鉄道ホビダス

日本鉄道保存協会総会から。(下)

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▲十年前のままの検修庫で保存展示されているEF63を見学するデビッド・モーガンさん。英国保存鉄道協会会長の目にこの“ナローゲージ”の電気機関車はどう映ったのだろうか…。'08.10.3
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さて、EU圏拡大に伴う規制統一化は保存鉄道の将来にも大きな影響を及ぼしかねず、これに対処するために1994年に誕生したのが欧州保存・観光鉄道連合(FEDECRAIL)です。現在ではEU加盟国以外のロシア、スイスなどを含めて、北はノルウェー、スウェーデン、南はスペイン、イタリア、ギリシャまで27カ国が加盟しており、デビッド・モーガンさんはこの連合体の議長職も務めておられます。

081006n12.jpg講演の最後にモーガンさんから紹介されたのが、歴史的鉄道(Heritage Railway)の保存に関する共通基本理念ともいうべき「リガ憲章」(The Riga Charter)です。このリガ憲章は歴史的鉄道、保存鉄道、観光鉄道、博物館はもとより、一般の鉄道で運行されている歴史的価値の高い列車まで含め、その保全・修復・メンテナンス・使用等に関わる原則を記したものです。12条からなり、例えば第8条では「歴史的鉄道車輌と設備の修復は、必ずしも製造当初のオリジナルな状態に修復されねばならないわけではない。使用されていくうちに歴史的に重要なものとなってゆくこともある。(中略)新製して取り替えられた部分は、容易に区別がつくように恒久的に印が付けられなければならない」、また第10条では「オリジナルのパーツは将来的な再利用のために残しておかねばならない」等々、具体的な保全・修復の指針をも示しています。
▲碓氷峠鉄道文化むらで保存されているD51 96の前でポーズをとるモーガンさん。“Rail-obsessed”になってはいけないとおっしゃるだけあって、実にお洒落な英国紳士である。'08.10.3
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▲数多ある保存車輌のなかでもモーガンさんにとって一番のサプライズだったのが「お座敷客車」(スロフ12 822)。畳敷きに欄間、それにカラオケセットとかなりのインパクトだった様子。'08.10.3
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講演後の質疑応答では税制面での優遇処置なども含めて活発な質問がなされましたが、現在わが国の保存車輌が直面しているアスベスト問題についての質問には、彼の地でも抜本的解決策は見出せていないようで、「まずは木造車から修復を始めることですかね…」とジョークを交えて語っておられました。

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▲日本鉄道保存協会専用特別列車として運行された「シェルパくん」で丸山変電所跡を見学。モーガンさんも爽やかな秋晴れの下で異国の秋を堪能された。'08.10.3
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ところでモーガンさんは日本にお出でになるのは初めてとのこと。しかも総会会場が日本旅館の温泉宿とあって、それなりのカルチャーショックを受けておられるようでもありました。池の錦鯉を指して「これは夕食に食べるのか?」と質問されたのには言葉を失いましたが、それでも“raw fish”を含めあらゆる食材をトライされ、日本式の宴会(?)も楽しまれたようで、アテンドする側としてはまずはひと安心といったところでしょうか…。

081006n15.jpgちなみにモーガンさんは鉄道のみならず帆船カティー・サーク号の保存母体であるカティー・サーク・トラストの理事、船舶の保存・活用団体を代表するヘリテージ・アフロート(Heritage Afloat)の議長も務められており、これら交通遺産保存の功績により2005年に英国女王から大英帝国勲章(MBE)を授けられたとのことです。ご本業はロンドンに事務所を構える弁護士。なんとあのダイアナ妃の弁護士でもあったというからこれまた驚きです。
▲碓氷峠「峠の湯」で昼食ののち、顧問団のエスコートで一路「鉄道博物館」へ。関根館長の出迎えを受けて、急ぎ足で閉館時間迫る館内へ…。'08.10.3
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▲「D51シミュレータ」も体験していただいた。操作機器類の違いはあるものの、ご自身がチェアマンを務められる保存鉄道でも体験運転をプログラムに入れておられるだけに、あっという間に運転方法を会得。これには周囲から思わず拍手が巻き起こっていた。'08.10.3
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碓氷峠鉄道文化むらの視察後は寸暇を惜しんで新幹線で大宮へ。鉄道博物館をひとわたりご覧になったモーガンさんは、翌4日(土曜日)には大井川鐵道、5日(日曜日)には梅小路蒸気機関車館とハードなスケジュールを勢力的にこなし、さきほど東京・丸の内のレストランで開かれたフェアウェル・パーティーをもってすべての予定を終えられ、明7日(火曜日)午前の便で成田から帰国の途につかれます。
初めて目にする日本と日本の鉄道にたいへん好印象をお持ちになったようで、この出会いを契機に、わが国の鉄道保存もこれまでにない広がりを得るに違いありません。

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