鉄道ホビダス

12年ぶりのライン河上流工事事務所。(第3回)

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第3回:ハイブリッド”なロコたち。

「ライン河上流工事事務所」のメイン・エンジンは、軌間750㎜、一見ポール集電の「電気機関車」に見える2輌の機関車、“HEIDI”と“URS”です。ところがこの機関車たち、実はなかなかの優れモノでして、その実態は「ディーゼル・電気機関車」なのです。JR貨物のDF200に代表される『電気式ディーゼル機関車」ではありません。「電気式ディーゼル機関車=Diesel Electric」はディーゼル機関で発電した電力でモーターを駆動する方式ですが、こちらは“ディーゼルエンジン駆動もできる電気機関車”なのです。
▲すがすがしいラインの川風に吹かれながら“URS”の牽く返空列車がやってきた。空トロの奏でるジョイント音に続いて、最後のトロが引きずるリンクカプラーが鉄枕木上で踊る“カン、カカン”という甲高い不連続音がいつまでも聞こえていた。'05.9.27 右岸本線

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“ハイブリッド車”というと、1997年に発売されたトヨタ自動車の「プリウス」や、続いて1999年に発売されたホンダの「インサイト」を思い浮かべますが、こちらは1950年代末からすでにハイブリッド仕様でした。とはいっても、ポールで集電していることからもわかるように、搭載されているディーゼル機関と電気系統とは何の相互関係もなく、いわば架線のない所ではディーゼル機関車として使えるというだけの極めてアナログな方式です。
▲2輌の「本線機」は1946年(HEIDI)と1949(URS)の生まれ。自重13t、出力90ps。電気品はかのスイスの名門「ブラウン・ボベリ」(BBC)製だ。当初は左岸(スイス側)所属機で、前者は1959年、後者は1958年にディーゼルエンジンを搭載して“ハイブリッド”化されている。写真はURSだが、HEIDIもルーバー形状など細かい違いはあるものの同形。'05.9.26 コルバッハ採石場

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ではなぜこんな面倒な“ハイブリッド”仕様になっているのか…? それはこの軌道のローディングポイント(荷役現場)に秘密が隠されています。採石場で浚渫用の砕石を積み込んだ列車は、遥かボーデン湖のローディングポイントを目指すわけですが、何しろ目的地は浚渫現場ですから、その位置は刻々と変化します。つまり、電化された「本線」の先の現場作業線は電化しようもないわけで、ここにハイブリッドにせざるをえない理由があるのです。
▲自重5t、出力45psと実にかわいい“SANTIS”は1954年製で、やはりBBCの電気品を用いたハイブリッド・ロコ。当然、逆回転できない内燃機関用に逆転機を装備しているはずだが、このコンパクトな車体のどこにどうパッケージングされているのかはついに解明できなかった。3日目に左岸本線に単機で乗り込んでゆくところを見たのを最後に行方知れず、結局その後は帰国まで再会できなかった。'05.9.26 コルバッハ採石場

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“シュルシュルシュル”と小気味良い駆動音で走ってきた「電気機関車」は、現場の数キロ手前の架線終端部で一時停車、降りてきた運転士が紐を手繰り寄せてポールを下ろすと、今度はやおらディーゼルエンジンを始動、あっという間に「ディーゼル機関車」となって非電化の軌道に繰り出すといった寸法です。いや、その手際の良いこと。逆も同様で、ディーゼルエンジンを止めたかと思うや、飛び降りてきた運転士がささっとポールを回し、こともなげに電気機関車に化けて走り去って行くのです。
▲今回は修理工場に入ってしまっていて形式写真を撮ることのできなかった“ELFI”。この写真は12年前の初訪問の時に庫から出してもらって撮ったもの。自重10t、出力53psのハイブリッド機で、1958年“Gebus”製とされるが詳細不明。新製当初から右岸(オーストリア側)所属機であった。'93.10.15 ルスティナウ工場

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