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2009年6月26日アーカイブ

入川森林軌道再訪。(下)

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▲復活した入川森林軌道の見せ場のひとつだったΩループの今昔。周囲は26年の歳月が信じられないほどに変わっていない。'09.6.20/'83.6.4
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入川森林軌道が復活するかも知れないとの情報を得たのは1982(昭和57)年冬、春の訪れを待ちかねて現地に赴いたのは翌年3月26日のことでした。残雪の渓谷から吹き上げる身を切る寒風に耐えながら軌道跡を歩いてゆくと、歩行者の皆様へと題した真新しい看板を見つけました。曰く「これより入川の上流2.2キロの間、土木工事のため軌道車を運行しております…運行期間・昭和58年4月1日より昭和58年9月30日まで」。

kawamatacolor03.jpg運行開始はなんと6日後! はやる気持ちを抑えつつさらに進んでゆくと、保線作業をしている人たちがいるではありませんか。この時、初めて「復活」が現実のものとなって目前に迫ってきたのです。聞けば姫川電力川又発電所の増設にともなう取水口工事が軌道終点の赤沢出合付近で行なわれる計画で、その資材運搬用に入川森林軌道が利用されるとのこと。起点の矢竹沢出合付近の道路と軌道敷の間に高低差があり過ぎて資材を降ろすのに索道を設けねばならず、トラック輸送を断念した結果の軌道復活でした。
▲「復活」の報に半信半疑で訪れたのは雪解け間もない頃。すでに運行に向けた軌道の整備が始まっていた。'83.3.26
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▲軌道の修復作業にはモーターカー然とした「1号機」が使われていた。ピン・リンク式の連結器を後部にしか持たず、平トロ1輌を牽引するのがやっと。'83.3.26
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▲1号機(左)と2号機(右)。富士重工のロビン10psエンジンを備えた1号機は西武建設時代からの生え抜き。一方の2号機はいすゞの工業用エンジン(D423A)からベルトドライブで変速機へつなぐという珍機関車であった。'83.3.26
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矢竹沢出合から赤沢出合までの運転区間はわずか2.25㎞。とはいえΩループやオーバーハングの岩など見どころは数限りなく、木曽森林鉄道なきあと“生きた林鉄”の息吹を再び感じられる貴重な場所でした。

kawamatacolor05.jpgこの入川森林軌道はもともと営林署の軌道ではなく、東京大学農学部付属秩父演習林の軌道として設けられたものでした。川又から滝川を遡る滝川森林鉄道が1922(大正11)年に起工、翌1923(大正12)年には入川を遡る入川森林軌道が着工され、1936(昭和11)年には現在の残存区間である赤沢出合までの延伸が完了しました。東大演習林とはいえ、軌道の運行は民間に委託されており、森林鉄道としての使命を終える1969(昭和44)年時点では、西武建設山林部が加藤製作所製のガソリン機関車などを用いて運行していました。(『トワイライトゾ~ン・マニュアル10』所収「奥秩父の森林鉄道」参照)
▲1800m地点のオーバーハング下で待機する1号機。'83.3.26
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▲地形図に見る最盛期の入川森林軌道と滝川森林軌道。現在軌道が残されているのは荒川源流地点(赤沢出合)までの2キロほど。(地理調査所1:50000地形図「三峯」=昭和27年応急修正=より加筆転載)
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▲500m地点のオーバーハング今昔。フロントに乗った係員が手で砂を撒きながらカーブを抜けて来るのは3号機。'09.6.20/'83.6.4
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森林鉄道としての運行を終了した1969(昭和44)年といえば西武鉄道秩父線が開業したその年。秩父線開業までは日帰りで都心から奥秩父を目指すのはほぼ困難で、しかも秩父湖のさらに奥ともなれば、登山の心得のある方でもなければ足を向けることはありませんでした。

kawamatamap01n.jpgところが今はすっかり道路も整備され、ことに国道140号線は「彩甲斐街道」の愛称のように、秩父から雁坂トンネルを抜けて山梨県側への往還ルートとして賑わっています。今年は西武鉄道もこの入川渓谷を荒川源流を訪ねるウォーキングコースとしてアピールしており、専用のパンフレットまで製作する熱の入れようです。鉄道・バス利用でも、三峰口駅(西武観光バス)→秩父湖(秩父鉄道観光バス)→川又(徒歩)→入川軌道跡終点(往復約3時間)→川又→秩父湖→三峰口というコースで、都心からの日帰りが充分に可能です。
▲入川渓谷にはその名も”夕暮れキャンプ場”があり宿泊も可能。
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▲渓流から吹上げてくる涼風が軌道跡を包む。列車の姿こそ見られないものの、東京近郊でこんなシーンが目に出来るのは入川ならでは…。'09.6.20
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東京都心から日帰り圏内で森林鉄道の残り香に接することのできる貴重なスポット・入川森林軌道跡。ナローゲージャーのみならず、森林浴を兼ねて、この夏は一度訪ねてみられては如何でしょうか。

※明日から出張のため、小ブログは29日までお休みさせていただきます。あしからずご了承ください。

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