鉄道ホビダス

驚異のD51運転シミュレータ。

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今日発売のRM最新号「大宮に鉄道博物館ができるまで」をご覧になった方は、最後の2ページで目が点になったのではないでしょうか。そうです、これまでいっさい伏せられていた「鉄道博物館」のサプライズ=D51運転シミュレータの全貌が明らかになったのです。
▲音楽館のスタジオで動作テスト中のD51運転シミュレータ。手前が開発にあたった向谷 実さん。
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▲普段は「SL甲組」の皆さんを取材する側の椎橋さんも、今日ばかりは「機関士席」でレギュレータを引く。後ろで厳しい眼差しを送るのは“指導機関士”役の交通博物館荒木副館長。
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このD51運転シミュレータ、交通博物館館内にあったD51 426のキャブを丸ごと動揺装置付きのシミュレータにしたもので、もちろん世界初! システム開発に当たっているのは、先週末の江戸東京博物館のトークショーでもご紹介した音楽館の向谷 実さんです。12年にわたるトレインシミュレータ開発で培ってきた第一人者のノウハウと、向谷さんならではの驚異的な拘りが注入されたこのD51運転シミュレータ、かねてからご本人よりお話はうかがっていましたが、実際に体験してみると言葉を失うほどのすごさ、まるでホンモノです。

IMGP0649nn.jpgこのD51運転シミュレータをひと足早く体験すべく世田谷の音楽館スタジオにうかがったのは私と「SL甲組の肖像」でお馴染みの椎橋俊之さん。日本全国の「甲組」の皆さんの武勇伝を取材し、“耳学問”としては蒸気機関車の運転を知り尽くしているはず(?)の最適任者というわけです。スタジオ中央に設置されたシミュレータは鉄道博物館に搬入される直前の最終チェック段階で、微調整は残っているものの、あとは泣き分かれた426号機のキャブに戻されるばかりとなっていました。それにしてもすべての機器類が1940(昭和15)年日車製の実物そのままとあって、これまでのプラスティッキーなシミュレータとは比べ物にならない存在感です。
▲もちろん各種圧力計類も正確に動作する。しかも指針の微妙な“震え”まで再現されているのにはびっくり。
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▲この枠が四方センサーとなった火床(左)。模擬石炭を投炭しセンサーがその位置と量を感知する。投炭センサーに合わせて“火床”のランプ群が燃え方の状態をリアルタイムに見せてくれる(右)。もちろん現在は鉄道博物館のD51 426の火室にすべて組み込まれている。
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指導機関士役の交通博物館荒木文宏副館長がまずは模範運転を披露。このシミュレータの設定線区は釜石線の花巻?遠野間で、43系旧型客車5輌を牽引している状況を再現しています。まずは花巻発車。事前に缶圧力計と水面計を確認し、ドレインコックを開け、出発信号機の進行現示を喚呼確認、リバー(逆転機)をフルギアに。汽笛ペダルを踏んで発車汽笛を吹鳴、ブレーキを緩解し、シリンダー圧力計を見ながらレギュレータ(加減弁ハンドル)を引き、ブラスト音に合わせてすぐにカットオフを調整し…はっきり言って“素人”には発車さえおぼつきません。

IMGP0635nn.jpgこのシミュレータがすごいのは、とにかく何もかもがいっさいの妥協なしに実物同様に機能し、それを的確に操作しない限りは運転できない点です。たとえば缶圧力。ペアになった助士役がセンサーを組み込んだ火室に模擬石炭を投炭し、投炭量と位置をセンサーが感知して缶圧が上下します。水も同様で、インゼクタ、給水ポンプを駆使して缶水を作らねばなりません。インゼクタの特徴的な作動音はもとより、給水ポンプにいたっては、作動中の指針のプルプルした震え方まで再現する拘りよう…絶句です。
▲すべての操作機器は交通博物館から鉄道博物館に移設されたD51 426の実物が使われている。自動ブレーキ弁ももちろんまったく実物どおりに作動するが、これがまた難しい。
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▲画面は機関士側と助士側できっちりと分かれている。鉄道博物館では旋回窓付きのキャブ前窓から前方注視することとなり、実物の蒸気機関車の運転がいかに大変かを痛感できるはず。
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すでにこのD51運転シミュレータは鉄道博物館のシミュレータホールに設置されて10月14日のグランドオープンを待っています。曲線や分岐器ともシンクロさせた究極の動揺装置が仕込まれたキャブの“乗り心地”もまさに実物そのもの。ゲームとしてではなく蒸気機関車という近代化遺産を肌で感じ、そこに携わった人びとの苦労を手加減することなく後世に伝えてゆきたいという向谷さんの思いが詰まったこのD51運転シミュレータは、海外からも大きな評価を受けるに違いありません。開館の暁にはぜひご体験あれ。
ちなみに、D51運転シミュレータ初体験の椎橋さんが果たして運転、いや発車できたのかは、本誌誌上にて…。

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