鉄道ホビダス

アイルランドに欧州最大のナローゲージ網を訪ねる。(9)

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第九回:列車密度世界一(?)の3フィート軌道。
11日付けのアイルランド紀行第8回を「さすがにあまりのマイナーさゆえか人気がなく、このところページビューが減ってきてしまっていることもあって、一旦中休みとしてレギュラー記事に戻し…」と結んだところ、メール等で「楽しみにしているのに」とご叱責やら励ましやらを多数頂戴しました。そんなわけで気を取り直し今日から再開、何日かに一度のペースで書き進むことにいたしましょう。
▲一面に広がるピート・ボグからワゴンマスター12t機の牽く盈車列車が帰ってきた。レンズボーラァの本線軌道は複線となっており、その列車本数は驚くほど多い。'02.10.22

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さて、話はアイルランド2日目です。今日は昨日訪ねたブラックウォーターワークスから北へ50キロほど離れたレンズボーラァ(Lanesborough)地区のボード・ナ・モナ軌道を目指します。ブラックウォーターから50キロ程度ならいっそのこと最寄のアスローンの町に宿をとればとお思いでしょうが、事前に調べたところではビジネスホテル的な宿泊施設はなく、B&B(ベッド&ブレックファースト)が数軒あるのみです。もちろんB&Bなら料金的にもリーズナブルですが、彼の地のツーリスト向けB&Bは、えてしてかつての日本のユースホステルのように過剰にフレンドリーで、朝食などいらぬから早朝に出発したいなどというオーダーを切り出しにくいケースがままあります。こちらはアイルランド旅行自体を楽しもうと来ているわけではありませんから、ビジネスライクにこちらのペースで行程を組むためには都市部のビジネスホテルが一番。結局、120キロあまりを往復する覚悟で首都・ダブリンのホテルに宿をかまえたのでした。
▲背後に見える発電所に向かい大きくカーブをきるピート列車。3?4列車が続行で運転される。'02.10.22

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ダブリンからはまた昨日と同じルート、高速環状M50号線から高速M4号線へ、さらに国道N4号線へと車を進めます。昨日のような事故渋滞もなく、朝靄のたちこめる中、軽快なドライブです。初めて走るのと大きく違い、一往復しているだけに“先が読める”安心感は、場所が海外だけに絶大です。
▲正門から見たレンズボーラァ火力発電所の威容。'02.10.22

さて、アイルランドにはピートを燃料とする巨大な火力発電所が5箇所あると聞きますが、目指すレンズボーラァ(Lanesborough)発電所もそのひとつです。アイルランド語から来ているこの地名の発音も非常に難しく、ここでは現地で私が聞き取ったままとりあえずレンズボーラァと表記することにしましょう。事前に調査したところでは、軌道はこの発電所の燃料となるピートを搬送するために365日運転されており、しかもその輸送量の多さは各地のボード・ナ・モナの軌道網の中でも屈指とのことでした。

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昨日のブラックウォーターワークスの荒涼とした風景を想像しながらたどり着いたレンズボーラァの町は、想像とはまったく違う近代的な普通の町でした。町中のどこからでも見える巨大な煙突が火力発電所で、その煙突を目指しさえすれば、道は必ずどこかでボード・ナ・モナの3フィート軌道と遭遇します。どうやら何箇所かローディング・ポイントがあるようですが、町外れの東側に広がる広大なピート・ボグがメインのようで、何と複線の軌道が延々と続いています。
▲本線軌道の途中で見かけた保線用駐泊所(左)。12t機が1輌待機していた。右は同所で台車に積み込まれた軌匡。'02.10.22

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住宅街を分け入ってゆくと、大きな墓地へ続く道がお誂えの位置で軌道をオーバーパスしているのが見えました。車一台がやっと通れるほどの橋ですが、眼下の軌道はちょうど緩いカーブを描き、その彼方には黒々としたピート・ボグが地平線まで広がっています。暫く待っていれば列車が来るのでは、などと思う間もなくくぐもったエンジン音を響かせながらワゴンマスターの12t機がやってきました。これはラッキーとシャッターを切ったものの、その100mほど後にも次の列車が…。
3フィート以下の軌道としては、恐らく世界で一番列車密度の高いであろうレンズボーラァ軌道との最初の出会いでした。
▲レンズボーラァの軌道網はその概要さえ把握出来ないほど巨大だった。軌道を辿っても、さながらパズルのように分岐を繰り返しとめどなく続く。'02.10.22