■EDC採用の経緯と「TRAIN SUITE 四季島」
2017年5月、JR東日本は「TRAIN SUITE 四季島」の運行を開始した。この列車は本州、北海道地区を周遊するいわゆる豪華クルーズトレインとして計画されたもので、東京を起点に東北・北海道の各路線を周遊することから、直流、交流の電化区間に加え、非電化区間も走行可能なスペックが求められた。以前なら客車列車として計画されたが、近年は機関車牽引の解消を進めてきたため、広範囲にわたって特定の列車のために検修・運転に伴う設備などを準備することは非効率と言える。こうして機関車を必要とせずに電化区間・非電化区間を走行可能な車輌として計画されたのが「四季島」に使用されるE001形である。
この車両の大きな特徴として電化区間の走行時は通常の電車と同じくパンタグラフから集電し、VVVFインバータによって制御を行っているが、非電化区間の走行時はディーゼルエンジンによって発電を行い、走行用電源と補助電源を得て電気式気動車の原理で動くことが挙げられる。なお、このような走行方式は「EDC」=Electric Diesel Carと呼ばれている。
また、本形式には多様な線区を走行するにあたり様々な工夫が施されている。例えば、直流区間では架線・パンタグラフの損傷防止のため、4基のパンタグラフを使用している。一方電圧が高く、電流量を少なくできる交流区間では2基の使用としており、重量の大きい主変圧器もこのパンタグラフを搭載する2輌のみとしている。また、最近の電車が標準的に装備する回生ブレーキについては発電ブレーキ用抵抗器を備え、非電化区間走行時にも使用可能となっている。このように気動車と電車の機構を共存させる技術は電気式気動車で得た電車との共通化という技術があってこそ生まれたと言えるだろう。