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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2009年8月10日

ガソリンカー祭に参加。(下)

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▲見事に“復活”を遂げたフォード。板材から製作された台枠はアンダーコートによって鋳鉄風に仕上げられている。'09.8.8
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「定時」と愛称されて町民に親しまれてきたガソリンカーを復活させることは、2005(平成17)年に足尾歴史館がオープンした当初からの長井館長の強い願いであったと聞きます。しかし、復活記念式典冒頭で吐露されたように、長井館長は機関車はもとより内燃機関に関してもまったくの素人。まさに熱意だけのスタートでした。

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▲実にシンプルなキャブ内。手ブレーキの根元の狭隘なスペースにクラッチペダル(ブレーキポストの後ろ)とスロットルペダル(右)が見える。左側の青い箱はガソリンタンク。'09.8.8
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その熱意をしっかりと受け止めたのが同館理事で町内きっての自動車修理工場を経営する町田 洋さんでした。内燃機関であれば修理できないものはないというエンジニアの町田さんは、まずは心臓部であるA型フォードを探すことから作業を開始したそうですが、完成に漕ぎ着けるまでは語るに尽くせないご苦労があったとのこと。復元記念式典終了後、その辺の艱難辛苦を専門的にうかがおうと、歴史館二階で私と町田さんのトークショーが開催されました。

090809n003まずは問題のエンジンです。足尾銅山工作係作成の図面によれば、搭載エンジンは乗用車用のA型フォード。外見からも当たり前のように思えるかもしれませんが、同系にはトラック用のAA型もあり、A型を探すのにたいへんな苦労をされたとか。しかもようやく入手したA型もディストリビュータをはじめとした補機類はすべて失われており、シリンダーブロックとシリンダーヘッド、オイルパン、それにミッションだけという惨憺たる状態だったのだそうです。
▲完成披露を前にキャブ側面に取り付けられた銘板。銅山の町だけに高価なリン青銅が奢られた。'09.8.8
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▲数々の苦難を経て復活したA型フォードエンジン。イカの頭のような独特の形状をしたディストリビュータも遥々アメリカから輸入された。'09.8.8
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それでもインターネットで探り当てたアメリカのレストア部品販売業者から足りない部品を手に入れ、なんとかエンジンが掛かる状態にまで修復することに成功。ただ、スタッドボルトとシリンダーヘッドが固着してしまってどうにも分解できず、シリンダーやピストンリングの調整は今後の課題となっているとのことです。それにしても80年近く前のフラットヘッドと通称されるサイドバルブ(SV)エンジンは現代の目で見ると実に破天荒で、ディストリビュータからスパークプラグへはハイテンションコードなどなく、金属帯が剥き出しで接続しているなど、かなりスパルタンな構造であったことがわかります。

090809n021.jpg台枠はさすがに鋳鉄で作ることはできず、鉄板を重ねて組み上げたものですが、この製作工程でも新たな発見があったと聞きます。オリジナルの鋳鉄台枠の図面を仔細に見てみると、重量を稼がねばならない前後と、肉厚を薄くすべき軸受部の厚みに大きな差があり、鋳造時の冷却速度に大きな差が生じてきわめて製造が難しいことが判明したのです。鉱山用機械を“地産地消”してきた足尾銅山ゆえに、昭和初期にこの技術的に困難な鋳造をなしえたわけで、いみじくも古河の技術力の高さを証明しているとも言えましょう。
▲14時からは歴史館二階で町田さんと私のトークショーが行われた。'09.8.8 P:須永秀夫
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▲わたらせ渓谷鐵道の終点・間藤から本山までの線路はまだ残されている。現在、日光市はこれらの近代化遺産を世界遺産に登録すべく、さまざまな活動を繰り広げている。'09.8.8
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細部にまで拘りぬいたこの2009年製のガソリンカーは、町田さんがプライドを賭けて追い番の№14と付番したのに相応しく、半世紀の時空を超えて足尾の地に甦ったまさに“本物”と言えるでしょう。足尾歴史館では今後も基本的に毎月第一土曜日にこのガソリンカーを運行する予定だそうですので、今回のガソリンカー祭を見逃した方も、ぜひ次の機会にお訪ねになってみてください。
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