鉄道ホビダス

保存された雨宮製台車。

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▲銚子電鉄笠上黒生で解体されて2週間あまり、再塗装を施されて見違えるほど綺麗になった雨宮製台車。ペアのもう1台は東武博物館に引き取られている。'09.10.18 大胡 P:瀧口宜慎
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先週の「上毛電鉄感謝フェア」(→こちら)の際、当日のサプライズとして大胡会場で展示されていたのが、銚子電気鉄道のデハ101が履いていた雨宮製作所製の板台枠式台車です。銚子電気鉄道最初のボギー電車として、1939(昭和14)年の新製以来、一貫して銚子の地で過ごしてきた同車でしたが、1999(平成11)3月に廃車、先月、9月29日に留置されていた笠上黒生駅構内でついに解体されてしまいました。

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▲花巻電鉄のいわゆる“馬面電車”でも使用されていた雨宮製の古典台車。そのルーツは2フィート6インチゲージの下野電気鉄道用のもの。'09.10.18 大胡 P:瀧口宜慎
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そのデハ101の台車がなにゆえ上毛の地にあるのでしょうか。この謎を解くには、この台車が辿ってきた数奇な生涯を遡ってみる必要があります。

091026nnn001.jpgこの雨宮製台車は、東武鉄道鬼怒川線の前身である2フィート6インチ(762㎜)ゲージの下野電気鉄道が1926(大正15)年に雨宮製作所から購入したデハ103が履いていたものです。1929(昭和4)年に下野電気鉄道が3フィート6インチ(1067㎜)ゲージに改軌される際にこの台車も改軌されたものの、続いて1931(昭和6)年に下野電気鉄道が550ボルトから1500ボルトに昇圧するにあたって不要となり、同鉄道が東武系列となってからは東武鉄道浅草工場に保管されていました。1939(昭和14)年に日本鉄道自動車工業によって引き取られたこの台車は、同社が製造した銚子電気鉄道初のボギー電車デハ101用として再利用され、思いもかけぬ長命を得ることとなったのです。
▲「雨宮製作所 大正十五年」の銘のある銚子電気鉄道デハ101台車銘板。エッチング製の小さな銘板だったが、残念ながらその後失われてしまった。'79.5.19 銚子電気鉄道仲ノ町 P:名取紀之
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今回の解体を受けて、先般リニューアルを果たし積極的な展開を見せている東武博物館(アーカイブ「東武博物館がリニューアルオープン」参照)が、自社関連の貴重な実物資料として引き取ることとなり、そのうちの一個を縁ある上毛電気鉄道で保存することとなったというわけです

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雨宮製作所(雨宮鉄工所・大日本軌道鉄工部)は日光電気軌道納入の単車を処女作として、京成電気軌道や京王電気軌道などにまとまった数の製品を送り込んでいますが、中川浩一さんらによる『軽便王国雨宮』(丹沢新社)所収の「雨宮の台車」によれば、こと電車の場合は車体だけを雨宮が製作し、台車は輸入品や住友、川崎、汽車などの大手製品を取り付ける例が多く、自社ブランドの台車は何種類もなかったようです。
▲花巻電鉄デハ1形組立図(雨宮製作所大正15年7月作図・部分)に見るその台車。ホイールベースは4フィート11インチ(1499㎜)、車輪直径は2フィート10インチ(864㎜)。
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そのなかでひときわ異彩を放っていたのが、大正末期に製造されたこの板台枠式台車でした。鋼板とアングルを使った手法は、H1形、H2形と称される京成、京王(玉南)向け台車と共通で、前出書によれば、当時の「雨宮の工作施設の関係」ゆえの苦肉の策だったようです。ちなみに、やはり同年製造された“馬面電車”として知られる花巻電鉄デハ1~3のものとほぼ同形で、そう聞くといかに“珍品”かがよりわかりやすいかもしれません。

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▲東武鉄道5700系クハ701が履いていた汽車会社製直角カルダンKS-105形台車も同時に公開された。'09.10.18 大胡 P:瀧口宜慎
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なお、大胡車庫では同時に汽車会社製直角カルダン式のKS-105形台車も保存展示されました。これは1953(昭和28)年に東武鉄道5800形5800・5801号に取り付けられた、汽車会社初の直角カルダン台車です。その後、駆動装置を外して特急車5700系クハ701号に転用されていましたが、長らく処分保留で留置されていた同車が去る7月29日に解体されたため、技術遺産として保存されることとなったものです。

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▲クハへの転用にともなって最大の特徴である直角カルダン駆動装置は失われているものの、戦後の電車史を語る重要な保存品。'09.10.18 大胡 P:瀧口宜慎
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ふたつの台車ともにすっかり綺麗に整備されてお披露目されましたが、デハ101、104、そしてデキ3021とともに、上毛電気鉄道は今後、北関東の“ヘリテージ・センター”としてますます注目を集めてゆくに違いありません。

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