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写真展「羅東森林鉄道」を見る。

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昨年のこの時期に写真展「’08 鐵樂者三人展」(アーカイブ「鐵樂者三人展を見る」参照)を開かれた金澤 忠さん、杉 行夫さん、野口信夫さんに、海外蒸機の撮影で知られる蔵重信隆さんを加えた4人の作品展「羅東森林鉄道」が開催されています。

090828n062.jpg「羅東森林鉄道」と聞いても首を傾げる方が少なくないかと思いますが、台湾鉄路局宜蘭線の羅東を起点に太平山へと路線を伸ばしていた軌間2フィート6インチの森林鉄道です。台湾の森林鉄道というとシェイ・ギャードの活躍した阿里山森林鉄道ばかりが有名ですが、1960年代の台湾には、ほかにもこの羅東や八仙山(土牛)、林田山といった大規模な森林鉄道が存在していたのです。
▲杉さんらが先鞭をつけた羅東森林鉄道には、その後も少なからぬ日本人ファンが訪問し、数々の困難を乗り越えて記録を残している。'09.8.28
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▲今回の写真展は車輌のみならず情景写真が多いのも特筆される。対象となった鉄道の姿を丸ごと組写真として伝えようという手法は、かの“けむりプロ”以来揺るぐことがない。'09.8.28
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しかし当時、戒厳令下にあった台湾では鉄道は最重要軍事機密のひとつであり、しかも戦略的要衝である高山へ軌道を延ばす森林鉄道は厳重な監視下に置かれていました。そんな背景もあって1960年代に台湾の森林鉄道を趣味的に撮影することはきわめて困難でした。そうしたなか、初めて羅東森林鉄道を訪れたのが、杉 行夫さんら“けむりプロ”の面々でした。時に1966(昭和41)年3月。投宿した旅社に翌朝はもう私服の刑事が現れるといった緊迫した中での撮影であったといいます。

090827_001n.jpg18tや28tのシェイが活躍する阿里山と違い、羅東森林鉄道の主力は日本車輌製の変哲のないCタンク機。しかも起点(嘉義)からいくばくもなく山に取り付く阿里山に比べ、起点・羅東(竹林站)から延々と田園地帯を走る羅東森林鉄道は趣味的には分が悪いと言わざるを得ないかもしれません。ただ、“けむりプロ”が発表した羅東森林鉄道の未知の魅力に触発されたのが蔵重さんでした。1971(昭和46)年以来数回にわたって現地を訪れ、さらに金澤さん、野口さんがその後に続きます。今回の写真展はそんな限られた時間と制約の中で情熱を傾けて撮影された4人の作品で構成されています。
▲林清池著『太平山開発史』。およそ考えられるすべての資料を網羅した300ページを超える大冊。1996年5月刊(3000部)。 

ところで羅東森林鉄道というとまず頭に浮かぶのが十数年前に上梓された『太平山開発史』という書籍です。もちろん台湾の出版物で、長年にわたって地元の営林署(太平山区、のちの蘭陽林区)にお務めだった林清池さんが膨大な資料を駆使して戦前からの太平山林場の歴史をまとめられたもので、この本によって初めて羅東森林鉄道を基幹とする太平山森林鉄道網の全容が詳らかになったのです。入境許可が得られなかったとはいえ、杉さんらが初めて羅東を訪れた1966年当時、山中では想像を絶する森林鉄道の情景がまだまだ繰り広げられていたのです。

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▲羅東森林鉄道の最深部、太平山周辺の林用軌道路線図。3箇所の索道連絡を経て、分岐点から路尾へ至る三星線(15.3km)、茂興線(20.9km)など大規模な軌道網が広がる。 (林清池著『太平山開発史』より)
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▲きわめて初期のコッペル製ディーゼル機関車(左)やフリクション・ドライブのプリムス(右)が活躍する戦前の貴重な写真も掲載されている。 (林清池著『太平山開発史』より)
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この写真展「羅東森林鉄道」は9月6日(日曜日)までの開催(12:00~18:30、最終日17:00終了/木曜日定休)。時には図版を交えて情景写真を構成する“けむりプロ”流の組写真を堪能するのもよし、ナローファンのみならず多くの方にご覧いただきたい写真展です。なお、ここで紹介した『太平山開発史』も杉さんにお預けしてありますので、会場で原本をご覧いただくことが可能です。

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閑話休題。先日、台湾の新聞『自由時報』で「編集長敬白」が紹介されました。台湾の鉄道史研究の第一人者・洪 致文さんが「鉄道網站『編集長敬白』」としてカラーページで紹介してくれたものです。現在、この「編集長敬白」は一日1万5千~2万ものアクセスをいただいていますが、アナライザーを見ると海外からのアクセスもかなりの数にのぼっており、なかでも台湾からのアクセスは香港とともに上位を占めています。今日の「羅東森林鉄道」写真展紹介も、地元・台湾のファンの皆さんに興味を持って見ていただけているのではないかと思います。

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▲7月1日付けの『自由時報』で紹介されたわが「編集長敬白」。ありがたいかぎり。 (多謝大力協助洪致文先生)
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