鉄道ホビダス

紀州鉄道は今…。(上)

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▲終点の西御坊で折り返しを待つキハ603。20年前に路線短縮されるまでは中間駅だっただけに、踏切横に設けられたホーム一面の駅舎はとても終着駅とは思えない。'08.7.20
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改めてご紹介するまでもないでしょうが、紀州鉄道は何とも不思議な鉄道です。営業距離わずか2.7km。第一種鉄道事業を営む普通鉄道としては芝山鉄道(2.2km)に次ぐ短さですが、芝山鉄道は京成電鉄と相互直通運転を行い、運転業務も京成に委託されていますから、実質的にはやはりこの紀州鉄道が日本一のミニ鉄道ということになりましょう。

080727n2.jpg紀勢本線御坊駅の片隅、0番ホームを出た列車は宅地化の進む田園風景の中をほとんど勾配もなく進みます。2.7kmというとひと駅分の距離に思われますが、途中には「学門」、「紀伊御坊」、「市役所前」と中間駅が3駅もあり、しかも一日26往復とそのフリークエンシーの高さは想像以上です。ただ、沿線は国道42号線を基軸とした道路交通が発達しており、残念ながら時代から取り残された印象は免れません。
▲サボも社紋も手作り感が滲むキハ603の側面。'08.7.20
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▲西御坊駅をかつての日高川方面から見る。線路はいまだに残っており、ゼブラ模様の柵で営業線と廃線が遮断されている。それにしてもこれが2008年、現在の光景とはちょっとした感動もの。'08.7.20
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この非電化の超ミニ鉄道が今日まで存続してきた背景には、親会社で東京に本社を置く不動産会社の存在があることは広く知られています。経営危機に瀕していた前身の御坊臨港鉄道を買い受けて紀州鉄道と改名したのが1973(昭和48)年。以後、鉄道会社という社会的ネームバリューを後ろ盾として、“紀州鉄道”は全国各地でリゾート開発やホテル事業を積極的に推し進めてきています。

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▲日高川へと続く線路は一部の橋梁が撤去されているものの、かなりの部分がそのまま残されている(左)。右は西御坊駅ホーム終端の生活感溢れる光景。'08.7.20
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有田鉄道など同じ和歌山県内の他のローカル私鉄が力尽きて消えてゆくなかで、営業距離が最も短く、営業収入も少ない紀州鉄道が今日まで生き延びてきたのには、他線にはないそんな事情が背景にあります。

080727n6.jpgさて、現地を訪れたのは和歌山県地方の梅雨明けが宣言された夏休み最初の日曜日。平日は8年ほど前に北条鉄道から譲受した冷房付きのレールバス、キテツ1が孤軍奮闘していますが、休日は通学客もないとあって“非冷房”のキハ603が運用に就いています。このキハ603は大分交通耶馬溪線の生き残りで、1960(昭和35)年新潟鐵工所製。DMH17にいわゆるバス窓と気動車ファンにはたまらない1輌です。昼下がりの乗客の面々を見渡すと、地元のお客さんはほとんどおらず、ほぼ全員が紀州鉄道とこのキハ603を“味わいに”来た人ばかり。側窓を全開にして真夏の気動車を堪能しているかのようです。どうやら、休日にキハ603が充当されるのには、観光客やファンへのサービスといった側面もあるのかも知れません。
▲西御坊駅待合室内。御坊方から見たところで、そのまま画面前方の人一人やっと通れる通路を進むと、日高川方に通り抜けることができる。'08.7.20
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▲民家のような西御坊駅を後に御坊へと去ってゆくキハ603。床下排気のDMH17のエキゾーストが線路を覆った夏草を揺らしてゆく。'08.7.20
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それにしても終点の西御坊駅は一見の価値があります。1989(平成元)年4月1日付けでこれより先の日高川まで0.7kmが廃止され、途中駅であったこの西御坊が終点となってしまったわけですが、その“終着”ぶりは何とも唐突です。市役所前駅を出て宅地の裏を走り抜けた列車は、踏切に隣接する狭いホームに到着するや、まさに突然、終点となります。駅舎正面(?)から見える駅名標記はなく、木造の待合室前には自動販売機がでんと据え付けられているのみ。やはりどう見ても終点には思えない奇妙な光景ではあります。

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