鉄道ホビダス

2008年11月22日アーカイブ

中川浩一さんをしのぶ会。

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▲故人に因んだ懇親会に先立ち青木栄一さんによる講演「中川浩一さんと鉄道研究」が行われた。鉄道のみならず、私たちが知らなかった中川さんの研究の幅広さに、改めてその存在の大きさを実感。'08.11.22

去る8月19日に永眠された中川浩一さんをしのぶ会が、本日昼から東京・有楽町にある日本交通協会大会議室で行われました。中川さんが長年にわたって編集委員をお務めだった『鉄道ピクトリアル』誌の今津直久編集長が奔走されて実現したもので、日本各地から縁ある百名近い方々が故人を偲んで集まりました。

081122n005懇親会に先立って行われた青木栄一さんによる講演「中川浩一さんと鉄道研究」は、地理学という同じフィールドを背景にして、後輩でありながら「昔の言葉で言えば戦友だった」と語られる青木先生ならではの興味深いお話でした。
中川浩一さんは1931(昭和6)年のお生まれ。都立西高校から東京教育大学に進まれ、卒業後は教師として中学、高校、大学と一貫して地理教育に携わられ、1982(昭和57)年から茨城大学教授(のちに名誉教授)、1997(平成9)年に流通経済大学経済学部教授を最後に教壇を去られました。
▲献杯は発起人のお一人でもある小西純一さんの発声で行われた。橋梁にも造詣が深く、かつ並外れた洞察力をお持ちだった中川さんとの知られざるエピソードも披露された。'08.11.22

学生の頃から『Romance Car』誌に私鉄探訪記事を寄稿、1954(昭和29)年には創世記のガソリン動車の導入を考察した論考「気動車物語 私鉄編1」(『Railfan 』 別冊)を発表しています。青木さんが中川さんと出会われたのも1951(昭和26)年頃のことだそうで、その後、青木さんも同じ東京教育大学に進まれ、ともに地理学の道を目指されます。

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▲『鉄道ピクトリアル』誌1954(昭和29)年8・9月号(No.37・38)に掲載された伝説のルポ「常磐紀行」が復刻されて頒布された。1954(昭和29)年3月、東京教育大学卒業を目前に、臼井茂信さんと常磐炭田の私鉄・専用線を探訪する紀行で、フィールドワークを何より重視する中川さんの研究の原点が垣間みられる名著。なお、この復刻版はアーカイブス セレクション追悼編として同誌次号に掲載されるとのこと。'08.11.22

1961(昭和36)年に『鉄道ピクトリアル』誌の編集委員に就任されてからは、数多くの著作が誌面を飾るのみならず、現在の同誌の内容・編集傾向にも少なからぬ影響を及ぼしてきていると青木さんは振り返っておられます。

081122n004中川さんは人並み外れた好奇心と、信じられないほど幅広い教養をお持ちで、その著作も恐ろしいほど多岐にわたっています。車輌発達史からスタートして総合的な交通史の構築を目指されるなかで、土木史の専門家の間でも高く評価された『鉄の橋百選―近代日本のランドマーク―』(1994年共著/東京堂出版)、産業考古学のパイオニア的著作『産業遺跡を歩く―北関東の産業考古学―』(1978/産業技術センター)、さらにはより広い立場で交通を軸とした社会文化史をまとめられた『旅の文化史―ガイドブックと時刻表と旅行者たち―』(1979/伝統と現代社)、『観光の文化史』(1985/筑摩書房)…等々、枚挙に暇がありません。さらに地理教育史を学ぶ者にとって古典ともなっているという『近代地理教育の源流』(1978/古今書院)のように、私たち鉄道趣味の側では伺いしれない著作も多数あり、『霧社事件―台湾高砂族の蜂起―』(1980/三省堂)に代表されるアジア史、また日韓関係史に関する論文も数多いと聞くと、その引出しの多さにただただ圧倒される思いです(青木栄一さんの講演資料より)。また、夏目漱石や森鴎外の研究者としても知られていたそうで、実は私たちの知らない中川さんがあちらこちらにおられたわけです。
▲中川さんは駅弁、とりわけ横川の峠の釜めしをこよなく愛されていたという。「しのぶ会」では電気車研究会の皆さんのご尽力でこのゆかりの峠の釜めしが用意された。'08.11.22

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▲会場に誂えられた祭壇には中川さんが愛された日本酒が…。'08.11.22

数年前から療養生活に入っておられましたが、その明晰な頭脳と旺盛な執筆意欲はいささかも衰えていませんでした。ただ、何よりもフィールドワークを重要視されていた中川さんだけに、自らが現場に立てない晩年の状況はどれほどお辛かったかと胸がいたみます。今回の「しのぶ会」で、わずかながらでも中川さんと同じ時代を生き、薫陶を受けられたことを改めてありがたく感謝したいと思いました。
ご冥福をお祈りいたします。

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