鉄道ホビダス

津軽森林鉄道跡をゆく。(中)

DH000124n.jpg
『青森営林局八十年史』(1966年)は、林道事業の項の冒頭で「38年には津軽森林鉄道が土木主任技師二宮英夫の設計指導のもとに調査を終了して翌39年着工、42年完成、米国ボウルドウィンとライマー(原文ママ)蒸気機関車の運行を開始し、森林土木も画期的なれい明期を迎えた。すなわち青森貯木場を起点とし、青森、内真部、蟹田、中里、喜良市の5小林区所にまたがり、わが国三大美林のひとつであるヒバ林の大大的開発を目的に施設の延長67kmは、その利用面積72千ha、蓄積1,470万㎡を対象としたわが国森林鉄道最初のもので、明治年代天下に唯一を誇った」と、津軽森林鉄道幹線の偉大さを誇示しています。
▲津軽森林鉄道幹線の最大の難所は半島を縦断する「六郎越え」であった。六郎隧道(454.5m)は残念ながら現在では確認できないが、隧道入口近くにはいかにもな雰囲気の軌道跡を見ることができた。ただし、小さな橋はH鋼が使われており、後年架け替えられたもの。'06.11.24

kannaizu2n.jpg
▲『青森営林局六十五年の歩み』(1951年発行)に見る管内図(青森県部分のみ抜粋)。津軽森林鉄道幹線はもとより、野辺地署、乙供署管内の軌道などもおおいに気にかかる。丸印は営林署所在地。
クリックするとポップアップします。

DH000133n.jpg「水中貯木場だけでも、35千㎡の貯材ができ、森林鉄道製材工場の完成とともに名実第一位の貯木場であった」(前掲同書)という青森貯木場を出た津軽森林鉄道幹線は、陸奥湾に面したわずかな平地の山沿いにへばりつくようにひたすら北を目指します。森林鉄道研究の第一人者・西 裕之さんは、津軽森林鉄道はやたらとアプローチが長く、実際に山に分け入るのはかなり先となるのがひとつの特徴と表現されておられますが、実際に軌道跡を辿ってみると、青森貯木場から蟹田付近まではとにかくあきれるほどの平坦さです。
▲蟹田駅を通過するEH500牽引の上り高速貨。信号および前方の踏切名がいまだに「土場」(どば)を名乗っている。'06.11.24

kanita1n.jpg
▲地形図に見る津軽森林鉄道幹線の「六郎越え」(半島縦断)へのアプローチ。地理調査所1:50000地形図「蟹田」(1960年発行)より転載。
クリックするとポップアップします。

DH000140n.jpg津軽線の海側を走る国道280号線のバイパスが内陸部に完成しているものの、さらにその西側に位置する軌道跡は見事なくらい判然とわかる農道として残っています。例えば蟹田から青森までの津軽線営業距離は27km、運材列車の表定速度は10数km/hでしょうから、運転時分は2時間ほど。よくぞこの単調な線形を走り続けていたものだと改めて驚きを禁じえません。考えてみれば蟹田で津軽線に積み替えて青森を目指した方がずっと効率的のように思えますが、そこはわが国の誇る(?)縦割り行政のなせるわざ、鉄道省の線路と農商務省の線路がわずかな距離を隔てて見事に並行することとなります。
▲内真部川支線分岐付近の軌道跡。青森貯木場から大平付近までかなりの長距離を幹線はさした勾配もなく進む。'06.11.24

DH000128n.jpg
瀬辺地付近で完全に津軽線と並行した津軽森林鉄道幹線は、大規模な中継土場のあった蟹田で進路を西に変えて、いよいよ津軽半島縦断にかかります。ちょっと微笑ましかったのは、蟹田駅手前の踏切名と津軽線の信号名称が「土場」となっていたことで、駅西側の土場跡こそ駐車場と化しているものの、まだ森林鉄道時代の呼び名がささやかに生き残っているのでした。
▲「六郎越え」付近の軌道跡。いかにもな雰囲気で森を分け入ってゆくが、残念ながら遺構を発見することはできなかった。'06.11.24

DH000093n.jpg
大平付近で津軽線と分かれた津軽森林鉄道幹線は、いよいよ分水嶺越えに挑みます。計画段階では内真部付近から喜良市貯木場へ突き抜ける「石川越え」ルートと、津軽半島脊梁山脈の東方山麓を進んで蟹田署管内小国山国有林を貫通して半島を縦断する「六郎越え」ルートのふたつが俎上にのったそうですが、結局後者に決し、津軽森林鉄道幹線は大平隧道(187.3m)と六郎隧道(454.5m)を穿って峠越えすることになります。現在でも前者の隧道入口は残存しているとのことでしたが、残念ながら今回は確認することはできませんでした。なお、六郎隧道のポータルに掲げられていた銘板は、現在、青森市森林博物館に保存展示されています。
▲中泊町(旧中里町)博物館に保存されている旧金木営林署所属の協三工業製4.8t機。昨日紹介した客車「あすなろ」とともに眺望山で荒れ果てていた保存機だが、近年すっかりレストアされてこの博物館館内エントランスに保存された。'06.11.24

レイル・マガジン

ネコ・パブリッシングCopyright © 2005-2018 NEKO PUBLISHING CO.,LTD. All right reserved.