「かわね路号」やアプト式の井川線で知られる大井川鐵道、フジドリームエアラインズ、そして富士山静岡空港という、静岡県を拠点とする3社の共同ツアーが話題だ。
移動に対して様々な制約が生じるコロナ禍において、近県の旅行者向けに企画された「富士山遊覧飛行と大井川鐵道と南アルプスあぷとライン」ツアーは、その盛りだくさんの内容から定番企画になりつつある。
このツアー最大の特徴は、なんといっても次々に用意された乗りもの体験。昨年末に参加した際の模様をご覧いただきたい。
「これでもか!」と予定が盛り込まれたツアーの出発は早い。5時30分に静岡駅をバスで出発した一行がまず向かったのは富士山静岡空港。6時半のオープンに合わせて到着するため、一般客を見かけることはほぼない。貸切状態の空港で朝食を受け取り、一つ目の目玉企画である「富士山遊覧飛行」に出発。
おっと、出発前にも特別な体験が用意されていた。通常は建物から通路を通って直接乗り込むことが多いが、このツアーではあえて地上からアクセスする。朝日に照らされた滑走路を見ながら歩くのは気持ちがいい。プライベートジェットのオーナー気分を満喫しながら搭乗しよう。
遊覧飛行は40分ほどで、富士山のまわりをぐるっと回ってくれる。なお、左右どちらの席に座っても必ず見やすい位置を飛んでくれるので、見逃す心配もない。ちなみに、悪天候により富士山が見られなかったことは数回しかないというから、地元企業の企画に富士山も賛同してくれているのだろう。
遊覧飛行を楽しんだあとは再びバスに乗り込みしばしの移動。朝早かった分、ちょうどいい“居眠りタイム”だ。目を覚ますと周囲は山に囲まれており、次の目的地である湖上入口に到着。井川線の沿線は秘境駅の宝庫で、海外からやってくるファンも多いという。なかでも湖の上にぽかりと浮いたように見える「奥大井湖上駅」は老若男女を問わず虜にする絶景と言えるだろう。
また、井川線からではなく、徒歩で駅に向かうのもアドベンチャー感満載で思い出深い体験だ。ダム湖である接岨(せっそ)湖にある秘境駅で絶景を楽しんでいると、井川線がやってきた。
鉄道好きの方ならご存じかもしれないが、井川線には90パーミルという日本一の急勾配があり、そこをクリアするために活躍しているのが、レールの間の歯車をかみ合わせて進む「アプト式機関車」だ。軽便鉄道並みのコンパクトな車両のため、アドベンチャー気分を味わいながら、千頭駅に向かった。
昼食は川根温泉ホテルでバイキング。ホテルの目の前には大井川、そして大井川本線が走っており、食後は通過する列車を眺めながらひと休み。河原におりれば、鉄橋の真下から迫力ある通過シーンを楽しめる。
15時半ごろ、本ツアー最後のプログラムであるSLに乗車。大井川や茶畑を左右に見ながらの乗車体験は、ここでしか味わえないいい思い出になるはず。手を振ってくれる沿線の方々に応えるのも、童心に帰った気分でいいものだ。
30分ほどのSL体験を満喫し、新金谷駅に到着。ツアーの企画自体はこれでほぼ終了なのだが、新金谷駅にはそもそも見どころが多い。まずは、大井川鐵道の特徴でもある多種多様な車両たちをチェックしよう。同社の車両はすべてが譲渡車両のため、近鉄、南海、東急、西武など全国各地のクラシック車両で博物館状態なのだ。また、新金谷には車両基地や整備場もあるのであわせて楽しみたいところ。
少し長くなってしまったが、これでもツアーの要所をかいつまんだ程度なのが正直なところ。また、参加時期により季節ごとの魅力で変化するこのツアー、この春も予定されているとのことなので、参加を検討してみてはいかがだろうか。
※時期や車両の状態により、「SL乗車」はEL(電気機関車)に変更になる場合があります。
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