鉄道ホビダス

12年ぶりのライン河上流工事事務所。(第9回)

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第9回:エクスカーション・ツアーのこと。
ところで、治水業務一点張りと思われた「ライン河上流工事事務所」ですが、近年では積極的にイベントも企画し、これが結構な好評を博しています。
▲すでに陽が西に傾き始めた頃、マッファイの牽くエクスカーション・トレインがスイス側西岸の土手下をコルバッハへと向かう。単音の汽笛が心地よく耳に残る。'05.9.25

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長い歴史を持つこのライン河改修工事には、実にのべ30輌以上もの蒸気機関車が投入されてきました。最も古いものは1874(明治7)年クラウス製の20ps機で、以後、マッファイ、ユンク、コッペル、ボルジッヒといった、名だたるドイツ系軽便機が活躍を続けていたのです。もちろん、戦後は無煙化されてお役御免となったわけですが、比較的新しい1921年マッファイ製のBタンク機と、1910年ユンク製の同じくBタンク機は地元に静態保存され、その姿を留めていました。
▲ルスティナウには4線ながらささやかな扇形庫と転車台もある。2輌の動態保存蒸機は普段はこの庫で休んでいる。

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「ライン河上流工事事務所」ではこの静態保存機の動態復元を計画、ルスティナウ工場でレストレーションを行い、1990年には復元が完成しました。河川改修事業への啓蒙の意味もあって、それまでもにも見学列車を運行していたようですが、この蒸機復活後は毎年5月から10月にかけての週末、各種の見学列車が運行されています。
▲コルバッハ近くのスイス側国境を行くエクスカーション・トレイン。この写真はスイス側国境検問所とオーストリア側国境検問所の間の橋の上から撮っている。実は珍しく写真の検問所であれこれ尋問され、おまけにクルマのトランクの中を見せろ…などと言われているうちに列車が迫ってきてしまった。国境警備員はようやく納得したようだが、こちらはたまったものではない。もう間に合わないからここにクルマを停めて国境の真ん中から写真を撮らせてくれと頼んでこの写真を撮っている。画面右奥に写っているのが運転していたレンタカー。国境警備員もさすがに申し訳なく思ったのか、渋々OKしてくれた。'05.9.25

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考えてみると日本でも立山砂防軌道が「カルデラ見学会」と称する啓蒙見学会を行っており、抽選で軌道に便乗できますが、ライン河も意図としては同じようなものでしょう。“ショートトリップ”ではルスティナウの事務所前からボーデン湖の現場までの往復がプログラムされており、実際に乗車したわけではないので詳しいことはわかりませんが、車内では河川改修の重要性がレクチャーされているようです。さらに“ロングトリップ”はコルバッハの採石場からボーデン湖まで全線を走破するもので、途中の休憩なども入れて半日がかりの大規模なエクスカーションです。
▲コルバッハで折り返しを待つマッファイ製“200?90”。1920年製の90ps機で、自重は13.8t。もともとの東岸オーストリア側所属機である。もう1輌はユンク製の“St.Gallen”で、こちらはもとは西岸スイス側の所属機。'05.9.25

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12年前に訪れた時には簡素な事務所と現業設備だけだった記憶のあるルスティナウには、今では立派は「ライン河改修博物館」(?)が出来ており、“体験乗車”の皆さんはまずこの博物館でレクチャーを受けてから乗り込むという寸法です。これまた立山の「カルデラ博物館」と同様のコンセプトといえ、洋の東西を問わず、どこも治水・治山事業への啓蒙は苦労しているなぁと変なところで感じ入った次第です。
▲燦然と輝くマッファイの銘板。この機関車、現役当時の写真を見る限りはもっと“土工”ぽいのだが、1990年にレストアされてからはミュージアム・コンディションとなってしまい、ちょっと場違いな印象は免れない。'05.9.25

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この見学列車は何と平日にも運転されています。4日目だったか、ボーデン湖のローディング・ポイント付近で“URS”の牽くレギュラー・トレインを撮影して、2キロほど先に停めてあるクルマに戻ろうと歩いていると、やおら併用軌道の彼方から聞きなれたエンジン音が…。何かあってさっき去っていった“URS”が再び戻ってきたのかと思いきや、やってきたのは“HEIDI”の牽く見学列車でした。しかも車内は小学生くらいの子供たちで大騒ぎ。どうやら地元小学校の社会科見学会のようです。それにしても、ほとんど“安比奈”状態のロケーションの中にワイワイ、ガヤガヤと砂利列車ならぬジャリ列車がやってくるのですから驚きです。
▲マッファイの前で記念撮影に興じるエクスカーション参加者たち。すでにかなり出来上がっている方もおられ、なかでもルクセンブルグから来たというおじさんに「いやぁ、日本人か!」とやたらなつかれてしまい結構往生した。'05.9.25

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さらに興味深いのは、見学列車とはいえ堅苦しさがまったく感じられないことです。かの立山砂防はヘルメット必着のうえ各種“心得”を厳守のうえの見学乗車となりますが、何とライン河の方は酒類持込可! というか、編成の中にはビールやらワインやらを満載した“バー・カー”(?)まで連結されている始末。エクスカーションを終えてルスティナウに戻ってくる頃には、皆さんすっかり出来上がっているという寸法です。

今年の運転はすでに終わってしまいましたが、今年の実績でいうと、蒸気機関車牽引による見学列車の運転は合計13日間。それ以外の週末にはほとんど間違いなく“HEIDI”らディーゼル・電気機関車による見学列車が設定されています。
▲自転車で帰る地元民のために機関車次位には自転車積載用のフラットカーが連結されている。'05.9.25

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