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レイル・マガジン編集長自らが作る編集日記。

2008年5月31日

“ビネガーシンドローム”警報発令中!

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先週、諸河 久さんの事務所にお邪魔した際に、「ビネガーシンドローム」という言葉を初めて耳にしました。3年ほど前、このブログでも問題提起したことがありますが(アーカイブ「あなたのネガは大丈夫ですか」参照)、ここ数年急激に広がってきている古いモノクロ・ネガフィルムの加水分解現象を「ビネガーシンドローム」と言うのだそうで、専門誌『写真工業』最新号で詳しく解説されているとのこと。

080531n2.jpgさっそく同誌を入手して、日本写真家協会の松本徳彦さんの記事「そこが知りたい フィルムのビネガーシンドローム」を読んでみました。それによると、従来は1953(昭和28)年以前に製造された酢酸セルロース(セルローストリアセテート)を用いたフィルム特有の現象と認識されていた加水分解による劣化が、近年1960年代のフィルムでも散見されるようになり、昨年「わが国の写真フィルムの保存・活用に関する調査研究」を文化庁から委嘱された社団法人日本写真家協会としても問題視しはじめているのだそうです。
▲“発症”したネガ。酢酸臭が強まり、スリーブ周囲のパーフォレーション部よりカーリングが始まっている。
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改めて身の回りの加水分解現象=ビネガーシンドローム事例についてご紹介いたしましょう。まず、最初は外見上は異常が認められないものの、ネガをケースから取り出すとやけに酢酸臭が感じられるようになります。この時点ですでに“発症”してしまっており、後述するように、タチの悪いことに一旦発症してしまったら、現状では基本的に進行を止めることはできません。次にパーフォレーション部からの収縮が始まり、さらに表面にべとつき(糊稠)や結晶の析出が認められるようになります。次第にカーリング(収縮)が強まり、最終的には画像の剥離を伴ってストロー状に丸まってしまい、開くことさえ困難となってしまいます。

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本誌はもとより、『国鉄時代』でも多くの皆さんから古いネガをお借りいたしますが、このところビネガーシンドロームに罹ってしまっていると思われる事例があとをたちません。実は数年前までは、昭和40年以前の特定メーカーの35ミリフィルムだけと認識していたのですが、最近では1970年代、つまりいわゆる“SLブーム”真っただ中のものまで“発症”しているものが見られるようになってきています。メーカーも“傾向”はあるものの決して特定ではなく、諸河さんの事務所で見せていただいた発症例には何とシノゴ(4×5インチ判)さえありました。
▲再び例に挙げて申し訳ないが、「あなたのネガは大丈夫ですか」の際にご紹介した高井薫平さんの『軽便追想』時代のネガ。強烈な酢酸臭とともにストロー状に丸まってしまっている。

言うまでもなく、ネガは私たちの何ものにも代えられない命のようなものです。引っ越しの際にもネガケースだけは業者任せにせず自分で運んだ…というような話も良く耳にします。それだけに蔓延しつつあるこのビネガーシンドロームは死活問題とさえ言えるでしょう。

080531n3.jpgさらに恐ろしいのはこのビネガーシンドローム、“感染”するのです。発症してしまったが最後、抜本的解決策はありませんが、松本さんの記事によれば、対症療法としては、酢酸臭など少しでもビネガーシンドロームが疑われるネガはすぐにほかのネガから「隔離」する。ネガケースを無酸性の紙製のものに替え、低温低湿(理想的には14?18℃、湿度35?45%以下)の環境に移す、などがせめてなしえる処置だそうです。もちろん現在では、症状が悪化する前にスキャナーで取り込んでデータ化しておくのが禍根を残さない最良の方法でしょう。
▲『写真工業』6月号の松本徳彦さんの2ページにわたる記事「フィルムのビネガーシンドローム」。

ちょうど週末。このブログを読まれた方はすぐにネガの保管ケースを再確認されることをおすすめします。しばらく見ない間に、あなたのネガもビネガーシンドロームに罹っているかもしれません。

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