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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2008年6月 8日

『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』が完成。

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▲いまだにしっかりとその姿を留める奈半利川線の法恩寺三光院跨線橋。切石を布積で積み上げ、馬蹄形断面のトンネルを形作っている。'07.7.20

昨年このブログ(アーカイブ「魚梁瀬森林鉄道跡をゆく」参照)で高知県の魚梁瀬森林鉄道沿線の5町村(安田町・奈半利町・田野町・北川村・馬路村)が森林鉄道の遺構を再調査・顕彰し、後世に残してゆこうという取り組みをご紹介しましたが、このたびその調査報告がまとまり、『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』となって上梓されました。

080608n19.jpg馬路村の森林鉄道保存活動の中心的存在である清岡博基さん(馬路村村議会議長)が会長を務める「中芸地区森林鉄道遺産を保存・活用する会」が独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所に委託してまとめたこの調査報告書は、“悉皆調査”の名に恥じぬ徹底したもので、橋梁・隧道といった大規模遺構はもとより、それこそ旧線路跡の擁壁の石の大きさ・加工方法にいたるまでも克明に調査・記録されており、地元行政が本気を出すとこれほどまでのことができるのかと、改めて驚かされる恐ろしいほどの完成度です。
▲『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』表紙。

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▲巻頭は8ページにわたってカラーの口絵が設けられている。海岸にかろうじてその橋脚を残す田野貯木場桟橋(左)やかつてこのブログでも紹介した立岡高架(右)などの現況が紹介されている。(『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』より)

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▲第3章「本線の悉皆調査」より。悉皆(一つ残さずことごとくの意)調査というだけあって、擁壁、石垣にいたるまで、石の加工方法、大きさ、積み方までもが詳細な調査表(右)となってまとめられている。(『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』より)

魚梁瀬森林鉄道は舛本成行さんのRMライブラリー『魚梁瀬森林鉄道』でご存知の方も少なくないはずですが、わが国屈指の規模の森林鉄道網であったとともに、技術面でも独自の発展を遂げてきたことで知られています。今回の調査も、現時点での遺構を正確に記録することによって、郷土の森林鉄道が築いてきた技術と文化を顕彰する今後の礎としようとする意気込みがひしひしと感じられるものです。

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▲昨夏訪れた際の安田川線バンダ島隧道。全長37.6m、ほとんど現役当時のまま残されている。'07.7.20

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▲そのバンダ島隧道についても詳細な測量を踏まえて紹介されている(左)。右は“犬牽き”の写真で知られる五味隧道の調査報告。(『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』より)

最終第8章では「保存と活用」と題して中芸地区森林鉄道遺産を保存・活用する会のこれまでの取り組みが紹介されていますが、もと営林署職員等による座談会の開催など、オーラルヒストリーの“保存”も積極的に行われており、このあたりの取り組み様は、10月に碓氷峠鉄道文化むらを会場に開催予定の日本鉄道保存協会年次総会でもぜひ取り上げさせていただきたいと考えております。

080608n11.jpgところでA4判184ページのこの調査報告書、小部数ながら一般にもお分けいただけるそうです。本来の趣旨である歴史的産業遺産の保存・活用とは少々逸脱しますが、残存するすべての構造物(橋梁・隧道・建築等々)の実測図が入っている点は、森林鉄道をモチーフとした鉄道模型に取り組む皆さんにとっても、またとない資料に違いありません。価格は一冊2000円+送料。馬路村ふるさとセンター「まかいちょって家」(電話0887‐44-2333)が受付窓口となってくださるそうです。
▲残された建築についても細かい調査がなされ、逐一平面図が起こされている。(『高知県中芸地区森林鉄道遺産調査報告書』より)

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