鉄道ホビダス

12年ぶりのライン河上流工事事務所。(第6回)

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第6回:ライン河に“安比奈”の影を見た。
東岸本線の架線終端から先、つまりボーデン湖の現場へ続く非電化線はどうなっているのでしょうか。本線が敷設されている土手下には並行する道路がありますが、ちょうど架線終端部にゲートが設けられており、そこから先は一般車進入禁止となっています。ただ、ゲートの傍らの看板によると、バードウォッチングや釣りを楽しもうという市民のために、歩いて入ることは可能なようです。いったいどれくらいの距離があるものか判りませんが、ともかくすべての線路の末端を見届けねば気が済みません。最小限の機材を手に、堤防上を歩きはじめることにしました。
▲ずらり並んだ鍋トロに容赦なく砂塵をかぶせてダンプが行く。とてもあのスイスとは思えない素晴らしい(?)情景。西岸(スイス側)本線 ’05.9.26

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2キロほどは茫洋とした風景が続いていたでしょうか。左手に見えていたライン河の川幅が一気に広がったかと思うや、軌道は堤防上から未舗装の路上へと躍り出ます。夢にまで見た未舗装の併用軌道です。彼方から砂塵を巻き上げてやってくるトラック、唸りを上げるエキスカベーター、沖合いの浚渫船…これは「安比奈」だ、生きている「安比奈」だ。遥か9000キロと40年の時空を超えて、こんな所でまさか「安比奈」に出会おうとは !
▲西岸本線はこの地点から併用軌道となり、途中には一箇所、使われていない様子ながら未舗装路面の交換所もある。'05.9.27

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西武鉄道安比奈線。いうまでもなく、西武新宿線南大塚から分岐して入間川河川敷を目指す貨物線で、昭和40年代初頭に実質的な運転を終了したにも関わらず、いまもって「休止」のまま線路はもとより架線まで残されているトワイライトゾ?ンの代表格です。

タッチの差で現役時代の安比奈を見ることはできませんでしたが、昭和40年代中盤に初めて訪れた安比奈の印象は強烈で、その後の趣味を大きく方向付けたと言っても過言ではありません。
▲浚渫船が唸りをあげて河床の堆積を掻き上げる。大河・ライン、そしてボーデン湖。まさに気の遠くなるような作業が日々続けられているのだ。'05.9.28

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安比奈というと反射的に脳裏に浮かぶのが5月のどんよりと曇った天気です。最初の訪問時のイメージをひきずっているのかどうかは判りませんが、仲間うちで「安比奈日和」という言葉さえ出来てしまったほど、安比奈にはそんな曇天がお似合いでした。何人かの釣り人、ラジコン飛行機のエンジン音、そして時折響くヒバリの鳴き声…そんなひとつひとつが、動くことをやめてしまった砂利選別機や放置された鉄聯のEタンクをより一層引き立て、「安比奈」のイメージを何にも変えがたいものとしていったのです。
▲40年前の「安比奈」はきっとこうだったに違いない。しかも信じられないことに足下のレール踏面はしっかりと輝きを保っており、それどころか、もうしばらくすると生きている「列車」がやってくるのだ。'05.9.28

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それまであれほど晴れ渡っていた空は一転にわかに雲に覆われ、信じられないことに、わざわざあの日の安比奈を思い出させるかのごとく、辺りはまさに「安比奈日和」となりました。見渡す限り誰もいない軌道終端に一人佇む自分。しばしシャッターを切るのも忘れてあまりのコトの展開に立ちすくんでいると、彼方からかすかなディーゼル音が響きはじめ、やがて併用軌道をヨタヨタと“ハイジ”の牽く列車が姿を現すのでした。
▲東岸本線の軌道終端部付近のローディングポイント。平トロに載せられてきた巨石はユンボによって摘み降ろされ、浚渫現場へと運ばれてゆく。「採取」する安比奈と違って、こちらは「埋め立て」である。'05.9.28

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この情景を実際に目の当たりにしてしまうと、インダストリアル・ナローゲージャーとしては感極まり、語るべき言葉すら失ってしまいます。これが40年前、いや20年前ならともかく、つい2週間前の光景だと誰が信じましょうか。時空を超えて「安比奈」は生きていたのです。
▲ディーゼル機関車と化した“ハイジ”が併用軌道をゆく。軌道終端はボーデン湖に突き出した形となり、左右にはひたすら水面が広がる。'05.9.28

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