鉄道ホビダス

“富士急のワフ”後日談。

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先日、このブログで富士急行の撮影行をご紹介し、そのなかで下吉田駅構内で保線用倉庫代用として残されているワフ1・2をお目に掛けましたが、このワフに関して、ブログ「ちょっと楽しい鉄道と趣味の独り言」で毎回楽しい話題をご披露くださっている京都の高橋 修さんからたいへん面白いレスポンスを頂戴しました。
▲ED5201形に牽かれて入換え中のワブ503。四半世紀前までは毎日見ることのできた光景だった。'82.3.27 和歌山市 P:高橋 修

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まずこのワフですが、もと南海電気鉄道の車輌で、同線の昇圧が完成する前後に廃車となったものなのだそうです。富士急行に譲渡されたのは1973(昭和48)年9月付けで廃車となったワブ513・517の2輌。ちなみに弘南鉄道にも1971(昭和46)年7月付けで廃車となった2輌(ワブ505・523→弘南ワフ511・512)が譲渡されているとのことです。
▲同じく和歌山市駅構内の情景。かなたにはED5201形電機がたむろしている。'82.3.27 和歌山市 P:高橋 修

nankai3n.jpgここまで聞いて灯台下暗し…昨年の『トワイライトゾ?ン・マニュアル14』でB滝さんがその名も「南海のワブ」と銘打った記事を書いているのを思い出しました。それによれば、南海の“ワブ”は1930(昭和5)年に田中車輌と梅鉢鉄工所で38輌製造された有蓋緩急車ワブ1形1?38を前身とし、戦後の1949(昭和24)年に形式変更でワブ501形となったものだそうです。特徴的な緩急室と逆端の“デッキ”は末期の改造だそうで、入換え時の使い勝手を考慮して設けられたもののようです。
▲構内に留置中のワブ512。南海ならではのニス塗りの窓枠が誇らしい。'82.3.27 和歌山市 P:高橋 修

高橋さんは「当時はすでに天王寺側の貨物がなく、南海の貨物を見ようとすると和歌山まで行かなくてはなりませんでした」との注記付きで1982(昭和57)春に和歌山市で撮影したワブの写真を送ってくださいました。南海電気鉄道が貨物輸送を廃止したのは1984(昭和59)年2月。最後まで残ったワブは502、503、511、512、515、518、519、556の8輌だったと言います。

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ところで、高橋さんはこの現役時代のワブの写真とともに、オマケ(?)ですと、ちょっと面白い画像を送ってくださいました。なんと南海のワブのテールライトです。しかもご本人が十年以上前にフリーマーケットで3000円也で入手されたものだそうです。“とんがり帽子”が南海の証です…とご本人。しかも関西私鉄らしく標識灯と尾灯の切り替えができるようになっており、“とんがり”の部分を回すと「赤」「無灯(黒ガラス)」「無し(白色)」と切り替えられるのだそうです。
▲“とんがり帽子”を回すと色が切り替えられる…とはいうものの、電気的に切り替えるのではなく、ご覧のようにフィルターが回る実にプリミティブな構造。P:高橋 修

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▲国鉄紀勢本線直通乗り入れ「くろしお」のサハ4801を牽引する南海2000系。先頭部には例の“とんがり帽子”がしっかり見える。'52.8.31 天下茶屋 P:高橋 弘

1952-9-22-001-1n.jpgさらに面白いのはこの“とんがり帽子”の役割です。高橋さんのお父様は古くからのファンとして高名な高橋 弘さんで、お父様に伺った話としてこんな話を披露してくれました。
「モノクロ写真…当然おやじの写真です。南海南紀直通客車列車”くろしお”サハ4801を牽引する2000形。電車にも使われていた”南海とんがり帽子”テールライト。おやじの話によると戦中・戦後の混乱期にお客さんが電車の外に乗るのに出っ張り部に足をかけて乗る人が多かったそうです。しかしテールライトに足をかけてもテールライト自体は車体に引っかかっているだけですのですぐに外れてしまいます。そこで人が乗れない(足をかけられない)ようにテールライトの上に”とんがり”を付けたそうです。因みにもう一枚の名鉄揖斐線のモ451形の写真にも名残があります」。
▲こちらは名鉄揖斐線のモ451。“とんがり帽子”ではないものの、やはり足掛け防止用の“帽子”(三角錐?)が付いているのがわかる。'52.9.22 美濃北方 P:高橋 弘

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▲近鉄(元参急)の2200系(2300系)にも小さな“とんがり帽子”が取りつけられていた。'52.6.22 鶴橋 P:高橋 弘

うーん、なんとも深い話です。てっきり“とんがり帽子”はただのデザインとばかり思っていたのですが、そんな事情があったとは…。富士急撮影記からとんでもない方向に話が飛びましたが、高橋さんには感謝感謝です。

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