鉄道ホビダス

遼東半島に未知の大ナローゲージ網を探る。(6)

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▲第8塩場を出て“海の中道”をゆく五島運輸站行き盈車列車。線路は一旦画面左後方の半島(?)に入り、大きくカーブして画面右へと進む。第8塩場のローディング・ポイントは画面右遥か彼方。'08.3.22
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それにしても第8塩場はもとより、五島運輸站ヤードにしても、製品の塩は野積みの状態で、素人考えでは雨が降ったら溶け出してしまうのでは…と心配しがちです。しかし実際に山積みとなった塩を手にとってみると、私たちの馴染み深い食塩とはまったく異なり、小豆大くらいの大きな結晶、しかもかなりの硬度で、これならば多少濡れたくらいでは溶け出すこともないでしょう。

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▲横を通過してゆく同列車。見た範囲では五島運輸站?第8塩田間に途中交換設備はないようで、全線1閉塞と思われる。'08.3.22
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ところでこの大連復州湾塩場の塩は、すべてが工業塩だそうです。用途は主に2種。ソーダ工業用と融雪剤用です。ソーダ工業というのが馴染みが薄いのですが、実は塩を原料とする基礎化学素材産業で、か性ソーダ、塩素、水素ガス等々、数多くの産業基礎素材が塩から作られているのです。

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▲広大な面積が矩形に区切られ、随所にこのような水門が設けられている(左)。ただその一区画の面積たるや恐るべき広さ(右)。'08.3.22
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fukusyuuwan701.jpg現在わが国の食料塩も含めた塩の自給率は約15%。昨今問題となっている食料自給率ではありませんが、こちらも自給率は極めて低く、工業塩の大半はメキシコとオーストラリアから輸入されています。「日本ソーダ工業会」のホームページによれば、2006年度の輸入総量の実に94%がこの2国によって占められているそうです。では復州湾の塩はというと、手近な割に現在ではほとんどわが国には入ってきていないようです。その辺の背景を同HPは「かつては年間100万トン輸入されていた中国塩は、中国国内のソーダ工業の発展から、国内需要が急増し、輸出に回せる余裕がなくなり、2006年度はわずか3千トンにまで落ち込んでいます」と解説しています。
▲第8塩田入口付近から五島方面を振り返る。このカーブを曲がった列車は遥か対岸へと“海の中道”を進んでゆく。'08.3.22
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▲第8塩場担当機関車「247-1001」。正面窓は角度のついた2枚窓で、過酷な環境にも関わらずなかなかスタイリッシュ。'08.3.22
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第8塩場の山積みの塩をひとかけら舐めてみましたが、これがしょっぱいだけでなく“味がある”なかなか美味しいものでした。ご存知のように日本では流下式製塩法で作る自然塩がもてはやされており、この復州湾の塩も食料塩として脚光を浴びても良いのではと思いますが、コトはそう簡単にはいかないようです。

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▲五島運輸站を出て最初の踏切を渡る第8塩場行き空車列車。この踏切付近のレールは鉄路局払い下げ品と思しき60kg/mはあろうかという重量級。'08.3.22
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塩田を用いた天日製塩法は貯水池に海水を導いて貯え、さらにこれを何段階かの蒸発池(濃縮池)へ流し、最終的に塩分濃度が高くなったものを結晶池へ移して乾燥・結晶させるプロセスで、結晶までには1?2年かかるといわれています。ほとんど人手を掛けずに大量生産できる反面、この工程ではまったく不純物処理などがされておりませんので、塩化ナトリウム97%以上という国際食品規格上からも食用としては流通できないのだそうです。

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▲第5?7塩田からの盈車列車が長閑な風景の中を戻ってきた。第8塩田と異なり、こちらの路線には並行道路がなく五島運輸站からひたすら歩くしかない。'08.3.22
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第8塩場の掌握しきれない規模に唖然としながら時計を見ると、もう15時を回っています。昨日の時点で、想像を遥かに超える路線網に、今回の旅で全貌を掴むこと自体を諦めてはいましたが、せめてもう1路線だけでも“垣間見て”おきたいものです。となると昨日の夕方車窓から見たミキストが気になりだしました。あの列車は今日も同じ時刻に来るのではないだろうか…第8塩場をあとに、急いで第5?7塩場線へと向かうことにしました。

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