一畑電車は、1914年に一畑軽便鉄道(現・一畑電気鉄道株式会社)として運行を開始し、2006年より一畑電気鉄道株式会社からの分社独立を経て一畑電車株式会社となり、「ばたでん」の愛称で今日も宍道湖の北岸、出雲の地を元気に走っています。元京王の5000系と元南海の20000系が走り、それぞれのオリジナルカラーに戻した編成が話題になったことはレイル・ファンならよくご存じのことでしょう。
 その一畑電車では、日本最古級の電車「デハニ53」を使用した体験運転に注目が集まっています。雲州平田駅の構内に敷かれた体験運転専用のレールを、片道およそ120m、自分の手で走らせることができるのです。しかも、今や貴重な「吊り掛け」モーター。これを自分の手で運転すると、音だけでなく足下から伝わる振動で身体も震えるよう。吊り掛けモーターを五感で体験できます!
この体験運転がスタートしたのは2011年7月30日。なんと、すでに運転体験100回を達成した方がいらっしゃいます。大阪府在住の増田義裕さん(56歳・会社員)です。体験運転は一日複数回の運転が可能とはいえ、週末の半分近くを出雲に足を運んでいることになります。何がそこまで駆り立てるのか、伺ってみました。
「なんと言っても「本物」を自分で走らせること、これが一番です。シミュレーションゲームもやりましたが、本物は全く違います。しかもデハニ53は吊り掛けですから、それほどスピードが出ていないのに、その音のスピード感・迫力がすごい。そして、なにより停めることが一番難しいのですが、思った通りにピタリと停車させることができたとき、この瞬間は最高です。」  その日によってブレーキレバーの感覚が微妙に違い、しかも前後の運転台でも違うとか。それではこれからも、と聞いてみました。 「この電車が動く限り、200回でも300回でも続けていきたいですね。」  魅力を一所懸命語ってくれる増田さん、子供のような笑顔を見ればその楽しさが伝わってきます。ちなみに、現在100回達成者はお二人で、3人目の達成も間近とのこと。あなたもぜひ一度、「本物の電車」を自分の手で動かす感動を味わってみませんか?