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2007年07月05日
『さよなら腕木式信号機&タブレット』 〔その他〕
こんにちは、副編まるはねです。今日は先日個人的に入手したスグレモノ書籍を勝手に(!)ご紹介したいと思います。

去る3月、くりはら田園鉄道を訪問して以来、腕木式信号機とタブレット交換ににわかに興味が湧いてきた(今さら…?)私。特に腕木式信号機は先日名取編集顧問のブログでも取り上げられていましたが本当に絶滅寸前、旅客営業している路線ではどうも津軽鉄道が最後の1路線となってしまったようです。そこでネットでいろいろ検索していたらこの本がひっかかりました。その名もずばり『さよなら腕木式信号機&タブレット』(君島靖彦氏撮影/著・現代企画室刊)。2000年に刊行された本で、まだJR線上にも腕木式信号機がぎりぎり残っていた時点でまとめられたものです。2部構成となっており、前半は腕木式信号機及びタブレットの写真集、後半はそれらの資料編として、基本用語から実例解説までが文章で掲載されています。

腕木信号機のカラーグラフ。周囲の美しいシーナリーもあいまって強く印象に残ります。
写真集の部分は前半カラー、後半モノクロの構成で、比較的大判の誌面を有効に活用し、グラフィカルに腕木・タブレットの魅力を伝えます。青空バックにすっくと立つ腕木からは、風雪に耐え抜いて安全を守ってきた誇りのようなものが感じられますし、夕焼け空バックに浮かび上がるシルエットは千両役者の貫禄といった趣です。またタブレット交換のシーンではダイナミックな動きの感じられるカットが多く、特に急行〈砂丘〉や八高線貨物の通過授受シーンは、スチル写真とは思えない、タブレットが保護棒に当たる衝撃音まで聞こえてきそうな躍動感あふれるものとなっています。私自身は実地に見たことはないのですが、駅員が腕を突き出して通過列車からタブレットを受け取るシーンというのは、「鉄道が人の力で守られている」というのが象徴的に現れているようでとても印象に残りました(と同時に当時実際に見に行っておけばよかったとも後悔)。叙情的側面としてだけでなく、資料的価値としても、タブレット授受の仕組みがとてもよく伝わるという点で第一級ではないかと思います。

タブレット交換のカラーグラフ。連続写真なども豊富に収録され、「動き」の感じられる写真が多くなっています。
資料編は基本的に教科書的な要素も強く、心して読まないと頭に入らない部分もあるのですが、タブレット方式の閉塞器取扱手順などはA駅とB駅のやりとりが分かりやすく書かれていて、「へぇ、そういう風にやり取りをしているんだ」という感想を持ちました(すいません、素人臭くて…)。また各地の実情に合わせて特例・例外扱いとなっていたような部分も、実地取材によって綿密に記録されており、恐らく他の記録には残らない部分かと思いますので非常に貴重だと思います。刊行時点での閉塞種別(どの区間でどんな閉塞方法を採用しているか、また例えばタブレットならどの種別〔マルとかヨンカクとかサンカクとか〕が適用となっているか)一覧表も、よく調べ上げたものだと感嘆しました。

資料編。かなり読み込まないと理解できない、しかしながら間違いなく貴重な記録です。
著者のHPによりますと、本書は調べ上げたこれらの記録を後世に残すため、著者自身の経済的負担によって出版されたものとのこと。定価だけ見るとちょっと高い印象を持つかもしれませんが、内容と部数の兼ね合いから言うとこれでも赤字必至のバーゲンプライスなのだそうです。何より著者が対象に寄せる思いの強さがページごとに伝わってくる感じがしまして、同じ本作りをしている身としては大いに刺激を受けました。特に「購入をためらっているのでしたら、地元の図書館に購入依頼をしてみてください、そしたら蔵書として後世に残せますから…」といった呼びかけには心を動かされましたよ。一般書店店頭ではあまりお目にかかれないと思いますが、鉄道書に強い書店さんでは置いてあるかもしれませんし、ネット通販でも簡単に購入可能です。まるはね的には、「読者を選ぶ本だけど、興味ある人にとっては今後バイブル的な一冊になるでしょう」と評価したいと思います。
●A4判変形・128ページ
●定価3,990円(税込)
投稿者 まるはね : 2007年07月05日 20:09

