鉄道ホビダス

マニ30のこと。

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どんな世界にも“タブー”とされるものはあるもので、今だから語れますが、マニ30という「荷物車」もそのひとつでした。2003(平成15)年度末で用途廃止となるまで、歴とした車輌としてJR線上を走っていたのですが、どの趣味誌にも一切取り上げられることはありませんでした。

というのも、この荷物車、日本銀行所有の私有荷物車で、その用途は現金輸送! 用途が用途だけにいろいろな局面で緘口令が布かれ、ともすると車輌の存在そのものが伏せられていました。小誌にもたびたび「謎の車輌を見た」という報告が寄せられましたが、たいへん申し訳ないことながら、そのような投稿をいただいても誌面に反映することは適いませんでした。いささか言い訳がましいのですが、毎年発行している『JR全車輌ハンドブック』にも、マニ30はJRの車輌ではないという理由で掲載していません。
▲第1荷物室側から居住室側を見る。2段の寝台が3箇所備えられており、もちろん昼間は座席としても使える。

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このマニ30形、マニ34形1~6を出自とする2001~2006号と、1979(昭和54)年から翌年にかけて日本車輌で新製された2007~2012号の合計12輌が存在しました。新製グループはマニ50と類似した車体ながら荷物室にもドアにもいっさい窓がなく、後位側妻面にいたっては貫通路はおろかダクトひとつないのっぺらぼうという異様な風体です。

用途の性格上、運用も決まっておらず、いわゆる「電報手配」で寸前になって併結列車が指定されるという特殊なものでした。それでも急行「銀河」をはじめ、たびたび併結が目撃される列車もあり、実際のところどのような運用が行われていたのかは興味深いところです。
▲左は第1荷物室。パレットの上のケースは「容箱」と呼ばれる現金収納箱だそうで、1箱は実に2億円相当! つまり1輌あたりは数百億円となったはず。写真右は便所横の収納スペースに組み込まれた隠し金庫。ずいぶん小さい金庫だが、実は扉をはじめとした各種施錠箇所の鍵を収納する金庫だそうだ。まさにフェールセーフ、二重系のセキュリティーが施されている。

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さて、このマニ30の2012号が昨年、小樽交通記念館に保存され、一般公開されています。保存された2012号は隅田川駅常駐の寒冷地仕様で、僚車2011号とともに東北・北海道方面を担当していた車だそうです。

先日小樽で開かれた日本鉄道保存協会総会の際に、小樽交通記念館のご厚意でこのマニ30の内部を拝見する機会をえました。両端の第1荷物室と第2荷物室の間には寝台や冷蔵庫などを完備した「居住室」があり、簡単な炊事もできるようになっています。防弾ガラスなど不測の事態に備えたセキュリティーもさすがで、小樽においでになった際は是非ご覧になることをおすすめします。
▲第2荷物室横にはボックス席がある。この部分には小さな窓(防弾ガラス)もあって一般車っぽい感じもする。

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ちなみに、マニ30と聞くと即座に思い出す苦い経験があります。もう二十年も前になりましょうか、まだ国鉄時代のことですが、当時模型関連記事も併載していたRM本誌で、自作したマニ30の模型を採り上げたことがあります。簡単な図も掲載したのですが、発売日直後、国鉄本社から見事に呼び出されてしまいました。何でも日本銀行内にいた小誌の読者が記事を見つけ、日銀が国鉄に連絡を入れたらしいのですが…。
▲マニ30の全景。これまで知る人ぞ知る存在だっただけに、一見の価値あり。ただし、室内は特別公開日でないと見ることはできない。

そんな“歴史”も踏まえ、手元にあったマニ30の形式図をご覧に入れてしまいましょう。数年前までは絶対にかなわなかった大公開(?)です。
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