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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2009年12月21日

『昭和三十四年二月 北海道』ついに完成。(下)

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▲昇降式のスノープラウが一面の銀世界と化した鉄路をかき分ける。茶志内の“大コン”9217は美唄からの転属機だ。'59.2.10 三菱鉱業茶志内専用鉄道 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

寿都鉄道で幕を開けた撮影行は、偶然耳にした胆振線のキマロキ運転で早くも旅程の変更となります。佳き時代のことゆえ、幸いにも添乗を許され、3台のレンジファインダーカメラはキマロキの信じがたい雪との闘いを活写してゆきます。そのアングルはまさに広田写真の真骨頂ともいえるもので、必見です。

091220n2929n.jpg夕張地区の数々の私鉄・専用線を丹念に巡りながら、広田さんのカメラアイは鉄道そのものではなく、いわば“空気感”をも写しとってゆくのです。その一連の作品は、鉄道写真を志す皆さんに時代を超えて普遍の方向性を示すとともに、模型心を持った方にとっても、掛け替えのないインスピレーションとなって響くに違いありません。

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▲8850の動輪が躍動する。ランボードからの流れ、第1動輪に集中するロッド。ドイツ機の血をひくテンホイラーは奈井江の地で元気だ。'59.2.22 三井鉱山奈井江専用鉄道 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

そして本書のもうひとつの白眉ともいえるのが、『鉄道ファン』宮田寛之名誉編集長による解説です。「広田さんの昭和34年の北海道撮影行と当時の私鉄・専用線の蒸気機関車について」と題された16ページにわたる解説は、「私の前半生は広田さんとともにあり…」と記される宮田さんならではのもので、昭和二十年代後半の鉄道趣味界の動向から解きおこされ、当時の諸先輩方のつながり、そして鉄道写真黎明期の胎動がひしひしと伝わってくる必読の内容です。

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▲憧れの“ランケンハイマー”についに出会った。十勝の野を走るランケンハイマー、感激の一瞬である。'59.2.26 日本甜菜糖十勝清水専用鉄道 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

もちろん登場する各私鉄・専用線の蒸気機関車についての的確かつ味わい深い解説は宮田名誉編集長ならではのもので、期せずして宮田さんが師と仰ぐ臼井茂信さんが『鉄道讃歌』に寄せられた解説を彷彿させます。素晴らしい形式写真の数々とともに、間違いなく後世に残る解説ページとなっております。

091220n%EF%BD%8832.jpg■本書に登場する主な鉄道
寿都鉄道、胆振線、日本製鋼所室蘭工場、栗林商会、北海道砂鉄伊達工場、大夕張鉄道、真谷地専用鉄道、角田鉱業所専用鉄道、夕張鉄道、美流渡専用鉄道、美唄鉄道、茶志内鉱専用鉄道、奈井江鉱専用鉄道、茂尻鉱業所専用鉄道、芦別森林鉄道、油谷鉱業専用線、日本甜菜製糖十勝清水専用鉄道、北海道拓殖鉄道、根室拓殖鉄道、庶路鉱業所専用鉄道、雄別鉄道、尺別鉱業所専用鉄道、釧路臨港鉄道、釧路埠頭、日本甜菜製糖磯分内専用鉄道、置戸森林鉄道、運輸工業専用線、北日本製紙江別工場専用線、定山渓鉄道、茅沼炭化工業専用鉄道/簡易軌道風蓮線
▲“銀竜”のエンジンをかけるべくクランクを回す。'59.2.16 根室拓殖鉄道 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

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▲16ページにわたる詳細な解説は『鉄道ファン』名誉編集長の宮田寛之さんによるもの。 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

そして巻末には、4年後の昭和38(1963)年10月に撮影された「一馬力の殖民軌道 ―簡易軌道風蓮線の一日―」を収録いたしました。根釧原野に最後に残された馬力による簡易軌道に会いたくて、はるばる根室本線厚床を訪れる情熱は、『昭和三十四年二月 北海道』の時となんら変わってはいません。

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▲見渡す限りの秋の根釧原野を「一馬力の殖民軌道」が行く。'63.10 簡易軌道風蓮線 (広田尚敬『昭和三十四年二月 北海道』より)

カメラこそニコンFに進化してはいるものの、被写体の鉄道、そしてそれを取り巻く人びとへの眼差しは、鉄道写真の“原点”を深く心に刻んでくれるものです。『昭和三十四年二月 北海道』は、鉄道写真を志すすべての方に、是非、是非、ご覧いただきたい珠玉の一冊です。
■広田尚敬写真集『昭和三十四年二月 北海道』 (限定出版)
・A4判変形(本誌同寸)208ページ(モノクロ/一部2色刷り)
・上製本、ケース入り
・定価:10,000円(税込)

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