾る角度を変えながら楽しめるのも「ユニット・ジオラマ」のいいところ。
- 「タウンハウス」 上場企業のおしゃれな家族社宅。住宅部分は高低差を付け、2棟の間に歩道を通した見た目に変化を加えている。
- 裏側から見ると1段低い位置に駐車場があり、スロープが通じている。
- “模型の密度”を作ると世界観が充実する。
- モジュールのベースは高さ5mmに統一してあり、トミーテックのバス走行システムなどとも一緒に遊べるようになっている。
- 樹木や植栽も製品をベースに、陽の当たり方などを考慮して色を重ねている。
- スチレンボードで箱を作り収納するのもおすすめ。
- ジオコレを中心とした建物はアクリル絵の具で彩色。表情豊かな屋根に注目いただきたい。
- ジオコレのパン屋をベースに外付けの階段を追加して、2階部分を別店舗に仕立てた「ベーカリー・カフェ」。
- 「書き割りストラクチャー」 正面からだと分かりにくいが、遠景用に奥行きを詰めて作られている。
- 「農家」 こちらは母屋にTOMIX製品を使っているが、農機小屋をはじめとするジオコレ製品とも違和感なくまとまっている。
- 「農家」を反対側から見たところ。
- 「長屋商店街」 問屋さんや近隣の職人さんが通う食べ物屋が居並ぶ、生活感のある商店街。
- 「銀行のある街区」 街中の定番ストレクチャーともいえる銀行だが、裏手に駐車場を設けることでリアリティが増している。
- 反対側から見た「銀行」
- 街区単位で作るのが基本だが、写真の「銭湯」のように建物単位で作ることも。
- 裏側にはボイラーや資材置き場がある。
- 「消防署のある街区」 重厚な消防署を中心に、雑多な焦点を配置してまとめたモジュール。
- 「消防署のある街区」を裏から見たところ。
- 「医院のある住宅街」 医院をメインに、洋館付き住宅と平屋の組み合わせで、ちょっと懐かしい郊外のイメージ。
- 裏から見た「医院のある住宅街」
- 「旅館」 地元の名士もよく利用するという老舗旅館。限られたスペースで手際よく雰囲気を再現している。
- 旅館の裏には駐車場を設定。
- 「教会」 教会の敷地内に住居を併設。各要素の合理的な配置に注目。
- このモジュールは3方を歩道で囲んだ。
- 「お醤油屋さん」 銭湯同様に店舗単体で成り立った小さめのモジュール。
- 「長屋商店街」の裏手で井戸端会議に花を咲かせるおばさんたち。人形を効果的に配置することで情景が活き活きとしてくる。












































