鉄道ホビダス

上武鉄道 あのころ。

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▲旅客営業廃止から十年あまり、草生した丹荘の社線ホームには朽ちかけた駅名標がかろうじて残されていた。画面左側が国鉄丹荘駅。'83.1.22
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毎年、寒さが一段とつのるこの時期になると思い出すのが上武鉄道のことです。上武鉄道については、すでにRMライブラリー『日本ニッケル鉄道 ―上武鉄道開業から終焉まで―』に詳述されていますが、八高線の丹荘駅と神流川沿いの西武化学前駅の間6.1キロを結ぶミニ産業鉄道でした。

090116n002.jpg産業鉄道とはいうものの専用鉄道・専用線ではなく、歴とした地方鉄道であった点がこの上武鉄道の大きな特徴で、1972(昭和47)年年末まではささやかながら旅客輸送も行なっていました。終点が肥料工場というシチュエーションとあわせて、西の別府鉄道(RMライブラリー『図説 別府鉄道』参照)と一脈通じるものを感じていたのは私だけではないでしょう。
▲丹荘駅ホームで発車を待つ上武鉄道下り貨物列車。先頭にたつのは最新鋭機DB102(新潟鉄工所1969年製)で、上武鉄道最初で最後の自社発注機。晩年の列車はほとんどが同機の牽引であった。'83.1.22
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▲旧寄島駅付近の築堤をゆく上り貨物列車。自重25tのB型ディーゼル機には少々酷なほどの編成輌数である。ちなみにこの日も寒風吹きすさぶ一日だった。'83.1.22
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▲大井川鐵道井川線から転属してきたDD104(左)と、最後に八幡製鐵所から転入してきたDD351(右)。ともにそれほど活躍する機会のないままに消えていってしまった。'83.1.22
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しかもとびきり奇妙だったのは、終点の西武化学前駅が“前”どころか工場の“中”に存在したことで、乗るにも降りるにもいちいち守衛所に断って出入りせねばならない実に不思議な駅でした。

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▲西武化学前駅構内に留置された車輌たち。手前に解体待ちの国鉄スハ43の姿も見える。それにしてもとても営業鉄道の駅構内とは思えない光景。'83.1.22
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旅客営業を廃止してからも地方鉄道免許のまま貨物営業を続けていましたが、この時分になると旧西武化学前駅構内への立ち入りは極めて厳重に制限されるようになり、構内手前の本線にまで厳重なゲートが設けられ、列車が通過する直前に係員がこのゲートを開けるといった物々しさとなりました。実はこの頃から上武鉄道は国鉄車輌の解体作業を請け負うようになってきており、八高線経由で引き込んできた客車や貨車、時には電車までもが所狭しと解体の時を待っていました。これはニッケル精錬の技術を応用してスクラップ鋼の再生製鉄を行なっていたからで、ガードが厳重になったのも解体部品を狙う不心得者を警戒してのことだったようです。

090116n007.jpgそれにしても、冒頭に記したようになぜこの季節になると上武鉄道を思い出すかというと、上武鉄道を訪ねたのが期せずしてことごとく寒い季節だったからです。とりわけ1月の訪問が多く、吹き飛ばされそうな上州名物の空っ風とあいまって、上武鉄道=寒風のイメージが脳裏に焼きついてしまったのでしょう。今さら思えば、なぜうららかな春や、入道雲浮かぶ夏に訪問しなかったのか不思議でなりませんが、個人的イメージとは得てしてそんなものなのかもしれません。
そんなわけで、今日は26年前のこの時期の写真をお目に掛けましょう。
▲西武化学前駅に到着しようとするDB102牽引の下り貨物列車。上武鉄道の路線は大きな変化には乏しいものの、桑畑や雑木林など、どことなく懐かしい雰囲気の沿線風景が好ましかった。'83.1.22
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▲機関庫は木造1線の小さなものだけ。入りきらない車輌は構内に留置されていた。左からDD104、DB102、DD351。画面前方が丹荘方で、画面左奥に解体場が広がっていた。'83.1.22
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この上武鉄道も国鉄貨物の拠点間輸送体系への転換の余波を受け、1986(昭和61)年11月1日付けで八高線丹荘駅の貨物取扱いが廃止されたことから、いわば生命線を絶たれたかたちで同年12月31日付けで廃止となってしまいました。末期は専用鉄道然としてはいましたが、首都圏近郊にこんな地方鉄道が生き残っていたのですから、いまさら考えれば奇跡的だったと言えるのかもしれません。

※週末はJR東日本高崎支社の「EF55ファン感謝祭」に出張のため、小ブログは休載とさせていただきます。あしからずご了承ください。

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