鉄道ホビダス

鉄道博物館企画展「電車特急50年」記念講演会。

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▲齋藤雅男さんの講演「電車特急誕生の頃」。国鉄本社運転局で「こだま」実現に奔走された齋藤さんのお話は、半世紀の時空を超えたまさに時代の証言とも言える貴重なもの。'09.3.28 P:鉄道博物館

一週間にわたって小ブログのバナーでもご案内してまいりましたが、今日は鉄道博物館で第3回特別企画展「電車特急50年」記念講演会・映画会が開催されました。4月6日(月曜日)まで5ヶ月あまりにわたって開催されている特別企画展「電車特急50年~ビジネス特急「こだま」からJR特急まで~」(アーカイブ「星晃さんと特別企画展“電車特急50年”を見る」参照)の掉尾を飾る講演会で、誌面告知が間に合わなかったにも関わらず、会場の鉄博ホールは熱心なファンの皆さんでいっぱいとなりました。

090328n03813時からの記念講演会第一部で演台に立たれたのは、現在は国際連合開発計画(UNDP)テクニカルアドバイザーとして活躍されている齋藤雅男さんです。齋藤さんは1919(大正8)年生まれの御年90歳。昭和30年に国鉄本社運転局客貨車課補佐として電車特急計画の胎動に関わられ、以後、小田急SE車での高速度試験をはじめとして「こだま」実現までの指揮を執ってこられたお一人です。また東海道新幹線にも深く関わられ、開業直後の1965(昭和40)年からは東海道新幹線支社運転車両部長も歴任されておられます。
▲午前11時から整理券配布。またとない機会だけに多くの皆さんがつめかけた。'09.3.28 P:鉄道博物館

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▲会場はノースウィングの鉄博ホール。映像・音響設備も整った記念講演会にはまたとない会場。'09.3.28 P:鉄道博物館

そんな齋藤さんの講演は、まさに核心におられた方でなければ知りえないお話ばかりで、次から次へと飛び出す“秘話”に、会場を埋め尽くされた来場者の皆さんも熱心に聞き入っておられました。

090328n034ことに「動力分散」に対しての国鉄部内での意見対立は興味深く、関東・関西の国電と一部の近郊電車、それに買収国電程度しか電車が存在しなかった時代、“電車ごとき”で長距離運行が出来るわけがないという意見が大半を占めていたそうです。なかなか活字にはなりにくい部分ですが、車輌設計も動力車=機関車が主流として圧倒的勢力を誇っており、客貨車のテリトリーであった電車は常に疎まれがちだったのです。
▲開会の挨拶をされる鉄道博物館関根館長。'09.3.28 P:鉄道博物館

そんな逆境のなかで電車特急の将来性を確信し、主に運転面(運転計画・地上設備・乗務員関係)での骨格を築き上げてきたのが齋藤さんでした。1958(昭和33)年10月1日改正からスタートと決していた「こだま」運転開始を、初期故障の根絶のために一ヶ月遅らせて11月1日とする進言を、職を賭して総裁にまで談判しようとされた齋藤さんの思いこそが、以後半世紀の隆盛を見る「電車特急50年」の原点だったのかも知れません。「こだま」の運転台を2階にしたのは車輌構造上の問題だけでなく、これまで立場の弱かった電車乗務員がEF58(動力集中)を“見下げる”思いもあった…とは、まさに最当事者でなければ抱きえない心情でしょう。

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▲「こだま号高速度試験」と「伸びゆく鉄道」の2本の映画も上映された。鉄博ホールの大スクリーンで見る「こだま」の走行シーンは息をのむ迫力。'09.3.28 P:鉄道博物館

齋藤さんの講演に続いて1959(昭和34)年に国鉄本社技師長室が制作した記録映画「こだま号高速度試験」、同じく1960(昭和35)年制作の「伸びゆく鉄道」の2本が上映されました。前者はDVD化されているとはいえ、鉄博ホールの大スクリーンで見ると改めてその臨場感に感激します。

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▲第二部の記念講演をされる浅原信彦さん。モハ20誕生から583系の落日まで、12ページにもわたる資料を配布されての貴重なお話であった。'09.3.28 P:鉄道博物館

090328n037第二部は『ガイドブック最盛期の国鉄車輌』でお馴染みの浅原信彦さんによる講演「電車特急50年~ビジネス特急「こだま」から「月光形」寝台電車特急まで~」が行われました。主に運転面での変遷と、それにともなう車輌の転配を膨大な資料とともに細かく解説されました。ことに「こだま」以前、3等級制時代の運賃と今日の比較は興味深く、東京~大阪間の「つばめ」「はと」の1等車(定員14名)の合計運賃が7,640円、大卒初任給の半分ほどだったのには改めて驚かされました。
▲司会進行は私が務めさせていただいた。'09.3.28 P:鉄道博物館

鉄道博物館の特別企画展に関連しての記念講演会は今回が初めてですが、会場を埋め尽くした参加者の皆さんは、丸半日の長いプログラムにも関わらず、最後の奥原学芸員によるギャラリートークまで熱心に聞き入っておられました。会場内ではさながら大学の講義のごとくノートに記録される姿も見受けられ、その面では鉄道博物館のもうひとつのあるべき姿を垣間見た思いもする一日でした。

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