鉄道ホビダス

遼東半島に未知の大ナローゲージ網を探る。(2)

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▲金城運輸站ヤードで待機する“本線仕業機”。直6ディーゼルエンジンを備える6~7tクラスの機関車だが、この金城運輸站所属機にはまったく車体標記がなく、よくこれで個体識別ができるものと感心してしまう。'08.3.21
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ところで、不勉強にして知らなかったのですが、ここ遼東半島の塩田はそのほとんどが日本時代に開発されたものだそうです。手もとにあった『日本地理大系 満州篇』(昭和5年改造社発行)をひもといてみると、「関東州は降雨量少なく空気が乾燥して蒸発が盛んであり、地形は海岸に干潟が多く地質の関係で砂質の粘土であるから、海水の蒸発を早め結晶を容易たらしめるので天日製塩に適する所が多い」と前置きしたうえで、関東州だけで約7千町歩の塩田が存在するが、その中でも普蘭店(復州湾)塩田は3指に入ると記しています。

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▲戦前の遼東半島塩田風景(双頭湾塩田)。左の写真には軌道が写り込んでいる。右は蒸発池、結晶池の状況で、この天日製塩の工程は基本的に現在でも変わってはいない。(『日本地理大系 満州篇』昭和5年より)
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当時は主として大日本塩業株式会社がこれらの塩田を管理していたようですが、すでにこの塩田開発時点で運搬用軌道は敷設されていたと思われます。現在の復州湾塩場の軌道はどれも2フィート6インチ(762㎜)軌間で、これは大日本塩業時代から踏襲されてきたものに違いありません。

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▲米国国防総省発行のいわゆる“ディフェンス・マップ”にはかろうじて復州湾塩場の軌道本線が記載されている。瓦房店と五島を結ぶ国鉄瓦五線(貨物専業)の途中駅=復州湾站近くに金城運輸站があり、本線軌道は第1~4塩場へのびるほか、海沿いを延々と五島へと続いている。五島には別の機関区=五島運輸站があり、こちらは海上の交流島の第5~7塩場と、遥か北側の第8塩場への軌道を統括している。なお、残念ながら金城運輸站と五島運輸站を結ぶ路線は数年前から使われていないとのこと。
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さて、話を戻しましょう。復州湾鎮の町中まで迎えにきてくれたのは「大連復州湾塩場」の孫副長。さすがに話は通っているようで、さっそく目指す金城運輸站へと案内してくれますが…やはり話はそう簡単ではありませんでした。

kinzyouteisyouemn.jpgクルマは巨大な門と守衛室のある工場へと入ってゆきます。事前に製造工程(袋詰とか…)は見ても仕方がないのでとさんざん説明していたはずなのに、ご自慢の工場設備を見せようというのです。改めて“バイヤー”ではないので省略してくれるよう懇願し、ようやく軌道のあるヤードへと戻ることができました。ところが、今さら振り返ればここからのツメが甘かったのでした。
▲金城運輸站正面。製造部門と運輸部門は別組織となっているようで、工場(製造部門)の立派な正門と比べるとかなり差がある。'08.3.22
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▲金城運輸站ヤードで入換え中の列車。組成が終わり次第この列車が塩田へ向けて発車してゆくのだが、とんだ有り難迷惑(?)で結局見れずじまいとなってしまった。'08.3.21
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金城運輸站ヤードで組成に励む機関車たちを気持ちよく写していると、お昼だから食事にどうぞと孫副長。聞けばあと30分ほどで目の前の列車は塩田に向けて発車するらしいので、先回りしてその“走り”を撮ってからと提案したのですが、どうやらすでにレストランを予約してあるらしいのです。あとからわかったのですが、外事弁公室経由だったこともあってか、この日の昼食は工場側がご馳走する計画になっていたようで、「午後も列車はいっぱいあります」という言葉を信じて、復州湾鎮で一番というレストランにお呼ばれすることにしました。

fukusyuuwansyokudou.jpg公式ルート(?)となると有り難迷惑(失礼…)なのがこの手のもてなしです。インドネシアでは外のブラスト音にやきもきしながら延々と歓迎のガムランを聞かされたことがありますが、正直言って“露出のあるうち”は食事などとらなくても結構、それより一刻も早く線路端に戻してもらいたいというのが本音です。それだけに今回も麺類でも掻きこめばそれで充分だったのですが、先方さんとしてはそうはいかないようで、結局、円卓のある個室へ通されることになってしまいました。
▲塩場の“接待”で案内していただいた町中の「春宴酒楼」。なんでも復州湾で一番良いレストランだとか…。'08.3.21
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▲海産物はとにかく豊富で安くて美味しい。塩茹でされた子持ちシャコ(左)も最高ながら、大連といえば名物「海腸」(右)料理。'08.3.21
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yumushi2n.jpg遼東半島といえば中国屈指の海鮮料理の本場です。案内されたお店も海鮮料理店ですが、大都市・大連と違って田舎だけに注文方法も昔ながらのもの。つまり客が厨房にずかずかと入ってゆき、タライに入れて土間に並べられた食材を選ぶというものです。巨大ハマグリやらシャコやらを指差して選んでいると、懐かしい食材が目に入りました。大連名物の「海腸」(ハイチャン)です。その姿形からは想像できないような美味で、なぜか遼東半島付近でしか見かけません。私は大好きなのですが、日本人はまず食さないので、孫副長も「そうか海腸を食べられるのか」とばかり大喜び。わさび醤油をちょっとつけても美味いぞ、とばかりわざわざ特別に用意させてくれました。
▲これが「海腸」。ユムシ目ユムシ科の無脊椎動物で、“海ミミズ”の異名も待つ。干潟の砂地の縦穴に潜んでいるという。見た目からは想像できない美味。'08.3.21
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本格的な海鮮に舌鼓をうち、ビールから白酒(パイチュウ)にまで進んで大満足で午後の撮影を開始すべく再び金城運輸站ヤードへ。ところが構内には機関車の姿はなく、妙にひっそりとしてしまっています。何ともいやな予感がして通訳に急いで確認してもらうと…「今日の運転は終わった」。えっ! 話がまったく違うではないですか。実はこののちわかったことに、案内してくれている孫副長は製造会社の管理者ではあるものの、輸送部門はすでに分社化されていて状況がよくわかっていないのでした。

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