鉄道ホビダス

新京成が鉄道聯隊の軌匡を復元。

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▲「電車基地見学・展示会」で初めて展示された鉄道聯隊の軌匡。壁面には新京成電鉄と縁の深い鉄道聯隊の解説が掲示されている。'09.10.17 くぬぎ山車両基地 P:名取紀之
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本日開催された新京成電鉄の「電車基地見学・展示会」で、旧日本陸軍鉄道聯隊の“軌匡”(ききょう)が初めて一般公開されました。くぬぎ山電車基地を会場に毎年行われている「電車基地見学・展示会」も今年で15回目。これまでにも保線用に使用されていた鉄道聯隊の97式軽貨車を修復展示するなど、新京成路線の誕生に縁の深い鉄聯関連の歴史遺産を積極的に保存しようと努めている同社ですが、今回は沿線から“出土”した軌匡用の鉄枕木を用いて、今やまったく現物が残されていない軌匡を復元されたのです。

091017n012.jpg“軌匡”とは、野戦鉄道において迅速に線路を敷設するために考案された梯子状の仮設軌道のことで、旧日本陸軍が用いていたものは軌間600㎜、全長5mを基本とする直線、曲線線路です。枕木は鉄製のプレス材で、強度確保と地盤(バラス等)への食いつきのためにお椀を伏せたような形状となっているのが特徴です。日本の鉄聯が範としたドイツ鉄聯の軌匡には、フィッシュプレート(継ぎ目板)さえ用いず、さながら模型の線路のように差し込み式のジョイナーを用いるものさえあり、何よりも迅速な敷設と撤収を第一義とした特殊な線路資材であることが知れます。
▲特徴的な鉄枕木の端部。外側の角型締結ボルト穴は検証の結果762㎜用と判明。一番外側の小さな丸穴は地面に打ち込む締結杭用のもの。'09.10.17 くぬぎ山車両基地 P:名取紀之
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▲オリジナルの締結金具とボルト。φ12のボルトはリベット状の丸い頭(右)で頸部が四角形となっている。鉄枕木の角穴にこの頸部が嵌り、レンチ1本で速やかに作業が可能。こんなところにも軍用鉄道のノウハウが見てとれる。'09.10.17 くぬぎ山車両基地 P:名取紀之
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ご承知のように新京成電鉄はその路線の多くが鉄道聯隊の演習線ルートで、97式軽貨車や100式鉄道牽引車など古くから鉄聯引き継ぎ資材の宝庫でもありました。それだけにかつてはこのような軌匡もかなりの量が沿線の柵などに用いられていたようですが、いつしか忘れ去られてしまっていました。

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▲13年前に薬園台で最初に出土した鉄枕木。左が160㎜幅、右が180㎜幅のもの。P:新京成電鉄
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091017n052.jpgそんな軌匡をあらためて思い起こさせてくれたのが1996(平成8)年に薬園台で“出土”した2本の鉄枕木でした。新京成の歴史を物語るものとして保線区で保管されていましたが、その後も沿線各所で同様の鉄枕木が発見され、そのたびに廃棄されずに収蔵されてきたのです。現在までにその数は11本。なかには二次利用の用途上か、欠き取りのあるものなどもあり、欠損のないものは8本、ちょうど軌匡1本分の所要数に達したこともあって、今回の復元プロジェクトとなったわけです。
▲みのり台駅で発見された鉄枕木の状況。土留め用に縦に打ち込まれていた。P:新京成電鉄
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▲八柱1号踏切の柵として利用されていた鉄枕木の状況。一部には締結金具も残されていた。P:新京成電鉄
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残された締結金具のピッチ等から割り出すと該当するレールは12㎏/mと思われ、復元にあたって新京成さんからご相談を受けて該当レールを探しましたが、幸いにも、先般ガソリンカーを復元された足尾歴史館からお分けいただくことができました。わざわざ足尾の地からくぬぎ山の工場に運び込まれた12㎏/mレールは、京成車両工業の協力を得て、出土した鉄枕木に丁寧に締結され、再塗装されて今日の公開展示となりました。

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▲京成車両工業の協力を得てくぬぎ山車両基地で復元作業中の軌匡。歴史遺産として末永く保存されるという。P:新京成電鉄
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わずか5mのささやかな軌匡ではありますが、新京成電鉄の歴史の証人であるとともに、今後、わが国の鉄道史、いや近現代史にとっても、欠くべからざる重要な遺産となるに違いありません。

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