鉄道ホビダス

片野さんの『吊掛讃歌』第1巻が完成。

turikakesannka1.jpg『RM MODELS』2002年2月号から連載を続けている片野正巳さんの『吊掛讃歌』が単行本になりました。味わい深い独特のコンピュータ・グラフィックス(CG)で縦横無尽に展開される吊掛電車絵巻は、読者の皆さんの圧倒的な支持を受けて来月で連載60回を迎えます。単行本化の第1巻目は京王帝都電鉄と京成電鉄、それに京浜急行電鉄の歴代吊掛車たちをフィーチャー。京王帝都電鉄京王線は23形(1920年)からデハ2700形二次車(1953年)まで、同井の頭線(帝都電鉄)はモハ100(1933年)からデハ1900形(1953年)まで、京成電鉄はモハ20形(1921年)から700系(1954年)まで、京浜急行電鉄は1号形(1904年)からデハ600形(1953年)までを採録しております。

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▲京王帝都電鉄デハ2700形の変遷。片野さんのCGにはどこか丸ペン時代の温もりが感じられるのが嬉しい。

改めてご紹介するまでもないかと思いますが、片野正巳さんはかつて機芸出版社で『鉄道模型趣味』(TMS)誌の編集者として大活躍され、その一方で手描きのペン画による歴代国鉄車輌イラスト集『陸蒸気からひかりまで』(1965年・機芸出版社)、続いて姉妹編とも呼べる『私鉄電車プロファイル』(1970年・同社)を出され、まさに一時代を築かれました。とりわけ『陸蒸気からひかりまで』は当時の鉄道少年のバイブルといってもよく、モノクロの線画ながら、さながら絵巻物のごとく展開する歴代国鉄車輌に、私も時の経つのを忘れて見入ったものです。

turikakesanka3.jpgそんな片野さんが再び車輌イラストを手がけようと思われたのは1998(平成10)年の春のことだったそうです。やはり『RM MODELS』に連載をいただいている漫画家の水野良太郎さんから二人でパソコンを始めないか…と誘われたのが発端とか。お二人でMac G3を購入、文字通り四苦八苦しながらのスタートだったといいます。片野さんは1932(昭和7)年のお生まれ。当時66歳でのパソコン元年というわけです。ただ、常人と異なるのはそれからのご努力でしょう。まさに昼夜を分かたぬトライ&エラーの末、信じられないほど短期間でイラストレーター・ソフトを使いこなせるようになられました。このブログを書くにあたってご本人にお電話申し上げたところ、人様に見せられるようになるまでは一年半ほど掛かりましたと謙遜気味におしゃっておられましたが、思い通りにソフトを動かせるようになると、丸ペンで描いていた時代とは雲泥の差の作業効率にいやがうえにも“描きたい心”がはやり、あっという間にここまで来てしまったとのこと。お話をうかがっていて、同じ時期にやはりデジタル転換を図った広田尚敬さんが、画像処理ソフトの習得にのめり込むばかり、手元にあったお煎餅だけで3日を過ごしてしまったという逸話を思い出しました。やはり何かを成す方は根本から常人とは違うようです。
▲京成電鉄のセンテンスよりモハ600形の3変化。「色の記録を残しておきたい」(まえがきより)というのもこの本の趣旨。

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▲京浜急行電鉄のセンテンスより、半室連合軍専用区分となったクハ350形ほか。掲載イラストは100分の1が基本だが、巻末にはモノクロ線画で全車の150分の1イラストを掲載。
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「この本は研究書や解説書のたぐいではありません。“大人のための電車絵本”としてまとめたものです。ファンだけではなく昔の電車ファンだった皆さんも、レールのジョイントを刻んで軽やかに走る吊掛電車の音を想像しながらページをめくり、子供の頃を懐かしく思い出していただけたら幸いです」(まえがきより)と片野さんが語るこの『吊掛讃歌』、今後は季刊ペースでラインナップが加わってゆく予定です。どうかご期待ください。
■片野正巳著『吊掛讃歌』1(京王帝都電鉄・京成電鉄・京浜急行電鉄)
A4変形・96ページ、定価1800円

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