鉄道ホビダス

ケ90を訪ねる。

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▲JR直轄管理の保存機とあって状態は良好。ただし、もともと中部鉄道学園の教材であっただけに、ボイラーやシリンダーなど一部はカットされてしまっている。雨宮(大日本軌道)の特徴でもある蒸気溜め上部の加減弁に注意。'09.3.21
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先日、「鉄道フェスティバル2009 inなごや」に伺おうと会場の吹上ホールの所在地を調べていると、かねてより訪ねてみたいと思っていた「ケ90」の保存場所であるJR東海社員研修センター(動力車操縦者養成所)が目と鼻の先であることに気づきました。名古屋を訪れる機会は少なくないのですが、時間に追われていることが多く、ましてや昼間に市内の保存機を観察できることはまずありません。それだけにこれはまたとないチャンスと、会場入りの前に千種区の保存場所へと向かいました。

ke90n05n.jpgところで、「ケ90」と聞いて“国鉄機”と直感できる方は少ないのではないでしょうか。鉄道院時代の湧別線(現在の石北本線の一部)を端緒として、国鉄には2フィート6インチ(762㎜)軌間のいわゆる“狭軌軽便線”が戦後まで存在していました。「ケ」はその軽便線用車輌の形式記号で、蒸気機関車においては1912年製の最初の湧別線用C型機をケ200形とし、次いで1919年に新製したB型機をケ100形としたことから、B型機を100の前後、C型機を200の前後として形式展開されることとなったものです。ところがこれがかなりいい加減。基本的にケ100、ケ200より小さいものをそれ以下の番号の形式、大きいものをそれ以上の番号の形式にすることを原則としたようですが、きちんとした倍数で形式を割り当てずに追い込んで付番してしまったため、その形式展開は理解を超える難解なものとなってしまったのです。
▲街路から見た状況。「ちくさ きしゃ コーナー」と名づけられた門扉は、「都合により当分の間閉鎖します」という表示とともに閉ざされている。'09.3.21
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たとえば、ケ100形(当初6輌でケ100~ケ105)の手前を見てみると、1輌のみだったものがケ99形ケ99、2輌在籍したものがケ97形ケ97・ケ98(有名な“オーガスタ”と“ベアトリス”)、次がやはり1輌でケ96形ケ96…とまさに判じ物です。ケ90形は2輌で、ケ90とケ91が同形です。一部は正規の形式図にも収録されているこれら狭軌軽便線用蒸気機関車ですが、国鉄の機関車でこれほど判りにくい形式称号はほかに例をみません。

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▲全長4mあまりの6t機とあって“国鉄機”としては異例の小ささ。今頃は周囲の桜並木も満開となっているに違いない。'09.3.21
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▲形式番号を示す「ケ90」のナンバープレートと、メーカー「大日本軌道株式会社」鉄工部の銘板。ちなみに大日本軌道鉄工部は本機製造の翌年、雨宮製作所へと改組される。'09.3.21
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さて、ケ90形は旧東濃鉄道(のちの東濃鉄道とは別で現在の太多線の一部)の1・2号機で、大日本軌道鉄工部1918(大正7)年製。1926(大正15)年に買収されて国鉄(鉄道省)に編入されたものです。B型6tのサイド・ウェル(ボトム)タンク機で、数年間は“国鉄機”として使用されたものの、1930(昭和5)年5月には早くも廃車されてしまっています。

ke90n02n.jpgところが幸いなことにケ90形は2輌ともに解体されることなく、ケ90は1935(昭和10)年3月に名古屋鉄道局の教習所へ、ケ91は浜松工場へ、ともに教材として送られることになります。ただし、両機ともに教材だけに内部の構造がわかるようにカットモデルとなってしまっており、ことにケ90の方は1963(昭和38)年2月に稲沢第二機関区でボイラー、シリンダー、蒸気溜め等が派手に切開されてしまっています。その反面、国鉄→JRと直轄管理下に置かれていただけあって、廃車後80年近くを経た現在でも極めて良好な保存状態に保たれているのは嬉しいかぎりです。
▲そのバックビュー。コールバンカは雨水を防ぐためか塞がれている。'09.3.21
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▲ケ90と向き合うかたちで保存されているC57 139号機。1971(昭和46)年に廃車となるまで、戦後一貫して名古屋機関区に所属した機関車で、いわゆる二次型C57のトップナンバー。1962(昭和37)年5月20日に名古屋機関区最後のお召列車を牽引しており、ランボードには当時を髣髴させる手すりが残る。準鉄道記念物にも指定されている。'09.3.21
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現在、ケ90は千種区のJR東海社員研修センターに設けられた「ちくさ きしゃ コーナー」にC57 139号機とともに保存されていますが、残念ながらこの「ちくさ きしゃ コーナー」そのものが閉鎖されてしまっていて、中に入ることはできません。それでも歩道から間近に観察することができ、わずかな時間ではありましたが、遠い昔に消え去ってしまった国鉄狭軌軽便線に思いを馳せることができました。なお、僚機ケ91は現在、浜松工場近くの「堀留ポッポ道」に保存されています。かれこれ25年ほど前に一度訪ねたきりとなっており(アーカイブ「臼井茂信さんを偲ぶ」参照)、こちらもまた近いうちに様子を見に行ってみたいと思います。

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