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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2008年7月14日

ノルマンディーに欧州最古の現役内燃機関車を訪ねる。(下)

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▲これがお目当ての欧州最古の現役内燃機関車・ユンクMS131。在籍2輌のうちこちらは予備機で、工場裏のストックヤードに置かれていた。ちなみに写真を見た『国鉄時代』担当の山下曰く、「集合住宅のゴミ入れかと思った」…失礼な! '07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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お目当てのユンク“MS131”形とはもちろん初対面。1929(昭和4)年から1933(昭和8)年にかけて430輌あまりが製造されたレディーメード機で、ヨーロッパ各地にばら撒かれたそうですが、残存機は個人所有の保存機を含めてもごくわずかです。なにしろ製造初年の1929(昭和4)年といえば、鉄道省最初のディーゼル機関車DC11がエスリンゲンから輸入された年ですから、この機関車がどれほど“古典機”であるかがわかろうというものです。

080714n6.jpgエンジンは10HPの2気筒水冷2サイクルディーゼル。車体中央部に2速のギアボックスとともにマウントされ、その上に運転席が設けられています。つまり進行方向に対して横向きで運転する格好となるわけです。逆転機を介したファイナルドライブはローラーチェーン。前後に突き出した湯船(?)のような奇妙なケーシングは、片方がプリミティブな水冷ディーゼルエンジンを自然冷却するための水タンク、逆側がバランスをとり、かつ死重とするためのポケットで、本機の場合は雑多なスクラップ鉄材が詰め込まれていました。
▲本務機の全貌。残念ながらミル内部は足場が悪く、ようやく画角に収められたのがこの程度。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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▲ユンクのカタログに見るMS131。こうやってオリジナルと見比べると、ラグリブの2輌はほとんど原形そのものであることがわかろう。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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公称自重は4100ポンド(約1.8t)、運転整備重量は6200ポンド(約2.8t)で、重量のわりには奇妙な“湯船”の分だけ大きく見えます。ちなみに実測値によるディメンションは、端梁間全長:2200mm、車体全幅:1200mm、軌道踏面上全高:1300mm、WB:830mm、車輪径:φ350mmといったところでした。

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▲運転はセンターにマウントされたギアボックスの上に横向きに座る形となる(左)。丸いハンドルは手ブレーキ。右は車体に取り付けられた“LOUIS PATRY”の銘板。中古仲介業者(?)だろうか、その真相は不明。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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残念ながら今日はもう動くことはないとのことで、案内してくれたおじさんとは帰りにオフィスに寄るからと別れ、ともかく全線を歩いてみることにしました。キルンに併設されたミルを出た軌道は、野原の中の道を併用軌道となって進んでゆきますが、これがなかなかの雰囲気です。

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▲心地よい秋のそよ風の中、クレイピットへと続く軌道。ナローゲージ・モデラーにとってはたまらないシーンのはず。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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▲併用軌道をクレイピットへと向かう500mmの軌道。総延長は500mほどながら、さまざまな表情を見せてくれる。それにしてもこの軌道上を行くユンクの姿を見てみたかった。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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草原を出ると一気に視界が広がり、終点のクレイピットに至ります。全線500mほどでしょうか、実にささやかな軌道で、この軌道だけで原料土を輸送しているとは驚きです。ピットにはこれまた超年代モノと思われるラダーエキスカベータが寂しげに取り残されていましたが、これとて決して“産業遺産”ではなく現役なのがこの軌道の凄さでしょう。

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▲クレイピットでは極めて原始的なラダーエキスカベータが次の稼動を待っていた。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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▲誰もいない広大なピットを見ているうちに、秋の陽は一気に西に傾いてきた。そろそろパリへ戻らねば…。もう二度と来ることはないであろうこの軌道を後ろ髪を引かれる思いで後にした。'07.11.23 Briqueterie LAGRIVE
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それにしても、ユンクの働くところをこの目で見たかったと未練たらたらでフィールドを後にし、オフィスへと向かいました。例のおじさんは「明日は動くはずだからまた来なさい」というようなことを言ってくれていましたが、パリから200キロ、いや日本から10000キロ離れたここノルマンディーの地に戻ってくることは二度と再びないでしょう。お世話になった事務所の皆さんにささやかなお土産=箸と千代紙を渡し、ラグリブ煉瓦工場に別れを告げました。
帰路の国道からは、あのエキスカベータの姿が、遥か彼方の西日の中にシルエットとなって浮かんで見えました。

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