鉄道ホビダス

あなたのネガは大丈夫ですか!?

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たいへんなご好評をいただいて重版をした『軽便追想』(現在品切れ)や、RM LIBRARYシリーズ『東野鉄道』『日本ニッケル鉄道』などで数々の貴重な写真を発表いただいている高井薫平さんが来社、たいへんショックな話を伺いました。初期のモノクロ・ネガ・フィルムがここ数年の間に酷い状態になってしまったというのです。

ご持参いただいたネガを見て絶句! 直径5ミリくらいにクルクルに巻きついてしまい、どうにもこうにも開けなくなってしまっているのです。しかもそのネガは『軽便追想』に使わせてもらったものそのもの。編集に際して9年前にお借りした時には多少のカビはあったものの、とりたてて状態が悪い原版とは思えませんでした。それがこんな状態になってしまうとは…。

問題なのはこの症状、高井さんのネガに限ったことではなく、ほかの何人かの方からも同様の相談を受けていることです。しかもいずれもここ十年ほどの事象で、もしかすると“花粉症”のように何らかの自然条件が複合的に絡み合って発症(化学変化?)するのかもしれません。そうだとするとこれは私たちの趣味にとって前代未聞の一大事です。
▲高井さん著『軽便追想』から沼尻鉄道のコッペルの走行シーン。1957(昭和32)年1月に撮影されたこの写真のネガも今やご覧のとおり…。

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共通の“症状”は次のようなものです。
・ 非常に強いカーリングが起こり、最終的には直径5ミリくらいに巻きついてしまう。
・ 従来それほど感じなかった酢酸臭が極度に強くなる。
・ フィルムベースの色がオレンジベースのネガカラーフィルムのようにオレンジ色に変色し始める。
このほかにも乳剤面と逆側にうっすらと汗をかくような湿度を帯びる初期症状もあるようです。複数の皆さんの“症例”を拝見するに、「1960(昭和35)年頃以前に撮影された特定メーカーのフィルム」が共通項で、件の高井さんのネガも1961(昭和36)年以降のものはまったく発症していません。ただこれは、今後も発症しないものなのか、撮影後40~50年を境に症状が出てくるものなのかは不明です。

編集者としてはもちろん、“明日はわが身”でもあり、高井さんからお借りしたサンプルを『永遠の蒸気機関車 くろがねの勇者たち』でお世話になった東京都写真美術館に持ち込み、分析をお願いしました。とにかくまずはカーリングを直さない限りスキャナに取り込むことさえできませんから、原因の究明とともにその対処方法を伺おうというわけです。カーリングの修正に関しては明治時代の鶏卵紙のカーリングを直す方法などがあるそうですが、保存科学研究室で調査のうえ何らかのサジェスチョンをいただけるそうで、その際はまたこのブログでご報告したいと思います。

米国のNASAは歴史的な月面着陸のカラー画像をCMYKに4色分解のうえ、モノクロフィルムに転換して残しているという話を聞いたことがあります。真偽のほどはともかく、デジタル全盛の現代にあっても、保存性という意味では銀塩モノクロに優るものはなく、そこからこんな話も流布されるようになったのでしょうが、今回の件ではそれも磐石ではないことを思い知らされます。皆さんのフィルムは大丈夫ですか!?
▲丸まってしまったネガをお持ちになって困惑顔の高井さん。なんとしても一刻も早く対処方法を見出したいもの。

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